
5回立ち上がりテストって、なにを評価できるの?
具体的な方法は?
5回立ち上がりテストは、SPPBでの評価項目の1つであり、サルコペニアの判定など広く活用される評価です。
この記事では、5回立ち上がりテストの測定方法やメリット・デメリット、参考値や他の身体機能との関係について解説します。
この記事の結論は以下の通りです。
- 5回立ち上がりテストは、パフォーマンスを評価できる
- 椅子と時計があれば、省スペースでも評価が可能
- 60歳代11.4sec、70歳代12.6sec、80歳代14.8secよりも時間がかかる場合は、パフォーマンスの低下を示す
5回立ち上がりテストは、使用する道具が少ないため、病室内や訪問リハビリ時にも有用です。
是非、臨床でも活用してみましょう。
- 5回立ち上がりテストの測定方法が理解できる
- 5回立ち上がりテストの解釈ができる
5回立ち上がりテスト
立ち上がり動作は全身運動であり、下肢全体の筋力やバランス能力、パフォーマンス能力など様々な能力が必要です。
そのため、立ち上がりテストは全身のパフォーマンス能力を評価ができるため、臨床だけでなく、サルコペニアの評価など広い分野で用いることができます。
立ち上がりテストには、いくつか種類があります。
- 30秒立ち上がりテスト:30秒間に何回立ち上がることができるか評価するテスト
- 立ち上がりテスト:10~40cmの高さの台から立ち上がることができるか評価するテスト
その中でも、今回紹介する5回立ち上がりテストは測定手順も簡便で、時間も短時間で測定可能な評価です。
検査者と被検者ともに負担が少なく、臨床でも活用しやすいでしょう。
測定方法
5回立ち上がりテストで、準備するものは、40cm程度の椅子とストップウォッチ(時計)だけ。
日本製の椅子は、40cm程度に設定されて作られているため、パイプ椅子などでも大丈夫です。
- 腕を組み椅子に座る(やや浅めに座ってもOK)
- 被験者に”できるだけ早く”立ち上がって座ることを5回繰り返すように指示する
- 5回目に座った時点での時間を記録する

メリットとデメリット
5回立ち上がりテストのメリットは、準備する物が少なく、狭い場所でも実施可能であり、
器具の準備が十分に行えない場所でも測定できる点です。
また、説明自体は簡便のため、被験者が理解しやすく、短時間で実施できます。
そのため、検査者と被験者がともに負担が少ない評価です。
デメリットは、介助なしで立ち上がれない人は実施できない点です。
5回立ち上がりテストは、自力で立ち座りの動作が実施できないと測定ができません。
そのため、重度の身体機能低下がある人では測定できないことを理解しておきましょう。
脳卒中や心疾患など、さまざまな疾患で5回立ち上がりテストを用いた研究はありますが、重度の身体機能低下を認める場合は実施が難しい可能性があります。
5回立ち上がりテストの基準値
Richardらは5回立ち上がりテストは全身のパフォーマンスを示し、60歳代で11.4sec、70歳代で12.6sec、80歳代で14.8secよりも時間がかかる場合は、パフォーマンスの低下を示すと報告しています。
日本における報告では、東京大学のYoshimuraらが地域住民の男性513名、女性1062名を対象としたコホート研究で各年代の平均値を調査しました。

Yoshimuraらの調査では男女差は比較的少なく、男性は80歳代、女性は70歳代から顕著に低下していました。
地域住民を対象とした調査ですが、年齢の平均値を把握することで、パフォーマンスの判定に活用できます。
ちなみに、サルコペニアのスクリーニングでは、5回立ち上がりテスト12sec以上はサルコペニアの疑いありと判断されます。
他にも、転倒やADL、QOLとの関連もまとめた記事はこちらで紹介しています。
5回立ち上がりテストとその他身体機能測定の関係
5回立ち上がりテストは、筋力や歩行能力などの身体機能との関係が報告されています。
Yeeらは、独歩可能な高齢者887名を対象に、5回立ち上がりテストと他の身体機能との関係を調査した結果は以下の通りでした。
5回立ち上がりテストは、握力、歩行速度、6分間歩行、TUGと中等度~強い相関関係を認める

高齢者の5回立ち上がりテストは、筋力、歩行能力、動的バランス、心肺持久力と関係しており、全体的な身体能力を示されています。
ただし、筋肉量(SMI)と5回立ち上がりテストは相関関係を認めませんでした。
また、Bohannonらは膝伸展筋力と有意な相関関係(r=-0.53)を認めると述べています。

重回帰分析の結果からも、5回立ち上がりテストは下肢筋力測定として有用であることを示しています。
専用機器がない施設や小規模病院での筋力測定の代用として便利ですね!
まとめ
今回は、簡便かつ短時間に実施できる5回立ち上がりテストを紹介しました。
全身の身体機能評価として5回立ち上がりテストは、日々の臨床に有効な評価です。
- 5回立ち上がりテストは測定手順も簡便で,時間も短時間で済む評価
- 40cm程度の椅子とストップウォッチがあれば実施可能
- 60歳代で11.4sec、70歳代で12.6sec、80歳代で14.8secよりも時間がかかる場合はパフォーマンスの低下が示唆
- 5回立ち上がりテストは筋力、バランス、ADL、QOLなどの指標にもなる
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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