【床からの立ち上がり動作】関わる身体的環境的要因とアプローチ3選

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床からの立ち上がり動作は、

こたつの出入や仏壇のお参りなど和式生活では頻度の多い動作ですね。

また、転倒した後に、自分で起きるためにも床からの立ち上がり動作は必要になります。

転んだまま床から起きれず、家の人が帰ってくるまで床に倒れていたために、低体温症や皮膚障害を併発した患者さんを経験したこともあります。

転倒後の二次的な障害を回避するためにも、床から起き上がる能力は重要です。

この記事では、

  1. 床からの立ち上がり動作のパターンと特徴
  2. 立ち上がり動作と関連する身体機能
  3. 立ち上がり動作獲得のためのアプローチ

について紹介します。

結論として、

  • 立ち上がり動作パターンは、しゃがみ、片膝立ち、高這いの3パターンがある
  • しゃがみパターンが最も難しく、高這いパターンが最も簡単
  • 床からの立ち上がり動作には、膝伸展筋力とバランス能力が特に重要な可能性
  • 床からの立ち上がり動作獲得に必要なアプローチは、動作パターン指導、支持物などの環境設定、身体機能の向上

です。

この記事を読むメリット
  • 床からの立ち上がり動作パターンの種類がわかる
  • 床からの立ち上がり動作と関係する身体機能がわかる
  • 動作獲得のアプローチがわかる

床からの立ち上がり動作3パターン(高這い、片膝立ち、しゃがみ)

