
座っている時間が長いけど、何をしたらよいの?

座っている時間を、どれくらい活動に置き換えると効果的?
座位行動(sedentary behaviour)とは、座っている、もたれている、横になっている状態で、1.5METs以下のエネルギー消費が特徴的な行動1)。
座位時間は1日の座位行動をしている時間。
WHO身体活動・座位行動ガイドラインにおいても、座位行動を身体活動に置き換えることを推奨しています1)。
この記事では、座位時間を「どんな」身体活動に、「どのくらいの時間」置き換えると効果があるか論文をもとにエビデンスを解説します。
この記事の結論は以下の通りです。
- 1日10分の座位時間をウォーキングや中~高強度の身体活動に置き換えると死亡リスクは減少
- 1日10分の座位時間を中~高強度の身体活動に置き換えると要介護リスクは減少
- 座位時間を活動に置き換えることで、心血管疾患や認知症の発症リスクが減少
この記事は、地域住民向けに実施した健康講話の内容をエビデンスベースにしました。
座位時間と健康への影響や別の地域講話で紹介した内容は別の記事で解説しています。
座位時間を身体活動に置き換えることは、予防や健康の維持に重要です。
- 1日何時間の座位時間を置き換えたらよいかわかる
- どんな身体活動に置き換えたらよいかわかる
死亡リスクへの座位時間の置き換え効果
ここでは、座位時間を身体活動に置き換えることで、死亡リスクへの効果を解説します。
結論は以下の通りです。
- 座位時間を身体活動に置き換えることで死亡リスクは減少する
- 1日30分の座位時間をウォーキングのような軽強度の活動に置き換えるだけでも死亡リスクは減少する(HR 0.94~0.97)
- 日本人を対象とした調査でも、1日10分の座位時間を中~高強度の身体活動に置き換えると、死亡リスクは減少する

Changらは、イギリスのUKバイオバンクとアメリカの国民栄養調査(NHANES)という大規模データから、座位時間を身体活動に置き換えた死亡リスクへの効果を調査しました2)。
対象は、UKバイオバンクデータ490,659名、NHANESデータ33,534名
身体活動や座位時間は自記式質問票にて、以下のように評価した。
- UKバイオバンク:座位時間は、テレビを見たり、コンピュータを使用したり、運転したりした合計時間と定義。典型的な1日で何時間を費やしているか尋ねた。身体活動は、①楽しむウォーキング、②軽いDIY(芝生への水やりなど)、③思いDIY(芝刈り、大工仕事など)、④激しいスポーツ(発汗と激しい呼吸を誘発する)、⑤その他の運動(サイクリング、水泳など)について、それぞれ1週間の頻度と平均継続時間を尋ねた。
- NHANES:座位時間は、睡眠時間を除いて典型的な1日に座ったり、リクライニングしたりして過ごす時間を尋ねた。身体活動は、ウォーキングやサイクリング(移動手段)、労働とレクリエーションに分け、1週間の頻度と平均継続時間を尋ねた。
統計解析として、座位時間を特定の種類の身体活動に置き換えることによる死亡率への影響を推定。
座位時間をさまざまな種類の活動に置き換えた結果は、以下の通りです。
- UKバイオバンク:1日30分の座位時間を身体活動に置き換えることで、全死因死亡リスクが3~9%減少した(HR0.91~0.97)
- NHANES:1日30分の座位時間を身体活動に置き換えることで、全死因死亡リスクが5~19%減少した(HR0.81~0.95)
- 1日の置き換え時間を30分から60分にすることで、さらに大きな死亡リスクの減少を認める

