【血圧を下げる運動】等尺性運動は最も血圧を下げる効果が高いトレーニング【ハンドグリップ・壁スクワット】

運動療法

血圧を下げる効果が高い運動はなに?

等尺性運動で血圧が下がるって本当?

どんな運動をしたらよいの?ハンドグリップ・壁スクワットってどんな運動?

運動は血圧を下げるために有効ですが、どんな運動が最も効果があるか、知らない人も多いのではないでしょうか。

この記事では、血圧を下げる効果が高い等尺性運動について論文を中心としたエビデンスを解説します。

この記事の結論は以下の通りです。

  • 運動の中でも等尺性運動が最も血圧低下の効果がある
  • ハンドグリップ壁スクワットによる等尺性運動は血圧を下げる効果がある
  • 等尺性運動のスタンダードプログラム:運動の種類はハンドグリップ壁スクワット(ウォールスクワット)強度15~30%MVC運動時間(収縮時間)2分×4セット週3回の頻度4~10週以上の期間

この記事の内容は、地域講話にて地域の皆さんの血圧管理の指導にも活用しました。

血圧をコントロールする運動指導にも役立つ情報になります。

この記事を読むメリット
  • 血圧を下げる運動の効果がわかる
  • 血圧を下げる等尺性運動のプログラムがわかる

等尺性運動は最も血圧を下げる効果が高い運動

ここでは、血圧を下げる運動の種類と効果について解説します。

運動にはさまざまな種類がありますが、血圧を下げる効果は運動内容によって異なります。

結論は以下の通りです。

  • 有酸素運動、筋力トレーニング、等尺性運動は血圧を下げる効果がある
  • 等尺性運動は最も血圧を下げる効果がある運動
  • 等尺性運動の中では壁スクワットが最も血圧を下げる可能性がある

血圧を下げるためには薬物療法と同じくらいに、薬に頼らない非薬物療法も重要です。

Almabrukらは、高血圧への効果として薬物療法と非薬物療法の有効性を系統的レビューとメタ解析にて調査しました1)。

非薬物療法の内容:定期的な運動、食生活の改善、減塩、体重管理、節度ある飲酒、ストレス軽減などの生活習慣の改善

薬物療法と非薬物療法の効果を比較した結果は以下の通りでした。

  • 薬物療法:収縮期血圧-6.83mmHg、拡張期血圧-2.52mmHg
  • 非薬物療法:収縮期血圧-6.03mmHg、拡張期血圧-6.77mmHg
  • 薬物療法と非薬物療法の併用:収縮期血圧-8.37mmHg、拡張期血圧-3.34mmHg

薬物療法と非薬物療法の両方が血圧低下に効果があり、併用した治療は最も大きく血圧を下げました

運動を含めた非薬物療法の重要性が示されていますね。

ただし、薬物療法での目標の血圧に達成した割合(目標血圧達成率)は67.8%に対して、

非薬物療法の目標血圧達成率は26.4%

目標血圧達成率は非薬物療法よりも薬物療法の方が高いようです。

運動によって血圧が下がることは明らかとなっており、トレーニングごとに調査した研究がいくつかあります。

Cornelissenらは、2013年にトレーニング様式ごとの血圧変化を系統的レビューとメタ解析にて調査しました2)。

RCT93研究、5223名を対象にした結果は以下の通りです。

収縮期血圧の変化(mmHg)拡張期血圧の変化(mmHg)
持久力トレーニング-3.5-2.5
動的筋力トレーニング-1.8-3.2
等尺性筋力トレーニング-10.9-6.2
複合トレーニング有意な効果なし-2.2

複合トレーニング以外で収縮期血圧は有意に低下して、すべてのトレーニングで拡張期血圧は低下しました

その中でも、等尺性筋力トレーニングは、収縮期血圧-10.9mmHg、拡張期血圧-6.2mmHgと他のトレーニングよりも血圧低下の効果が高いようです。

また、Edwardsらは大規模な調査を行い2023年に運動ごとに血圧への効果を大規模系統的レビューとネットワークメタ解析にて報告しています3)。

RCT270研究、15,827名を対象にした結果は以下の通りです。

収縮期血圧の変化(mmHg)拡張期血圧の変化(mmHg)
有酸素運動-4.49-2.53
筋力トレーニング-4.45-3.04
複合トレーニング-6.04-2.54
HIIT-4.08-2.50
等尺性トレーニング-8.24-4.00