床からの立ち上がり動作は大きく分けて、

  • 高這いパターン
  • 片膝立ちパターン
  • しゃがみパターン

の3パターンがあります。

床からの立ち上がり動作は、小児の発達段階では、高這い→片膝立ち→しゃがみの順番で獲得していきます。

高齢者では発達段階とは逆になり、しゃがみパターンで立ち上がる人の割合は減り、高這いパターンは増える傾向があります。

発達と加齢変化をふまえて、パターン別にみる動作の一般的な難易度は、

高這いパターンが最も簡単で、しゃがみパターンが最も難しいといわれています。

動作パターンの種類と一緒に、動作難易度をおさえておくとよいですね。

個人的には、片膝立ちでの指導が多かったんで、高這いパターンが比較的簡単なのは、ちょっと意外でした。

床からの立ち上がり動作パターンは身体機能によってできることが異なります。

原らは、実施できる動作パターンと身体機能が異なるか調査しています。

その結果、しゃがみパターンができる人と片膝立ちパターンができる人は、高這いパターンまで出来る人や立ち上がり困難な人と比べて、

有意に膝伸展筋力、歩行能力、バランス能力が高いことを報告しています。

身体機能が低いと難易度の高い動作パターンが困難となっていることがわかりますね。

臨床での肌感覚てきにも、高這いパターンや片膝立ちパターンの方が上肢の支持を活用しやすく、安定性も高いですね。

しゃがみパターンで立ち上がる患者さんは若い人がほとんどで、高齢者ではほとんど見かけない気がします。

つまり、ある程度身体機能が高い人では立ち上がり動作のパターンを気にする必要はないですが、

高齢者や身体機能の低下が著しい人では、難易度の高いしゃがみパターンよりも高這いや片膝立ちの選択を検討することも必要かもですね。

臨床では、体幹コルセットの使用や下肢の可動域制限、股関節脱臼肢位などの動作制限など、さまざまな制限があることも多いです。

患者さんの条件に応じて動作指導ができるように、色々な動作パターンとその特徴を把握すると、応用ができてよいですね。

ちなみに、高這いパターンの特徴の一つとして、

丸山らは、高這いパターンは、体幹前傾角度30°では脊柱起立筋の筋活動による体幹支持がメインとなり、

前傾角度が大きくなると筋活動が減少し、軟部組織を含めた骨関節による支持がメインとなると報告があります。

腰背部への負担軽減のためには、高這いパターンよりも片膝立ちパターンでの選択が良い可能性もあります。

他にも、床からの立ち上がり動作時の多裂筋と股関節内外旋位の関係も報告されています。

菊池らは、立ち上がり動作時に両側股関節内旋位では、外旋位と比べて多裂筋の筋活動が有意に高くなると報告されています。

そのため、腰背部筋への負担軽減のために股関節外旋位での動作パターンが有効である可能性が示されています。

体幹前傾角度や股関節の肢位によって腰背部の負担が変化するということも、ふまえて動作指導が必要ですね。

床からの立ち上がり動作と関連する身体機能

結論として、床からの立ち上がり動作に関わる身体機能としては、主に膝伸展筋力、バランス能力が重要です。

床からの立ち上がり動作能力の評価は、主に、動作が可能か困難か立ち上がり動作にかかる所要時間、の2つの評価方法が用いられているようです。

床からの立ち上がり所要時間と関連する身体機能は、

床からの立ち上がり動作の可否と関連する身体機能
  • 脳卒中片麻痺患者は体幹屈曲筋力、麻痺側と非麻痺側の下肢機能、バランス反応で有意差あり
  • 90歳以上の超高齢者は年齢、屋外歩行困難、階段昇降困難、重度認知症が関連
  • 中枢疾患や整形疾患を有する高齢者は膝伸展筋力で有意差あり
床からの立ち上がり所要時間と関連する身体機能
  • 地域高齢男性はTUG、歩行時間、6分間歩行テスト、足把持力、上体起こし、片足立位時間、握力、大腿四頭筋筋力と相関
  • 両側膝関節術後患者は膝伸展トルク、三大学膝機能試案と相関
  • 整形外科外来患者は膝伸展筋力、痛みの総数、FFD、FRと関連
  • 60歳以上の地域高齢者はTUG、歩行速度、握力と相関

膝伸展筋力とバランス能力が、複数の論文から報告されており、床からの立ち上がり動作との関連が大きいといえます。

膝伸展筋力は殿部を床から持ち上げる際など大きく影響しそうなのは感覚的にもわかりますね。

富田らは、重回帰分析の結果から立ち上がり能力に最も影響する項目として膝伸展筋力であると述べており、

井戸田らは、床からの立ち上がり可否の判断値は0.83Nm/kg、判断的中率は87.5%と報告しています。

また、中田らの報告では、健康成人を対象に大腿四頭筋を意図的にMMT3レベルまで制限した状態では、ほとんどの人が床からの立ち上がり動作が困難であったと報告しており、

大腿四頭筋の筋力が重要であることが示唆されています。

どちらの報告も解釈に注意が必要ですが、臨床的にはかなり興味深い報告ですね。

バランス能力は、TUG、片足立位時間、functional reach testの3評価が論文で用いられていました。

床からの立ち上がり動作は、四つ這いや高這いなどの支持基底面が広い状態から、支持基底面が狭くなる立位へと変化します。

また重心も低い位置から高い位置に移動するため、高いバランス能力が必要となります。

床からの立ち上がり動作でも、バランス能力に着目することは必要で、

特にTUGが速い(良好)なほど、立ち上がり能力が高いという報告も多いことから、

動的バランス能力を意識した介入が重要ですね。

疾患ごとにみると、

床からの立ち上がり動作能力と関連する身体機能は異なる可能性があります。

整形外科患者では、痛みの総数や柔軟性の評価と立ち上がり動作能力は関連を認めており、

脳卒中患者では、体幹屈曲筋力やバランス反応と立ち上がり動作能力は関連を認めていました。

脳卒中患者の体幹屈曲筋力が関わるのは、起き上がり動作の可否に影響していると考えられます。

脳卒中患者では、背臥位から起き上がり動作と立位までの立ち上がり動作に分解して考えることも臨床では重要ですね。

身体機能としては、下肢筋力とバランス能力はとても重要ですが、他の機能も見落とさないように注意は必要です。

床からの立ち上がり動作獲得のためのアプローチ3選

床からの立ち上がり動作獲得のためのアプローチを3つ紹介します。

  • 動作パターンの変更と指導
  • 支持物などの環境設定
  • 身体機能向上

Dawn R. Swancuttら、(転倒後の)床からの立ち上がりに関与する領域として、

環境、身体機能、自己効力感の3つを挙げており、環境と身体機能の重要性を報告しています。

立ち上がり動作パターンの変更と指導

立ち上がり動作パターンの種類は上述しましたが、動作パターンによって難易度が変わります。

身体機能が低下している患者や高齢者では高這いパターンを指導することもおススメです。(*疼痛や術後の影響で難しい肢位がある場合は注意が必要です!)

