【小学生・中学生】スポーツにおける柔軟性評価・柔軟トレーニング理論と具体例8選【ストレッチ】

評価
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スポーツに関する柔軟性の評価ってなに?目安は?

スポーツにおける柔軟トレーニングってどうするの?

柔軟性はスポーツにおけるケガやパフォーマンスに関係する重要な能力であり、

小学生・中学生では成長の影響により柔軟性が低下しやすいことを別記事にて解説しました。

柔軟性の大切さを理解した後は、柔軟性の具体的な評価と有効な柔軟トレーニングを知ることが重要です。

この記事では、スポーツにおける柔軟性の評価と柔軟トレーニングプログラムについて解説します。

この記事の結論は以下の通りです。

  • 柔軟性は関節可動域や運動テストで評価する
  • オーバーヘッドスポーツでは肩関節の2nd内旋が大切
  • 柔軟性を向上させるプログラムは、静的ストレッチを1回30秒以上2~4回週3日以上の頻度で2週間以上継続(身長の成長期)

論文などのエビデンスを基にまとめているため、運動指導やプログラムの作成に役立てば幸いです。

この記事を読むメリット
  • スポーツにおける柔軟性の評価がわかる
  • 柔軟トレーニングのプログラムと具体例がわかる

スポーツにおける柔軟性の評価:関節可動域測定

柔軟性の評価は、関節可動域や運動テストによる判定が多いです。

ここでは、スポーツ傷害のリスクが高くなる関節可動域のカットオフ値について解説します。

結論は以下の通りです。

  • 下肢の関節可動域はスポーツ傷害リスクのカットオフ値が報告されている
  • オーバーヘッドスポーツでは、肩関節2nd外旋129~137°、2nd内旋54~61°が必要

まず、スポーツ傷害リスクと関節可動域についての解説です。

Cejudoらは、2022年にROM-SPORTⅠバッテリーによるスポーツ傷害のリスクとなる下肢関節可動域のカットオフ値を報告しています¹⁾。

その結果は以下の通りでした。

膝伸展位で股関節屈曲(SLR)≤ 68~88°
膝屈曲位で股関節屈曲≤ 111~120°
膝フリーで股関節伸展< 0~13°
股90°屈曲位で股関節内転≤ 19~26°
股90°屈曲位で股関節外転≤ 50~80°
膝伸展位で股関節外転≤ 28~45°
股関節内旋≤ 23~30°
股関節外旋≤ 24~26°
膝関節屈曲≤ 120~132°
膝伸展位で足関節背屈≤ 17°
膝屈曲位で足関節背屈≤ 28~45°

関節可動域の評価を行い、カットオフ値を満たしいない関節の運動方向は、ピックアップしておきましょう。

カットオフ値に達しないと必ずケガをするわけではないですが、柔軟性が低下している指標となります。

また、上肢に関しては肩関節の柔軟性とスポーツ傷害について報告があります。

Reinoldらは、オーバーヘッドスポーツ(野球やテニス、バレーなど腕を上にあげるスポーツ)に関して以下のように報告しています²⁾³⁾。

  • オーバーヘッドスポーツでは、内旋(2nd)と肩全体の可動域が減少する
  • 投球側の肩関節では外旋可動域が大きくなりやすい
  • オーバーヘッドスポーツの肩では、129~137°の2nd外旋、54~61°の2nd内旋、そして2nd外旋と内旋の合計可動域が183~198°が必要

さらに、Yeralらは、水泳選手を対象に肩関節可動域とケガのリスクについて調査し、以下のように報告しています⁴⁾。

青年期男性水泳選手において,2nd内旋可動域が57~90°の範囲の選手は,0~56°の選手よりもケガのリスクが低い

これらの調査結果から、肩関節可動域は2nd内旋57°以上がスポーツ傷害を予防するために重要であると考えられます。

特に、オーバーヘッドスポーツでは、肩関節の2nd内旋や外旋の可動域を確認しましょう。

スポーツにおける柔軟性の評価:運動テスト

柔軟性の評価に関しては、関節可動域だけでなく運動テストでも評価が可能です。

小学生や中学生では、関節可動域測定より感覚的に理解しやすいこともあります。

肩可動テスト、体幹回転テスト、FFD、SLR、HBDなどの運動テストによって柔軟性を評価できる

ここでは、いくつかテストを紹介します⁵⁾⁶⁾。

肩関節の運動テスト:肩可動テスト

方法
  1. 片手を頭の後ろに伸ばし,もう一方の手を背中に伸ばす
  2. 真っすぐな姿勢で両手の指先を合わせようとする
判定
  • 左右とも指先が触れれば、肩の柔軟性は○
  • 「上に行きにくいか」「下に行きにくいか」を左右で比較する
  • オーバーヘッドスポーツでは,「上に行きにくさ」が特に重要

