日常生活(ADL)の膝関節屈曲角度はどれくらい必要か

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今回は生活に必要な膝関節屈曲可動域の話です。

みなさんは生活でどれくらい膝関節の可動域が必要か知っていますか?

「リハビリの目標は、とりあえず膝関節屈曲120°の獲得です!」

という人はいないと思いますが、

「どの動作で、どれくらいの可動域が必要か?」を知ることで、

困難となりやすいADLの予測や目標設定に役立てることができます。

結論として、

  • 洋式生活で困らない膝関節屈曲可動域は120°程度
  • 床上動作などの和式生活で困らない膝関節屈曲可動域は130~150°程度
  • 屋外活動しているTKA術後患者の膝関節屈曲角度の平均は120~130°程度

この記事を読むことで、

動作ごとの膝関節屈曲可動域がわかります。

生活に必要な膝関節の屈曲可動域

結論でみると、問題なく洋式生活するには膝屈曲120°程度和式生活では膝屈曲130~150°必要。です。

歩行に関してみると、膝関節屈曲角度は、平地や坂道の歩行では90°未満で十分です。

実は膝関節の屈曲可動域制限のみが原因で跛行が出現することは意外と少なかったりします。

洋式の生活に関していうと、

斎藤らやRoweらは、椅子からの立ち上がりや階段昇降動作など、洋式生活では膝関節屈曲120°程度の可動域が獲得できれば問題はないようです。

臨床経験的にも屈曲120°あれば、多少の困難感はあっても、実施困難となるケースは少ない印象があります。

個人的には、洋式生活の中で最も膝屈曲角度を必要とするのは入浴動作かなと思います。

ただ、可動域制限によって入浴動作が困難なケースでも、動作を変えたり、環境を変えることによってほとんどの場合は問題なく入浴できるようになりますし、

どうしても困るなら、入浴動作をデイサービスなどの社会サービスを利用するなどの方法もあります。

可動域の拡大だけにとらわれず、動作指導や環境設定、サービスの利用で補えることも忘れないようにしましょう。

次に和式生活についてです。

「玄関の段差が高い」、「階段が1段30cm以上ある」、「浴槽が正方形で深い」など旧家屋の特徴を残す家は最近減ってきていますが、

「こたつに入りたい」、「仏壇で手を合わせたい」という要望を聞くことは多いです。

床からの立ち上がり動作やしゃがみ動作などが多い和式生活では膝関節屈曲可動域は130~150°の獲得できれば生活上の問題は少ないようです。

和式生活で特に問題に上がりやすい、“床からの立ち上がり動作”では膝屈曲130°程度の膝関節屈曲角度が必要なようです。

ちなみに、TKA術後患者でも原口先生が同様の報告をしており、

床からの立ち上がり動作が可能なTKA術後患者の膝関節屈曲可動域は平均130°程度

原口和史.人口膝関節置換術後の生活様式.整形外科と災害外科.2017.

と報告しています。

畳の上で生活したい人は多いので(特に僕が勤務しているような地方では)、

膝関節屈曲130°を一つの目安として知っておくと、臨床では役立ちます。

膝関節屈曲可動域が最も必要となる動作は、正座やしゃがみ動作で膝屈曲150°程度です。

ちなみに、正座は膝に悪影響というイメージがありますが、

調べてみると、正座が変形性膝関節症を悪化させるというエビデンスは明らかではないです。

古賀らは、

コホート研究の結果から、正座の習慣がある人の方がない人よりも変形性膝関節症の重症度(KL分類)が軽い人が多く、正座の習慣が変形性膝関節症を進行させる危険因子ではない

古賀良生.変形性膝関節症の疫学-下肢アライメント3次元測定システム開発の背景-.理学療法学.2007.