高這いパターンは、

両手を床につくため、最も支持基底面が広、安定性に優れており、安心感もあります。

また、両上肢+両下肢の運動により、最も重量のある殿を持ち上げるため、他の動作パターンと比べ、筋力が弱くても比較的実施しやすい動作です。

ただし、両手が床から離れて、股関節と体幹を屈曲位から中間位まで移動する際には、

ふらつき転倒につながる可能性があるため、注意が必要です。

疼痛や手術によって、脊柱や股関節の可動制限があると片膝立ちパターンを選択することも臨床では多いと思います。

片膝立ちパターンは、高這いと比べると支持基底面は狭く、一側の下肢の筋力で殿部を持ち上げる必要があり、

ある程度の高い身体機能が必要ということは知っておくと良いですね。

支持物などの環境設定

動作が大変であったり、困難な時に環境を調整して、

動作の負担を減らすことはハビリにおいて重要です。

床からの立ち上がり動作で最も大変な時は、

支持基底面が狭まる時、②重心が高い位置に移動する時

の2つのタイミングだと思います。

このタイミングで、効果的に支持物を使用できるように調整すると動作時の負担を軽減することができます。

そのため、立ち上がり動作パターンをふまえて、環境を検討するとよいですね。

例えば、

高這いパターンでの立ち上がりでは、こたつなどの高さが低い支持物を使用した場合、立位になる際の手が離れたタイミングでふらつく可能性があります。

バランス能力が悪いなら、はしご型の手すりや壁など触れやすい位置を考えて環境設定をする必要があります。

また、片膝立ちパターンでは、

片膝を立てた時に支持基底面が狭くなり、その後に一側の下肢筋力で殿部を持ち上げる必要があります。

狭い支持基底面と下肢筋力を補うために、片膝立ちパターンでは、低めの台やはしご型の手すりが使いやすいです。

低い台は四つ這い姿勢のように両側上肢で支持できるため、支持基底面が広くなり安定性が増します。

また、殿部を持ち上げる際にも、下肢の筋力のみでなく上肢を使うことができるため、下肢筋力低下を補うこともできます。

支持物や環境の使いやすさは、身体機能や精神機能など多くの要素が関わってくるため、あくまでも一例になりますが、

選択した動作パターンに合わせて支持物を含めた環境を調整することで、より床から立ち上がりやすくなります。

身体機能の強化

床からの立ち上がり能力に関わる身体機能として、特に下肢筋力バランス能力が関連しています。

そのため、膝伸展筋力やバランス能力(特に動的バランス能力)の向上を図ることは重要だと考えます。

また、患者さんの身体機能や状態によって異なり、

脳血管疾患の片麻痺患者では、背臥位から起き上がる際に体幹の屈筋群立ち直り反応、支持物を使用するために上肢機能が必要となり、

運動器疾患では、疼痛が阻害因子となり疼痛コントロールが必要となります。

下肢筋力やバランス能力は重要ですが、患者さんの動作を評価した上で、上肢体幹を含めたトータル的な身体機能の向上が必要ですね。

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まとめ

  • 床からの立ち上がり動作パターンは高這いパターン,片膝立ちパターン,しゃがみパターンの3種類
  • 高這いパターンが最も簡単でしゃがみパターンが最も難しい
  • 床からの立ち上がり能力は膝伸展筋力とバランス能力(特に動的バランス)が関連
  • 脳血管疾患や運動器疾患など症例によって重要な身体機能は異なる
  • 床からの立ち上がり動作獲得のためには3つのアプローチが重要
    1. 動作パターンの変更と指導:高這いパターンは身体機能低下しても用いりやすい
    2. 支持物などの環境設定:はしご型手すりやテーブルなど選択した動作パターンに応じて支持物を検討する
    3. 身体機能の向上:膝伸展筋力とバランス能力は特に重要

参考資料

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