体幹の運動テスト:体幹回転テスト

方法
  1. 両足を閉じて、肘と肩を90°曲げた姿勢で立つ
  2. 後ろを向くように、頭・片・腰をできるだけ回転させる
判定
  • 向いた側の反対側の肩が見えれば、体幹の柔軟性は○
  • 肘が下がらないように確認

体幹と下肢の運動テスト:指床間距離FFDテスト

方法
  1. 膝を伸ばしたまま体を前に曲げて、床に手を伸ばす(膝が曲がらないように注意)
判定
  • 指が床まで届けば、腰背部や太もも裏の柔軟性は○
  • 指と床の距離を測ることで数値による評価も可能

下肢の運動テスト:踵殿部間距離HBDテスト

方法
  1. うつ伏せに寝る
  2. 片側の踵が膝に着けるように膝を曲げる(お尻が上がらない、膝が外に開かないように注意)
判定
  • 踵がお尻に着けば太もも前の柔軟性は○
  • 踵とお尻の距離を測ることで数値による評価も可能

下肢の運動テスト:足上げSLRテスト

方法
  1. 上向きで寝る
  2. 片側の膝を伸ばしたまま足を上に挙げる(膝が曲がらないように注意)
判定
  • 足が70°まで上がれば、太もも裏の柔軟性は○
  • 足の角度を測ることで数値による評価も可能

運動テストは簡単かつ短時間で評価できます。

また、楽しく行えるため、小学生・中学生にも実施しやすいです。

是非、柔軟性の評価に取り入れてみましょう。

柔軟性のトレーニング理論

ここでは、柔軟性を向上させるトレーニングの理論や具体的な方法を紹介します。

以下、結論です。

  • 柔軟性のトレーニング種目は静的ストレッチ(スタティックストレッチ)
  • ストレッチ時間は30秒以上
  • 回数の目安は2~4回、頻度は週3日以上
  • トレーニング期間は2週間以上もしくは身長の成長期

詳細については以下にまとめます。

柔軟性を向上するトレーニングは静的ストレッチが最適

柔軟性の向上(関節可動域の拡大)を狙ったトレーニングでは、静的ストレッチが最適です。

ストレッチには、いくつか種類があります。

静的ストレッチ:反動をつけずにゆっくりと伸ばし、伸びた状態で一定時間、留めるストレッチ

動的ストレッチ:体を動かして筋肉を刺激しながら関節の可動域を広げるストレッチ

PNFストレッチ:固有受容性神経筋促通法。筋肉の収縮あとの筋を緩めようとする働きを利用したストレッチ

バリスティックストレッチ:反動や勢いをつけて伸ばすストレッチ

ストレッチの種類と柔軟性の向上について調査した報告があります。

Konaradらは、77研究を対象にメタ解析で調査した結果を以下のように述べています⁷⁾。

静的ストレッチ(SDM -1.01)とPNFストレッチ(SMD -1.28)は動的ストレッチ/バリスティックストレッチ(SMD -0.55)と比べ、可動域拡大効果が大きかった

静的ストレッチとPNFストレッチの間には有意差は見られなかった(p  = 0.28)

関節可動域拡大には、静的ストレッチとPNFストレッチが効果的であることを報告しています。

静的ストレッチとPNFストレッチのどちらを選択しても良いのですが、一人でも容易に実践しやすい静的ストレッチが適切だと思います。

ストレッチ時間は30秒以上が重要

静的ストレッチ1回の時間は30秒以上が重要です。

静的ストレッチ1回の適切な時間に関しては多くの調査があります。

Moustafaらは、ハムストリングスを対象にストレッチの適切な時間を調査しました⁸⁾。

  • ストレッチ時間は30秒以上で関節可動域拡大に有効であった
  • 60秒ストレッチすると神経的な悪影響を生じる可能性があり、30秒のストレッチが最適

15秒のストレッチよりも30秒以上のストレッチが関節可動域拡大に有効であることを報告しています。

ストレッチ時間に関しては、別の記事でも解説しています。

静的ストレッチを実施する際は1回30秒を目安にしましょう。

ストレッチは2~3回・週3回以上の頻度が目安

静的ストレッチによる柔軟性の向上に関しては、目安として回数4回、週3日以上です。

Arntzらは、41研究を対象としたメタ解析の結果、静的ストレッチは柔軟性向上の大きな効果(SMD 0.96)があることを報告しています⁹⁾。

その調査における静的ストレッチプログラムの中央値は以下の通りでした。

  • 運動あたりのストレッチ時間の中央値 30秒(2~300秒)
  • セッション当たりの回数の中央値 4回(1~30回)
  • 週当たりのセッション頻度の中央値 3回/週
  • 介入期間の中央値 6週間(2~24週)