と結論づけています。

古賀らの研究は横断研究なので、因果関係を決定づけてはいませんし、

変形性膝関節症が軽症な人しか正座をしていなかった可能性も考えられます。

ただ、正座を必ずしも危険だとする必要はないのかなと思います。

もちろん、関節内圧を高めて疼痛を誘発させる可能性もあるので、詳細な評価を行ったうえで、

患者さんの膝関節の変形や疼痛、ライフスタイルなどを含めて検討する必要があります。

生活動作における膝関節の屈曲角度

ADLと膝関節の可動域の報告では、ゴニオメーターを用いた可動域測定だけでなく、三次元動作解析装置を用いた方法もあります。

三次元動作解析を用いた報告では、対象を健常成人しており、膝関節に問題が問題がない人の動作観察になります。

つまり、「健康な人は〇〇の時に、どれくらい膝を曲げてるの?」を調査した研究です。

これらの報告では、下肢の更衣動作では膝関節屈曲120~130°程度が必要で、最も屈曲角度が必要な動作は正座やしゃがみ動作で150°程度が必要となるようです。

無意識ですが意外と、更衣動作や浴槽の出入に膝関節角度を用いていることがわかります。

ただし、更衣動作や入浴動作は動作方法や環境によって代償が可能です。

必ずしも、報告にある膝関節角度の獲得を目指す必要はなく、代償動作や環境設定にも目を向けることが重要ですね。

TKA術後の膝関節可動域と活動

TKA術後は活動を制限しなければならないというイメージはないですか?

「手術したから膝を動かさない方がよいから…」、「金属がすり減るから…」などの心配から、

術後長期間を経ても活動量が低い状態の患者を臨床で経験することもあります。

TKA術後患者の膝関節屈曲可動域と活動について、いくつか報告があるので紹介します。

いくつかの活動をしているTKA術後の平均膝関節屈曲可動域は、

  • 床上生活(布団での就寝、畳で食事をする、etc)をしている:131.2±13.6°
  • 農業を実施している:126.0±17.7°
  • スポーツをしている:126.0±17.7°

床上での生活や屋外での活動をしている人は、平均120~130°程度の膝関節屈曲角度のようです。

これらの報告は術後早期ではなく、1年以上も経過している患者を対象としています。

術後の不安や”人工関節は大事にしなくては”というイメージから、活動量が減少する人は大勢います。

膝関節の安全面を考えると悪いことではないですが、

長期的な経過をみると実施できる活動があることを知ってもらうことは重要です。

もちろん、関節への負担が増加し、人工関節の寿命を減らすリスクがあるため、担当医師と相談しながら活動の範囲を広げる必要はあります。

ちなみに、TKA術後の膝屈曲可動域獲得を予測に関する因子は別記事にて紹介しています。

また、TKA術後の膝関節屈曲可動域の拡大には注意が必要です。

TKA術後の膝関節可動域の要因は、

  • 術前の膝関節屈曲可動域
  • 手術手技
  • 人工関節のデザイン
  • 術後の治療(リハビリなど)
  • 筋や軟部組織の柔軟性

が関係すると報告があります。

術前の可動域や術後の治療はリハビリが関わりやすい領域ですが、

手術手技人工関節のデザインはリハビリが直接関われない領域です。

獲得可能な可動域について、必ず担当医師と相談するようにしましょう。

もし勝手に深屈曲可動域の拡大を図ろうとすると、組織の損傷や人工関節の破損などのリスクになります。

安全に可動域を拡大し、活動につなげるためにも医師との連携は最重要ですね。

参考資料

  • 江原義弘.歩行分析の基礎-市場歩行と異常歩行-.2012.
  • P J Rowe, et al. Knee joint kinematics in gait and other functional activities easured using flexible electrogoniometry: how much knee motion is sufficient for normal daily life? Gait Posture. 2000.
  • 斎藤宏,他.臨床運動学.2002.
  • 原口和史.人口膝関節置換術後の生活様式.整形外科と災害外科.2017.
  • 古賀良生.変形性膝関節症の疫学-下肢アライメント3次元測定システム開発の背景-.理学療法学.2007.
  • 吉本洋一.下肢のROMとADL.1988.
  • 廣川俊二,福永道彦.座位動作中の下肢関節のキネマティックスの測定.バイオメカニズム.2014.
  • KashitaroHyodo, et al. Hip, knee, and ankle kinematics during activities of daily living: a cross-sectional study. Braz J Phys Ther. 2017.
  • 中根邦雄.TKAで良好な可動域を獲得するには.The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine.2018.

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