当院は言語聴覚士(ST)さんがいないほど,地方の小規模病院です.
しかし,誤嚥性肺炎で入院して食事がストップする方は多く,摂食嚥下に関する知識が必要です.
当院では,食事に関して担当医師,看護師,栄養士,理学療法士が検討して,
STさんがいない穴をみんなで補っている形です.
今回はそんな中で勉強した,摂食嚥下と意識レベルに関する内容を紹介したいと思います.
摂食嚥下に必要な意識レベルがわかる
嚥下障害とGCS(Glasgow Coma Scale)
意識レベル評価 GCS(Glasgow Coma Scale)は
開眼,言語機能,運動反応の3項目から評価します.
開眼項目1~4点,言語機能項目1~5点,運動反応項目1~6点です.
表記の例として,E4V4M5となり,3項目を合計すると13点となります.
ちなみに合計点13点以下では,頭部CT検査などで頭蓋内病変の有無を調べる必要があります.
日本の肺炎患者を対象としたObaら研究では,
GCSを用いて急性肺炎後の食事開始時に簡易スクリーニングとして有用か検討しています.
結果として,ROC曲線分析から食事再開意識レベルはGCS≤14(感度0.71,特異度0.80)でした.
この報告を見ると嚥下にはかなり良好な意識レベルが必要でありそうです.
睡眠薬の使用や昼夜逆転での生活などで意識レベルが低下している場合,
食事開始のタイミングを検討する必要がありそうです.
嚥下障害とJCS(Japan Coma Scale)
JCSは日本で使われている覚醒の程度を刺激の有無で分類している指標です.
JCSの記載方法は,Ⅰ-2などではなく,2など数字のみで表記します.
ちなみにJCSでは,不穏状態はR,失禁があればI,自発性が喪失していればAと追記します.
つまり「自発的開眼するが見当識障害があって不穏な状態」では,2-Rと表記します.
脳卒中の摂食・嚥下障害 第2版によると,
直接嚥下訓練の開始基準はJCS0(意識清明)あるいはJCSⅠ桁(刺激しないでも覚醒している状態)とされています.
また,藤原らの報告(藤原葉子ら.急性期病院における嚥下障害患者の意識医レベルと経口摂取確立の成否との関係.日本摂食嚥下リハ会誌,2015.)では,
経口摂取確立者の割合は,JCS10では0%であったと述べており,やっぱり摂食にはかなり高い意識レベルが必要です.
臨床ではJCSⅡ桁以上の症例では,薬物調整を含めまずは覚醒水準の向上を目指すことが目標になりそうです.
ちなみに日本での摂食に関する意識レベルの評価は,
嚥下障害診療ガイドライン2018でも記載されているJCSが主流なようです.
まとめ
嚥下機能に意識レベルが重要であり,
GCSで14点以上,JCSでⅠ桁以上の覚醒状態を目指す必要があります.
食事開始を検討する際に,1日の中の意識レベルを評価し,
他職種と共有することもリハビリの役割の1つかと思います.
また,誤嚥予防のためにも患者さんの意識レベルを評価し,
薬物コントロールを含めチーム医療で覚醒状態の向上を図ることが重要です.
ここまで読んで頂きありがとうございました.
何かのお役に立てたなら幸いです.
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