2023年の大規模調査の結果においても、

等尺性トレーニングでは収縮期血圧-8.24mmHg、拡張期血圧-4.00mmHgの効果を認めており、運動の中では最も血圧を下げるようです。

また、等尺性トレーニングが他の運動よりも血圧低下に効果的であることが統計解析の結果でも示されています。

Edwardsらは、ネットワークメタ解析の累積順位曲線下面積(SUCRA)値によって、収縮期血圧の有効性を順位付けをしました。

結果は以下の通りでした。

1位:等尺性トレーニング(SUCRA 98.3%)

2位:複合トレーニング(SUCRA 75.7%)

3位:筋力トレーニング(SUCRA 46.1%)

累積順位曲線下面積の結果からも、等尺性トレーニングが収縮期血圧の低下に最も効果的であることが示されました。

血圧の低下を目的としたトレーニングであれば、等尺性トレーニングを選択しましょう。

血圧を下げる等尺性運動では、ハンドグリップ、壁スクワット、等尺性下肢伸展運動が最もスタンダードな運動です。

Edwardsらのネットワークメタ解析では、収縮期血圧の低下に有効な等尺性トレーニングのメニューによる順位付けも行われました。

結果は以下の通りです。

1位:壁スクワット(SUCRA 90.4%)

2位:等尺性下肢伸展運動(SUCRA 84.7%)

3位:ハンドグリップ(SUCRA 73.1%)

等尺性トレーニングの中では、壁スクワットが最も効果が高い可能性が示されています。

ちなみに、等尺性トレーニングで3位となった、等尺性ハンドグリップも高齢者を対象とした調査において血圧低下に有効であることが示されています。

Hejaziらは、平均年齢60歳以上の高血圧症患者を対象に運動介入の効果を系統的レビューとメタ解析で調査しました4)。

結果は以下の通りです。

収縮期血圧の変化(mmHg)拡張期血圧の変化(mmHg)
有酸素運動-6.84-2.57
筋力トレーニング-5.09-2.84
複合運動(有酸素+筋トレ)有意な効果なし-2.67
太極拳-7.62有意な効果なし
等尺性ハンドグリップ-10.62-3.94

等尺性ハンドグリップは収縮期血圧-19.62mmHg、拡張期血圧-3.94mmHgであり、

有酸素運動や筋力トレーニング、太極拳よりも大きく血圧の低下を示しました。

血圧の低下を目標とした運動では、等尺性トレーニングの有効性が高いエビデンスで示されています

血圧の管理の運動では、等尺性運動を積極的に活用しましょう。

等尺性運動による血圧低下の機序・安全性・適応

ここでは、等尺性運動によって血圧が下がる機序や安全性、どんな人が適応となるか解説します。

結論は以下の通りです。

  • 等尺性運動による血流の阻害→再開による反応性充血が血圧の低下をもたらす
  • 2分間程度で低~中強度(10~30%)の等尺性運動では、運動中の血圧上昇は小さい
  • 運動が継続できない人や有酸素運動などが苦手な人は、実施しやすく継続しやすい

等尺性運動によって血圧が下がる機序

等尺性運動によって血圧が下がる機序は、Baffour-Awuahらの「等尺性レジスタンストレーニングのガイド」にて以下のように解説されています5)。

  1. 等尺性運動によって、血流を部分的または完全に阻害する
  2. 等尺性運動後の弛緩によって一過性に血流の上昇と血管の拡張が起こる(反応性充血)
  3. 反応性充血は数時間程度の持続的な血圧低下をもたらし

また、一過性の血流上昇は一酸化窒素(NO)の産生を増加させます。

NOは血管内皮細胞から産生され、血管の拡張や動脈硬化の予防に重要な物質です。

血流の阻害による虚血と弛緩による再灌流のサイクルを繰り返すことで、反応性充血やNOの産生増加により血圧が低下します。

また等尺性運動を継続することで、血圧低下の効果も持続するため運動を続けることも重要なようです。

等尺性運動の安全性

血圧低下を目的とした等尺性運動は、運動中の血圧上昇は比較的に小さいため、安全な運動です5)。

昔は、等尺性運動は血圧の上昇を引き起こすため、高血圧症では危険な運動と考えられていました。

実際に、等張性運動や等尺性運動を50%MVC以上の強度では、顕著に血圧が上昇します。

しかし、血圧低下を目的とした運動強度は以下の通りです5)。

運動強度:低~中強度(10~30%MVC)