あくまでも、ストレッチ効果を報告した研究のプログラムの中央値ですが、ストレッチプログラムを作成する目安になると考えられます。

ただし、柔軟性の改善には、1週間あたり10分の累積ストレッチング量によって最大化されたという報告もあります¹⁰⁾。

また、週のストレッチ頻度や総ストレッチ時間に関しては、柔軟トレーニング効果に影響しないという報告⁷⁾や影響するという報告⁹⁾の両方があります。

さらに、Dontiらは、6~11歳の小児期は高用量のストレッチは低用量のストレッチも効果があるが、12~18歳の青年期では高用量も低用量もストレッチ効果に差はなかったと報告しています¹¹⁾。

現段階では、ストレッチの回数や頻度、総ストレッチ時間による柔軟性の効果に関しては、決着がついていない印象です。

ただし、小学生・中学生では、積極的な筋力トレーニングも難しく、成長による柔軟性も低下しやすいため、積極的なストレッチは必要であると考えています。

ストレッチトレーニングの期間は2週間・小学生中学生は成長期間中

ストレッチトレーニングの期間は2週間以上、もしくは小学生中学生では身長が成長期の間は継続しましょう。

小学生・中学生で身長の成長時期にストレッチが重要な理由は、別記事にて紹介しています。

Konradらのメタ解析による調査の結果、2週間以上のストレッチトレーニングで関節可動域は長期的に拡大する可能性があると報告しています⁷⁾。

ストレッチトレーニングは、速ければ2週間程度から効果を認めるかもしれません。

ただし、Arntzらのメタ解析では、介入期間の中央値は6週間(2~24週)でした⁹⁾。

一般的には2~3ヶ月程度の時間が必要と考える方がよいでしょう。

スポーツにおける静的ストレッチの具体的なメニュー

ここでは、具体的な静的ストレッチのメニューについて紹介します。

オーバーハンドスポーツでは、肩後方のストレッチは特に重要です。

また、成長期の小学生・中学生はもも裏やアキレス腱の柔軟性が顕著に低下しやすいため、積極的に行いましょう。

肩後方のストレッチ

肩と大胸筋のストレッチ

もも裏のストレッチ

お尻のストレッチ

もも前のストレッチ

アキレス腱のストレッチ

内もものストレッチ

股のストレッチ

まとめ

スポーツにおける柔軟性の評価と柔軟トレーニングのプログラムについて解説しました。

  • 下肢の関節可動域はスポーツ傷害リスクのカットオフ値がある
  • オーバーヘッドスポーツでは、肩関節2nd内旋が重要であり、2nd内旋54°以上は必要
  • 肩可動テスト、体幹回転テスト、FFD、SLR、HBDなどの運動テストによって柔軟性を評価できる
  • 運動テストは簡単で理解しやすいため、小学生・中学生にも実施しやすい
  • 柔軟性のトレーニング種目は静的ストレッチ(スタティックストレッチ)
  • ストレッチ時間は30秒以上
  • ストレッチ回数の目安は2~4回、頻度は週3日以上
  • トレーニング期間は2週間以上もしくは身長の成長期

スポーツにおける柔軟性は重要な要素です。

柔軟トレーニングの理論を理解して、積極的に取り入れましょう。

参考資料

  1. Antonio Cejudo, et al. Description of ROM-SPORT I Battery: Keys to Assess Lower Limb Flexibility. Int J Environ Res Public Health. 2022.
  2. Michael M Reinold, et al. Current concepts in the evaluation and treatment of the shoulder in overhead throwing athletes, part 2: injury prevention and treatment. Sports Health. 2010.
  3. Michael M Reinold, et al. Microinstability of the shoulder in the overhead athlete. Int J Sports Phys Ther. 2013.
  4. Aslı Yeral, et al. Investigation of Predisposing Risk Factors in Adolescent Male Water Polo Players. Sports Health. 2024.
  5. Kyle A. Matsel, et al. A Field-expedient Arm Care Screening Tool Can Identify Musculoskeletal Risk Factors in Baseball Players. Sports Health. 2023.
  6. Masahiko Kemmochi, et al. Association between reduced trunk flexibility in children and lumbar stress fractures. J Orthop. 2018.
  7. Andreas Konrad, et al. Chronic effects of stretching on range of motion with consideration of potential moderating variables: A systematic review with meta-analysis. J Sport Health Sci. 2023.
  8. Ibrahim M Moustafa, et al. Optimal duration of stretching of the hamstring muscle group in older adults: a randomized controlled trial. Eur J Phys Rehabil Med. 2021.
  9. Fabian Arntz, et al. Chronic Effects of Static Stretching Exercises on Muscle Strength and Power in Healthy Individuals Across the Lifespan: A Systematic Review with Multi-level Meta-analysis. Sports Med. 2023.
  10. Lewis A Ingram, et al. Optimising the Dose of Static Stretching to Improve Flexibility: A Systematic Review, Meta-analysis and Multivariate Meta-regression. Sports Med. 2024.
  11. Olyvia Donti, et al. Is There a “Window of Opportunity” for Flexibility Development in Youth? A Systematic Review with Meta-analysis. Sports Med Open. 2022.

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