【SPPB】臨床活用しやすい身体機能評価|死亡と入院の予後予測

評価
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臨床では、歩行やバランス能力など身体機能評価を行う機会は多々あると思いますが、

みなさんはSPPBという評価を知っていますか?

SPPB(Short Physical Performance Battery)は下肢の包括的な機能評価です。

下肢全体の運動能力を評価できるうえに、臨床で使用しやすい利点がいくつもあります!

さらに、SPPBは死亡や入院リスクを予想することができ、

予後予測にも役立つ有効な身体機能評価です。

「SPPBは臨床で使ったことない。」、「SPPBってなに?」というスタッフが、周りに多かったので、今回まとめて紹介します。

この記事では、

SPPBの利点や信頼性、死亡などの有害事象の予測について紹介します。

複数の論文を含めて紹介するので、情報の信頼性も担保でき、臨床でも活用しやすいと思います。

結論
  • SPPBは検者内と検者間の信頼性はICC0.8以上と高く、信頼性が高い評価である
  • 必要な道具が少なく、小スペースでも実施しやすい
  • SPPBスコアが低い人は死亡率が高い
  • 心不全やCOPDの入院や死亡を予測する

この記事を読むメリットは、

  • SPPBの評価方法やスコアリング、臨床での利点がわかる
  • SPPBと死亡などのイベントとの関連がわかる

SPPBは臨床で活用しやすい評価

SPPB概要

SPPBは”Short Physical Performance Battery”の略で、

下肢の包括的な機能評価です。

評価項目は、バランス、歩行速度、椅子からの立ち上がりの3項目からなります。

  • バランス:閉脚立位、セミタンデム、タンデムの3種類で上限10秒として測定する
  • 歩行速度:通常歩行速度で4mの歩行にかかる時間を測定する
  • 椅子からの立ち上がり:胸の前で腕組みをした姿勢で、できるだけ速く椅子から5回立ち上がるのにかかる時間を測定する

3項目それぞれの得点を合計してスコアをつけます。

満点が12点で、最低点が0点。

得点が高い人ほど、下肢を中心に機能が高いことを示します。

SPPBはバランス能力、歩行能力、筋力、持久力などのトータル的なパフォーマンスを測定することができます。

臨床で活用しやすい理由

SPPBの利点としては、

  1. 必要な道具が少ない
  2. 小さいスペースで測定できる
  3. (測定項目が多いのに)短時間で可能

が挙げられます。

測定に用いる道具は、椅子ストップウォッチ、あと4m歩けるスペースがあれば実施できます。

普段からストップウォッチを持っていれば、急に測定が必要となった場面でも、実施できる手軽さがあります。

個人的にはどの分野で働いているセラピストも、ストップウォッチは持ち歩いていた方が良いと思います。

ただ、4mの直線はリハ室や病棟であらかじめ準備しておく必要がありますね。

リハ室と病棟の通路に10m、3m、4mのラインを引いておくことをおススメします。

バランスや椅子からの立ち上がりは、ほぼスペースを必要としないので、

4mが用意できれば、病棟の廊下や、なんなら訪問先の自宅でも評価可能です。

必要な道具が少なく、広いスペースを必要としない点が臨床でも活用しやすいですね。

SPPBは、測定に5分程度かかります。(患者さんの認知や疲労度で時間が長くなることもありますが。)

10m歩行テストや片足立位保持テストを実施するよりも時間はかかりますが、

トータル的な身体機能を測定するという点では短時間で測定できますね。

しかも、各項目で休憩をとることもできるので、

患者さんの負担に合わせて実施できる点も良い点だと思います。

評価の信頼性と臨床での重要な変化量

SPPBは信頼性や臨床的に重要な変化量も報告されています。

信頼性について、

検者間信頼性と検者内信頼性の2種類がありますが、

両方ともICC0.8以上なので高い信頼性を示しています。

また、SPPBはトータルスコアだけでなく、3項目それぞれの信頼性も検討されています。

3項目とも比較的に信頼性が高いようですね。

臨床で経過を追って評価する場合だけでなく、

研究などの複数人で測定する場合などでも、安定して実施できる評価である点も

SPPBの強みだと思います。

メモ
  • 信頼性(ICC)は統計解析により算出して、0~1.00の範囲で値をとり、1に近いほど信頼性が高いことを表します。
  • 目安などは明確ではないですが、一般的に0.7以上あれば信頼性が高い評価であると判断されることが多いようです。

SPPBの臨床的な重要な変化については、

Pereraらの報告では、SPPBの臨床的に重要な変化は1点(0.99~1.34点)と述べています。

(ちなみに、歩行速度では0.1m/秒、6分間歩行では50mが臨床的に重要な変化量と述べてます。)