大規模なデータから、座位時間を身体活動に置き換えることで死亡リスクが減少することが明らかとなっています。
しかも、座位時間を30分という短い時間を、ウォーキングなどの軽い活動に置き換えるだけでも有意な死亡リスク減少効果を認めています。
軽負荷で短時間の活動でも良いということは、生活に取り入れやすいですね。
また、日本人を対象とした調査においても、座位時間を身体活動に置き換えることで死亡リスクが減少することが報告されています。
Watanabeらは、高齢者における身体活動・座位時間と障害・死亡率との関連を前向きコホートで調査しました3)。
対象は、京都府亀岡市在住の65歳以上地域住民10,164名。
活動量の測定は自記式質問票であるIPAQ-SFを使用し、1日の座位時間と1週間のMVPA(中~高強度の身体活動)を測定。
統計解析として、「毎日10分間の座位時間を10分間の中~高強度身体活動(MVPA)時間に置き換える死亡リスク」を、多変量補正代替法にて算出。
10分間の座位時間をMVPAに置き換えた結果は、以下の通りです。
毎日10分間の座位時間を、10分間のMVPAに置き換えると死亡リスクは2.5%も有意に減少した(HR 0.975, 95%CI 0.962~0.988)

日本人の地域高齢者においても、1日10分の座位時間を中~高強度の活動に置き換えることで死亡リスクが減少することが明らかとなっています。
また、日本人を対象とした調査では、自記式質問票ではなく加速度計を用いた調査もあります。
加速度計による活動量の測定は、客観的で質問票よりも信頼性が高いとされています。
Chenらは、日本人高齢者における加速度計による活動・座位時間と死亡率の関連性を10年間調査しました4)。
対象は、65歳以上の障害がない福岡県高齢者1723名。
活動量は腰部に3軸加速度計を1週間装着。
座位時間は≤1.5 MET、LPA(軽強度の身体活動)は1.6〜2.9 MET 、MVPA(中~高強度の身体活動)は≥3 METの活動に費やされた時間と定義。
等時間的置換モデルによって、加速度計の装着時間を一定に保ちながら、10分の座位時間を同時間のLPAやMVPAに置き換えた場合の理論的効果を推定しました。
10分間の座位時間をLPAやMVPAに置き換えた結果は、以下の通りです。
- 10分間の座位時間をMVPAに置き換えると、死亡リスクは12%減少した(HR 0.88、95%CI 0.83~0.93)
- 10分間のLPAをMVPAに置き換えると、死亡リスクは11%減少した(HR 0.89, 95%CI 0.84~0.95)

1日10分の座位時間や軽強度の活動を中~高強度の活動に置き換えると、死亡リスクは有意に減少しました。
加速度計を用いた調査でも、座位時間を身体活動に置き換えることで、死亡リスクは減少することが明らかとなっています。
ここまで、座位時間を身体活動に置き換える、死亡リスクへの効果を解説しました。
各国の大規模調査や日本の地域高齢者における調査の結果から、座位時間を身体活動に置き換えることで死亡リスクが減少することが明らかとなっています。
1日10分でよいので、座位時間を活動する時間に置き換えることが健康に重要ですね。
要介護や疾患発症リスクへの座位時間の置き換え効果
ここでは、座位時間を身体活動に置き換えることで、要介護や疾患発症リスクが減少することについて解説します。
結論は以下の通りです。
- 要介護リスクは、10分の座位時間を中~高強度の活動に置き換えると2%減少
- “健康的な老化”へのオッズ比は、1時間の座位時間を軽強度や中~高強度の活動に置き換えるとオッズ比が増加
- 心血管疾患の発症リスク、1時間の座位活動を軽強度の活動に置き換えると16%減少
- 認知症発症のリスクは、30分の座位時間をDIYや運動に置き換えると7~18%減少

要介護リスク・健康的な老いへの座位時間の置き換え効果
座位時間の置き換えによる要介護リスクや健康的な老いへの影響を解説します。
結論は以下の通りです。
- 10分の座位時間を中~高強度の活動に置き換えることで、要介護リスクを減少できる
- 1時間の座位時間を軽活動に置き換えることで、慢性疾患や障害のない老いに有益
Watanabeらは、日本人高齢者を対象に座位時間・身体活動と障害との関係を前向きコホート研究にて調査しました3)。
対象は、京都府在住の65歳以上地域住民10,164名。
活動は、自記式質問票であるIPAQ-SFからMVPA(1週間の中~高強度の身体活動)と1日の座位時間を測定。
統計解析として、「毎日10分間の座位時間を10分間のMVPA時間に置き換える障害リスク」を、多変量補正代替法にて算出。
障害とは、要介護認定で要支援1以上と定義。
毎日10分の座位時間をMVPAに置き換えた障害リスクの結果は、以下の通りです。
毎日10分の座位時間をMVPAに置き換えると、障害リスクは2%減少した(HR 0.980、95%CI 0.971~0.989)