筋力強化や筋肥大を目的としたトレーニングよりも、かなり低い強度ですね。

Baffour-Awuahらは等尺性運動による血圧の上昇について以下のようにも述べています5)。

15~30%MVC等尺性運動でも血圧は上昇するが、その上昇幅は中強度の有酸素運動より20~30mmHg程度も明らかに小さい、また拍数の増加も有酸素運動に比べて10~30bpm程度も明らかに小さい。

有酸素運動と比べても、血圧の上昇幅は小さく、比較的に安全性の高い運動であることを示しています。

10~30%の低~中強度の規定を守ることで、高血圧症の患者や高齢者にも安全に等尺性運動が実施できるようです。

また、血圧を顕著に上昇させないためには収縮時間も重要です。

収縮時間:2分程度

長すぎる収縮時間は血圧の上昇に繋がるため、2分程度の短時間が安全性にも良いとされています5)。

等尺性運動は、低~中強度で2分程度の運動時間を目安に実施しましょう。

運動中の注意点として、バルサルバ手技(いわゆる、息こらえ)は起こらないようにします。

バルサルバ手技

  1. 息を止める→胸腔内圧が上昇→静脈還流量が減少し心拍出量と血圧が低下→代償反応として、交感神経が優位になり心拍上昇と血管が収縮
  2. 息止めをやめる→胸腔内圧上昇が解除→静脈還流量の上昇→心拍出量の上昇・血圧の上昇
  3. 血圧上昇→迷走神経が刺激され副交感神経が過剰に働く→血圧低下・心拍数の低下

息を止めることによって、心拍数や血圧は不安定になります。

等尺性運動では、有酸素運動よりも息を止めやすくなるため、実施前に「呼吸を止めない」点をしっかり説明をしましょう。

等尺性運動の適応

血圧低下を目的とした等尺性運動は、ほとんどの人に適応が可能であり、目立った有害事象はあまり報告されていないようです。

Baffour-Awuahらによると、妊娠高血圧症候群の既往歴のある閉経後女性で軽度認知障害のリスクが高まる可能性があるとした報告もあるが、直接的な因果関係は不明としています5)。

血圧を下げる等尺性運動によって、より高い効果を期待できるのは以下のケースです5)。

  • 有酸素運動を完遂する意思がない・完了できない、有酸素運動の遵守に限界がある患者
  • 少なくとも2種類の降圧剤を服用しており、治療抵抗性高血圧症やコントロール不良の高血圧症の患者
  • 高血圧のコントロールができず、有酸素運動や食事療法の補助として活用する場合

有酸素運動に消極的で、血圧コントロールが不十分な場合は、等尺性運動の効果がより高いとされています。

有酸素運動に対して消極的な人は、心理的・身体的な負担は小さく、継続もしやすいかもしれません。

高血圧における等尺性筋力トレーニングのガイドでは、等尺性運動の有効性を以下のように述べています5)。

等尺性筋力トレーニングは、ほとんどの人が実施しやすく、スタンダードなプログラムでは週3回の頻度で、運動時間は1週間にわずか17分程度

費用はほとんどなく、自宅での運動プログラムへ適切に移行すればさらに効果的である。

1週間に17分程度で、運動強度も低いトレーニングであれば、自宅でも継続しやすいかもしれません。

等尺性運動を継続することで血圧低下の効果が高まります

等尺性運動は、運動が苦手な人・消極的な人の方が適応になりやすそうですね。

血圧を下げる等尺性運動の実践プログラム

ここでは、血圧を下げる等尺性運動であるハンドグリップと壁スクワットについて具体的な強度・収縮時間・頻度などを解説します。

すぐに実践できるように運動プログラムをチェックしましょう。

結論は、以下の通りです。

  • 血圧を下げる等尺性運動のスタンダードな運動種類は、ハンドグリップ、壁スクワット(ウォールスクワット)
  • 血圧を下げる等尺性運動のプログラム:低~中強度で2分間×4セットの運動を週3回の頻度
  • 運動中の注意点:呼吸を止めない、等尺性運動を2分完遂できる強度で実施する

ハンドグリップのプログラム

ここでは、ハンドグリップのプログラムについて解説します。

結論は以下の通りです。

  • 種類:片手もしくは両手を握る運動
  • 頻度:週3回
  • 強度:30%MVC
  • 時間:2分間の収縮
  • セット数:4セット
  • セット間休憩:3分
  • 期間:4~10週以上
  • 注意点:呼吸を止めない、30%MVCを超えない、30%MVCを2分間維持できない場合は15~20%MVCから始める