つまり、1点違っていたら、誤差ではなく本当に改善or悪化などの変化が生じているということです。

ただし、検出可能な最小化検変化量(MCD)を報告している研究では、

SPPBは0.8~2.9点など、いくつも報告があります。

患者さんの回復ステージなどで異なることもあるので、

「必ず1点が重要!」と決めるのは難しいと思いますが、一つの目安としては役立ちます。

自分のなかで、評価の基準値をもっておくことは、臨床的な推論がぶれにくくなるので重要だと思っています。

SPPBは死亡リスクを予測する:低スコアは死亡リスクが高い

SPPBは死亡や入院との関連も報告されています。

SPPBが高いということは、身体機能が高いことを示しており、

身体機能が高い水準であれば死亡リスクが低い状態ということです。

結論として、SPPB10点未満は死亡率が高まります

Pavasiniらは、16,534名の調査(メタアナリシス)から

SPPBと死亡率の関係を調査しています。

その結果、SPPBスコア10~12点の人に対して

  • 7~9点の人でOR 1.50
  • 4~6点の人でOR 2.14
  • 0~3点の人でOR 3.25

死亡率が有意に高い

ということが明らかになりました。

また、患者の各ステージごとに死亡率との関係も報告があります。

  • 地域高齢者10点未満で死亡リスクが高い(観察期間50±14か月)
  • 外来通院患者9点未満で死亡リスクが高い(観察期間1年)
  • 退院患者8点未満で死亡リスクが高い(観察期間1年)

地域や外来、退院時など、どのステージにおいても、

SPPBスコアが低いと死亡リスクが高いということがわかります。

ちなみに、

退院した高齢者を対象としたCorsonelloらの報告では、

急性期病院からの退院時にSPPBスコアが高いと、1年以内の死亡リスクが低いことを明らかにしています。

この報告では、退院時のSPPBスコアが1点高いと、

退院後1年以内の死亡リスクが0.86倍低くなるとしています。

つまり、入院患者において、退院時の身体機能をできるだけ高くすることが

死亡リスクを低下させる可能性があることを示唆しています。

入院中の活動量が向上しADLが自立したからと安心せず、

身体機能を出来るだけ向上させることが必要かもしれないですね。

リハビリが厳密に死亡リスクを把握する必要があるのか疑問の人もいるかもですが…

“死亡リスクが高まるほど身体機能が低下している状態”ということを把握しておくことは、

リハビリの目的や予後を考えるうえで重要だと思います。

SPPBは入院リスクを予測する:低スコアは入院リスクが高い

地域在住高齢者1093名を対象としたFalveyらの報告によると、

SPPB8~12点の高身体機能群に対して、0~3点の低身体機能群は、

1年以内の入院率が1.87倍も高いことを明らかにしています。

つまり、SPPBスコアは地域高齢者の入院リスクを予測できるということです。

外来や訪問、地域予防事業などでSPPBスコアが低い人がいれば、

入院リスクを少しでも減らすような、全身状態をふまえたフォローアップや介入が必要と考えられます。

ただ、この研究では4~7点の中等度身体機能群は、

高身体機能群と低身体機能群の両方と関連を認めていないので、

SPPBが低下するほど、入院リスクが高いという訳ではない可能性があるので、注意が必要かもと思います。

SPPBは心不全の有害イベントを予測する:スコアが低いほど有害イベントが発生しやすい

SPPBは心不全の死亡や入院とも関連することが報告されています。

Garciaらは、

急性心不全で入院した高齢者を対象に、SPPBと退院後1年以内の有害イベントと関連するかを調査しています。

その結果、SPPB8点以上の人に比べ7点以下の人は、

3.6倍も有意に死亡や入院などのイベントを引き起こしやすいことが明らかになりました。

また、拡張型心不全患者を調査したHornsbyらの報告では、

SPPBスコアが1点上がるごとに、死亡と入院のリスクを減らすと述べています。

これらの報告から、

心不全患者の死亡や入院イベントはSPPBスコアが低いほど発生しやすいと考えられます。

SPPBスコアを高めることで、イベント発生を予防できる可能性があるので、

身体機能の向上を図るプログラムを考えることもリハビリの役割だと思います。

SPPBはCOPDの死亡を予測する:スコアが低いほど死亡リスクが高い

心不全だけでなくCOPDに対しても、死亡リスクとSPPBの関係が調査されています。

COPDの死亡リスクや予後の評価には、6分間歩行テストを用いることが最もメジャーな方法として広まっていますが、

6分間歩行テストは拘束時間が長かったり、患者さんに負担が大きいなど懸念点が指摘されています。

その点ではSPPBなら比較的簡単で、休憩をとれるので、臨床で活用しやすいようですね。

Fermontらの報告では、

COPD患者では、6分間歩行テストと同様にSPPBも死亡率と関係することが報告されおり、

予測モデルを用いた解析では、SPPBは予測能力を損なわず6分間歩行テストの代用として活用できるとしています。

また、この研究では、

6分間歩行テストで30m上がるごとに、死亡率が0.85倍下がる

SPPBスコアが1点上がるごとに、死亡率が0.81倍下がることを明らかにしています。

COPDは慢性疾患であり、長期的にフォローアップが必要な疾患です。

定期的にSPPBを測定して、身体機能の低下や死亡リスクの増加がないか評価することも

慢性疾患を介入する上で重要だと思います。

まとめ

  • 検者間信頼性と検者内信頼性ともにICC0.8以上と信頼性が高い
  • SPPBの測定は5分程度、必要な道具が少なく、小スペースでも実施しやすい
  • SPPBが低スコアの人は死亡率が高い(10点未満は死亡率が高い)
  • 地域高齢者ではSPPB4点未満は1年以内の入院リスクが高い
  • 心不全患者では退院時SPPBが8点未満だと有害イベントの発生率が高い
  • 心不全患者においてSPPBスコアが低いと死亡率が高くなる
  • COPD患者の死亡率予測としてSPPBは6分間歩行テストの代用として活用できる
  • COPD患者においてSPPBスコアが低いと死亡率が高くなる

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