日本人高齢者を対象とした調査から、10分の座位時間を中~高強度の活動に置き換えることで、要介護リスクが減少することが明らかとなっています。
短時間でよいので、座位時間を置き換えることが重要ですね。
また、座位時間の置き換え効果についてはJAMA Netw Openというインパクトファクターが非常に高いジャーナルでも報告されています。
Shiらは、座位行動と”健康的な老化”との関連性を前向きコホート研究にて調査しました5)。
対象は看護師健康調査(NHS)データから50歳以上で主要な慢性疾患がない女性で、70歳に達する20年間まで追跡できた45,176 人(59.2±6.0歳)。
活動や座位時間は自記式質問票で評価:
- 座位時間は「平均して、1 週間に何時間、自宅でテレビやビデオ カセット レコーダーを観ながら座っていますか」という質問で評価。
- 家でも軽活動(LPA-Work)は、「平均して、職場または自宅以外で週に何時間、立ったり歩き回ったりしていますか?」という質問で評価、主に職業活動を反映。
- 仕事での軽活動(LPA-Home)は、「平均して、自宅で週に何時間、立ったり歩き回ったりしていますか?」という質問で評価、主に家事労働を反映。
- MVPA(中~高強度の身体活動)は、ウォーキングなどのレクレーション活動の時間を評価。
健康的な老化:主要な慢性疾患がなく、身体機能、記憶、精神的健康に障害がなく、少なくとも70歳まで生存と定義。
1時間の座位時間を活動に置き換える効果は以下の通りです。
1時間の座位時間を置き換えることによる“健康な老化”のオッズ比
- 家での軽強度活動への置き換えで8%増加(OR 1.08、95%CI 1.05~1.12)
- 仕事での軽強度活動への置き換えで10%増加(OR 1.10、95%CI 1.07~1.14)
- 中~高強度の活動への置き換えで28%増加(OR 1.28、95%CI 1.23~1.34)

1時間の座位時間を軽強度や中~高強度の活動に置き換えることで、慢性疾患や障害がない”健康的な老化”となるオッズ比が増加することが明らかとなりました。
要介護リスクを予防し、健康的に年をとるために、座位時間を活動に置き換えることは重要です。
できれば中~高強度の活動の方が効果は高いですが、仕事や家事でもよいので、座り時間を置き換えてみましょう。
心血管疾患発症リスクへの座位時間の置き換え効果
ここでは、心血管疾患の発症リスクと座位時間の置き換えによる影響について論文を紹介します。
Onagbiyeらは、座位行動と心血管疾患発症リスクの関係をメタ解析にて調査しました6)。
対象は、座位行動と心血管疾患(CVD)の発症リスクを調査した27のコホート研究、22,257名。
活動量は6研究で加速度計を使用し、その他の研究では自己申告で評価。
統計解析として、等時間的置換分析の結果を用いてメタ解析を実施し、座位時間1時間を軽強度の身体活動に置き換えることによるCVDリスクの低減効果を推定。
1時間の座位時間を軽強度の活動に置き換えたCVDリスクの結果は、以下の通りです。
1時間の座位活動を軽強度の身体活動に置き換えると、心血管疾患リスクが16%減少した(RR 0.84,95% CI 0.73~0.97)