ハンドグリップは、片手もしくは両手を握る運動です。

手を握るだけでも良いですが、タオルやボールを握る方が実施しやすくなります。

研究では、握力計を用いて同じ強度で運動を行いますが、自宅で実施する場合は握る強さをできるだけ同じになるように気をつけましょう。

等尺性運動では、運動強度がとても重要です。

ハンドグリップの推奨される運動強度は30%MVC

%MVC

%MVC (Maximum Voluntary Contraction)とは最大随意筋力(収縮)の中で何%の筋力か示す運動強度の指標。

30%MVCとは、最大随意筋力の30%。

ハンドグリップでは、最大筋力の30%程度の強度が推奨されています5)。

過度な血圧上昇を避けるために、運動強度は注意して設定しましょう。

ハンドグリップの強度設定は、研究では以下の手順で行います。

  1. 握力計を用いて最大筋力の握力を測定する
  2. 最大筋力から30%程度の握力を算出する
  3. 患者に30%程度の握力を目安に手を握る

例えば、握力40kgの人では30%MVCは12kgなので、12kg程度で握る運動をします。

ハンドグリップでは、15~20%MVCでも測定可能な血流の阻害が生じるとされており、

握力計がなければ、厳密にチェックしなくても良いかもしれません。

ただし、低すぎる強度のハンドグリップでは血圧低下の効果がないことが明らかとなっています。

Carlsonらは、30%MVCと5%MVCのハンドグリップで血圧低下の効果を比較する調査をしました6)。

結果は以下の通りです。

  • 30%MVCのハンドグリップでは、収縮期血圧が-7mmmHg(p=0.04)と有意に低下した、拡張期血圧では有意な低下は認めなかった
  • 5%MVCのハンドグリップでは、収縮期血圧、拡張期血圧ともに有意な低下を認めなかった

5%MVCのハンドグリップで血圧低下の効果を認めないことから、低すぎる強度でのハンドグリップでは血圧低下の効果が得られない可能性が示唆されています。

高すぎる運動強度では過剰な血圧上昇のリスクがあり、低すぎる強度では十分な血圧低下の効果が得られない可能性がある。

等尺性運動では運動強度が重要ですね。

また、等尺性運動における頻度と収縮時間に関して以下がスタンダードなプログラムとして研究で用いられています3,5)。

週3回の頻度、2分×4セットの収縮時間

運動頻度の週3回は、筋力強化や筋肥大を目的としたトレーニングと同じ頻度ですね。

筋力トレーニングのプログラムについては別記事で解説しています。

等尺性運動では2分間の運動を4セットが最もスタンダードなプログラムです。

収縮時間は血流を阻血するために重要なので、2分間の運動が難しい場合は、強度を下げて運動を完遂できるように調整しましょう。

等尺性運動の期間に関しては、多くの研究があり明確にしたものは見つけられませんでした。

Barbosaらの系統的レビューでは3~8週の研究が多く、Millarらはプロトコルとして4~10週としています7,8)。

等尺性運動は続けることで血圧低下の効果が期待できるため、4~10週以上を目安に継続することが重要と考えらるでしょう。

最後に、ハンドグリップの注意点を以下にまとめます。

  • 呼吸を止めない:バルサルバ手技により血圧や心拍数が不安定になる
  • 運動強度は30%MVCを超えない:強度が高くなると運動中の血圧上昇を引き起こす
  • 30%MVCを2分間維持できない場合は、15~20%MVCから始める

過度な血圧上昇を引き起こさなず、安全に運動するため呼吸や運動強度は注意しましょう。

また、血流を一時的に阻害するためには、2分間という運動時間が大切です。

運動の完遂が難しい場合は、強度よりも運動時間を優先して、負荷量を軽くする必要があります。

ハンドグリップは等尺性運動の中でも、場所を選ばず、簡単にできる運動です。

自宅での運動としても継続しやすいため、生活指導に合わせて取り入れてみましょう。

壁スクワット(ウォールスクワット)のプログラム

ここでは、壁スクワット(ウォールスクワット)のプログラムについて解説します。

結論は以下の通りです。

  • 種類:背中と後頭部を壁に付けたまま両膝を曲げたスクワット姿勢を保持
  • 頻度:週3回
  • 強度:15~25%MVC
  • 時間:2分間の収縮
  • セット数:4セット
  • セット間休憩:2分
  • 期間:4~10週以上
  • 注意点:呼吸を止めない、30%MVCを超えない、2分間維持できない場合は10~15%MVCから始める

壁スクワットは、壁に背中と後頭部をつけたままスクワット姿勢を保持する運動です。

壁スクワットの実施方法は以下のようになります。

足を肩幅に開き、手を体の横において、固定された壁に背中を預ける

下腿を垂直に保てるように足の位置を調整しつつ、必要な膝関節角度に達するまで膝を曲げる。

膝関節の角度は膝完全伸展位を180°として、135°、125°、115°、105°、95°の5段階から選ぶ。

設定した角度で膝関節を屈曲させて、姿勢保持する。

壁スクワットでは、膝の屈曲角度によって運動の強度を調節します。

膝の屈曲角度が大きく、お尻が下がるほど運動強度は高いです

壁スクワットの推奨される運動強度は15~25%MVC

壁スクワットの運動強度を設定する方法は、研究をみると以下の2つが多いようです。

1つめは、最大心拍数を用いる方法。

最大心拍数による強度設定

運動完了時に最大心拍数の95%を目標とする3,9,10)。

  1. 壁スクワット時の膝関節屈曲角度を135°から、心拍数や血圧を計測しながら10°ずつ膝関節屈曲角度を減らしていく漸増負荷試験を実施する。
  2. 2分間の運動で最後の30秒の平均心拍数が最大心拍数の95%に到達する膝関節の角度を測定する。
  3. ただし、2分間の運動を完遂できない場合は膝関節の屈曲角度を大きくする。

ちなみに、最大心拍数の計算方法は以下の通りです。

  • 最大心拍数=220 – 年齢
  • 最大心拍数(高齢者)=207 – (年齢×0.7)

壁スクワットも運動強度が低すぎると、血圧低下の効果が得られない可能性が報告されています。

Decauxらは、最大心拍数の95%となる膝屈曲角度と最大心拍数の75%未満となる膝屈曲角度で壁スクワットの効果を比較調査しました10)。

結果は以下の通りです。

  • 最大心拍数の95%を引き起こす膝屈曲角度での壁スクワットでは、収縮期血圧-15±9mmHg(p=0.003)、拡張期血圧-5±5mmHg(p=0.02)と有意に低下した
  • 最大心拍数の75%未満の膝屈曲角度での壁スクワットでは、有意な血圧低下を認めなかった

75%未満の膝屈曲角度による壁スクワットでは血圧低下の効果を認めないことから、

低すぎる強度での壁スクワットでは、血圧低下の効果を得るには不十分な可能性が示唆されています。

下肢の筋力が向上すると同じ膝屈曲角度でも最大心拍数の95%に達しなくなる場合があるため、可能なら定期的に評価を行い、最大心拍数の95%に達する角度を測定しましょう。

2つめは、自覚的運動強度である修正ボルグスケール(Borg Scale)を用いる方法。

自覚的運動強度である修正ボルグスケールによる強度設定

自覚的運動強度である修正ボルグスケール5~6を目標とする5)。

  1. 壁スクワット時の膝関節屈曲角度を135°から開始して、修正ボルグスケール(Borg Scale)を測定しながら、10°ずつ膝屈曲角度を減らす
  2. 2分間の壁スクワットので、修正ボルグスケール5~6(きつい)となる膝関節屈曲角度を選択する。

また、修正ボルグスケールを用いる強度設定では段階的に自覚的運動強度を上げる調査もあります3)。

2分×4セットの中で、1セット目で3.5~4.5/102セット目で5~6/103セット目で6.5~7.5/104セット目で8~9/10を想定して角度設定する

さらに、修正ボルグスケールは壁スクワット時の膝関節屈曲角度と逆相関の関係(r=-0.79、P<0.001)が報告11)されており、

運動強度を判定する一つの目安になるようです。

壁スクワットのスタンダードな運動強度の設定方法は、最大心拍数と自覚的運動強度を用いることです。

しかし、両方とも測定が難しい場合は、以下のようなCohenらの実施方法がより簡便かもしれません12)。

  • 膝関節角度95°で2分間壁スクワット姿勢を維持できるかどうか評価する。
  • できた場合:介入期間の最初の3週間は125°、4~6週目は115°、7~9週目は105°、10~12週目は95°でエクササイズを行う。
  • できなかった場合:介入期間の1~2週目は135°、3~4週目は125°、5~6週目は115°、7~9週目は105°、10~12週目は95°でエクササイズを行う。