エビデンスレベルの高いコホート研究のメタ解析の結果から、
1時間の座位時間を軽強度の身体活動に置き換えることで、心血管疾患の発症リスクが減少することが明らかとなっています。
1時間は比較的長く感じるかもしれませんが、軽強度の活動でよいので座位時間を置き換えるようにしましょう。
認知症リスクへの座位時間の置き換え効果
ここでは、座位時間の置き換えによる認知症リスクの低減について論文を紹介します。
Sunらは、大規模な前向きコホート研究にて、座位時間と認知症の関係について調査しました7)。
対象はイギリスのUKバイオバンクデータから37~73歳の地域住民484,169名。
座位時間の測定:自記式質問票にて、余暇時間の座位時間(運転、テレビ視聴を含む)を測定。
身体活動の測定:①楽しむウォーキング、②軽いDIY(芝生への水やりなど)、③思いDIY(芝刈り、大工仕事など)、④激しいスポーツ(発汗と激しい呼吸を誘発する)、⑤その他の運動(サイクリング、水泳など)の5種類に分類して、1週間の頻度と時間を測定。
認知症の発症は、プライマリケアおよび入院患者の記録から取得。
統計解析は、等時間的代替モデルを使用して、座位時間を異なる種類の身体活動に置き換えることによる効果を推定。
30分の座位時間を身体活動に置き換えた効果は、以下の通りです。
- 軽いDIY:認知症リスクは12%減少(HR 0.88, 95%CI 0.85~0.92)
- 重いDIY:認知症リスクは7%減少(HR 0.93, 95%CI 0.89~0.97)
- その他の運動:認知症リスクは18%減少(HR 0.82, 95%CI 0.78~0.86)

1日30分の座位時間をDIYやサイクリングなどの運動に置き換えることで、認知症の発症を予防できることを報告しています。
大規模な前向きコホート研究から、座位時間を身体活動に置き換えることで認知症予防の効果が期待できます。
30分でよいので、体を動かすような趣味活動を取り入れることも重要ですね。
まとめ
ここまで、座位時間を身体活動の置き換える効果について解説しました。
- イギリスの大規模調査では、1日30分の座位時間をウォーキングやDIY、活動に置き換えることで、全死因死亡リスクが3~9%減少した(HR0.91~0.97)
- アメリカの大規模調査では、1日30分の座位時間をウォーキングやレクリエーション活動に置き換えることで、全死因死亡リスクが5~19%減少した(HR0.81~0.95)
- 日本人を対象とした研究において、10分の座位時間を中~高強度の活動に置き換えると、死亡リスクは2.5%(IPAQ-SF使用)や12%(加速度計使用)減少した
- 毎日10分の座位時間を中~高強度の身体活動に置き換えると、介護認定で要支援1以上となるリスクは2%減少する
- 1時間の座位時間を仕事や家での軽強度活動に置き換えることで、“健康的な老化”へのオッズ比が増加する
- コホート研究を対象としたメタ解析の結果から、1時間の座位活動を軽強度の身体活動に置き換えると、心血管疾患リスクは16%減少する
- 30分の座位時間をDIYやサイクリングなどの運動に置き換えることで、認知症のリスクが7~18%減少する
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
参考資料
- WHO身体活動・座位行動ガイドライン2020年版(日本語版)https://www.nibn.go.jp/eiken/info/pdf/WHO_undo_guideline2020.pdf
- Qinyu Chang, et al. Replacement of sedentary behavior with various physical activities and the risk of all-cause and cause-specific mortality. BMC Med. 2024.
- Daiki Watanabe, et al. Associations of Moderate-to-vigorous Physical Activity and Sitting Time With Risk of Disability and Mortality Among Japanese Older Adults. J Epidemiol. 2025.
- Tao Chen, et al. Associations of objectively measured physical activity and sedentary time with all-cause mortality in Japanese older adults: a 10-year prospective study. Br J Sports Med. 2025.
- Hongying Shi, et al. Sedentary Behaviors, Light-Intensity Physical Activity, and Healthy Aging. JAMA Netw Open. 2024.
- S Onagbiye, et al. Association of sedentary time with risk of cardiovascular diseases and cardiovascular mortality: A systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies. Prev Med. 2024.
- Ying Sun, et al. Replacement of leisure-time sedentary behavior with various physical activities and the risk of dementia incidence and mortality: A prospective cohort study. J Sport Health Sci. 2023.





コメント