心拍数や修正ボルグスケールを用ず、トレーニング期間で膝関節の屈曲角度を決めていえるため、シンプルで分かりやすいプログラムですね。

やや大雑把にはなりますが、運動強度の設定が難しい場合は、この手順で強度を決めるのも良いかもしれません。

壁スクワットでは、運動強度を調整するために膝関節屈曲角度が重要です。

心拍数や自覚的運動強度などを参考に、135°・125°・115°・105°・95°から選択しましょう。

壁スクワットにおける頻度やセット数、期間はハンドグリップと同様で以下のプログラムがスタンダードです。

週3回の頻度、2分×4セットの収縮時間、4~10週以上の期間

注意点もハンドグリップと共通しており、以下のようになります。

  • 呼吸を止めない:バルサルバ手技により血圧や心拍数が不安定になる
  • 運動強度は30%MVCを超えない:強度が高くなると運動中の血圧上昇を引き起こす
  • 30%MVCを2分間維持できない場合は、15~20%MVCから始める

壁スクワットはハンドグリップよりも活動する筋群が多く、負荷がかかりやすい運動です。

そのため、呼吸も止まり、血圧の大きな変動を引き起こしやすくなります。

安全に実施するために、呼吸や強度に注意しましょう。

まとめ

ここまで、等尺性運動による血圧低下の効果とハンドグリップ・壁スクワットの運動プログラムを解説しました。

  • 運動などの非薬物療法は薬物療法と同レベルで血圧低下の効果がある
  • 有酸素運動、筋力トレーニング、有酸素運動と筋力トレーニングの併用運動、等尺性運動は血圧を下げる効果がある
  • 等尺性運動は最も血圧を下げる効果があると高いエビデンスで示されている
  • 血圧を下げる等尺性運動は、ハンドグリップ壁スクワット、等尺性下肢伸展運動がスタンダードな運動の種類
  • 等尺性運動による血流の阻害→再開による反応性充血やNOの増加が血圧を低下させる
  • 低~中強度(10~30%)の等尺性運動は、運動中の血圧上昇が比較的に穏やかで安全
  • 運動が継続できない人や苦手な人でも継続しやすい
  • ハンドグリップのプログラム:週3回の頻度で30%MVCの運動強度、2分間×4セットの収縮時間、4~10週間以上の継続期間
  • 壁スクワットのプログラム:週3回の頻度で30%MVCの運動強度、2分間×4セットの収縮時間、4~10週間以上の継続期間
  • 等尺性運動の注意点:息を止めない30%MVCよりも運動強度を上げない2分間の収縮時間を完遂できる運動強度を選択する

参考資料

  1. Bandar A Almabruk, et al. Comparative Effectiveness of Pharmacological and Non-pharmacological Interventions for Hypertension Management: A Systematic Review and Meta-Analysis. Cureus. 2025.
  2. Veronique A Cornelissen, et al. Exercise training for blood pressure: a systematic review and meta-analysis. J Am Heart Assoc. 2013.
  3. Jamie J Edwards, et al. Exercise training and resting blood pressure: a large-scale pairwise and network meta-analysis of randomised controlled trials. Br J Sports Med. 2023.
  4. Keyvan Hejazi, et al. Differential effects of exercise training protocols on blood pressures and lipid profiles in older adults patients with hypertension: A systematic review and meta-analysis. Arch Gerontol Geriatr. 2024.
  5. Biggie Baffour-Awuah, et al. An evidence-based guide to the efficacy and safety of isometric resistance training in hypertension and clinical implications. Clin Hypertens. 2023.
  6. Debra J Carlson, et al. The efficacy of isometric resistance training utilizing  handgrip exercise for blood pressure management: A randomized trial. Medicine (Baltimore). 2016.
  7. Ramon Martins Barbosa, et al. Effect of isometric resistance exercise on blood pressure in normotensive adults: a systematic review of randomized clinical trials. Ann Transl Med. 2025.
  8. Philip J Millar, et al. Evidence for the role of isometric exercise training in reducing blood pressure: potential mechanisms and future directions. Sports Med. 2014.
  9. Jonathan D Wiles, et al. The safety of isometric exercise Rethinking the exercise prescription paradigm for those with stage 1 hypertension. Medicine (Baltimore). 2018.
  10. Anthony Decaux, et al. Blood pressure and cardiac autonomic adaptations to isometric exercise training: A randomized sham-controlled study. Physiol Rep. 2022.
  11. John W D Lea, et al. Validity and reliability of RPE as a measure of intensity during isometric wall squat exercise. J Clin Transl Res. 2021.
  12. Daniel D Cohen, et al. Reductions in systolic blood pressure achieved by hypertensives with three isometric training sessions per week are maintained with a single session per week. J Clin Hypertens (Greenwich). 2023.

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