ヘルスリテラシ―の評価方法ってどんなのがあるの?具体的な質問紙を紹介します【論文】

評価
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今回は,ヘルスリテラシ―についてのお話しです.

そもそもヘルスリテラシ―という言葉を耳にしたことはありますか?

WHOによると

健康の維持・増進のために情報をアクセスし,理解,活用する動機や能力を決定する認知的,社会的スキル

Nutbeam D. Health promotion glossary. Health Promot Int 1998; 13: 349-364.

と定義されています.

他にも多くの分野でいろんな定義があったりしますが,簡単にいうと”自分の健康を自分で良くするスキル”だと思ってください.

ヘルスリテラシ―は,健康の増進や歩行速度などと関わり,内服のコントロールや医療行為を行う上でも重要な能力になります.

また,地域の場で教育や健康増進活動などを通してヘルスリテラシ―を高める活動は多くあり,予防的側面からも重要だと思います.

でも,ヘルスリテラシ―を評価する方法をみなさんご存知でしょうか?

ヘルスリテラシ―を高める地域活動をする,もしくは患者教育を行う上で,これを評価して,変化があるのかを確認することはとても重要だと思います.

今回はヘルスリテラシ―の評価方法に関する論文を紹介します.

この論文を読むことで,具体的なヘルスリテラシ―の評価方法を知りことができ,患者さんの現在のヘルスリテラシ―を評価できるようになります.

そして自分の行っている活動に対する効果を確認できるようになり,患者さんが自主的に健康増進活動を行う際のサポートを行いやすくなると思います.

これを読むとこんなメリットがあります

  • ヘルスリテラシ―の評価方法がわかる
  • 患者さん自身の自己管理レベルがわかる
  • 患者教育や指導,健康推進活動の効果判定に使える

論文紹介

Hirono Ishikawa.et al. Measuring functional, communicative, and critical health literacy among diabetic patients. Diabetes Care. 2008.

「糖尿病患者の機能的,伝達的および批判的なヘルスリテラシーの測定」

目的

この論文の目的は,2型糖尿病患者さんを対象にヘルスリテラシー(以下,HL)を機能的,伝達的,批判的な3つのカテゴリーに分けた新しいスケールの性能を調査することです.

方法

対象者は日本の大学病院の内科で診察を受けている2型糖尿病の外来患者さんです.

その中で協力が得られ,HbA1c5.8%未満の患者さんなどを除外した138名,平均年齢65.0±9.9歳,糖尿病期間11.5±9.4年の患者さんが対象となりました.

ヘルスリテラシーの測定方法は,機能的HLは5項目,伝達的HLも5項目,批判的HLは4項目の質問からなる自記式質問紙です.

各質問に対して,1(全くない)~4(よくあった)の4段階で回答します.

それぞれのカテゴリーで質問の点数を合計して,質問の数で割った値がスコアになります.

例えば,機能的HLで5つの質問ですべて4(よくあった)と回答したら,4×5=20.

20÷5(質問数)=4が機能的HLのスコアになります.

機能的HLはスコアが低いほどヘルスリテラシ―が高いことを示し,伝達的HL,批判的HLはスコアが高いほどヘルスリテラシ―が高いことを示します.

Hirono Ishikawa.et al. Diabetes Care. 2008. 引用作成

その他の評価として,

社会的臨床的特徴:学歴,自己評価での経済状態,糖尿病の期間など.

糖尿病の知識があるかを糖尿病とそのケアに関する知識を7つ2択で質問紙正当数を0~7点で調査.

患者さんが情報を得るための情報源の数が何個あるかをアンケートで調査.

自己効力感:“糖尿病ケアプロファイル”のセルフケア4項目を使用.

解析方法は,クロンバックα係数により検者内信頼性を検討.また,HLスケールと他の測定項目の関係を連続変数はピアソンまたはスピアマンの相関係数で,2群間のものはウィルコクソンの順位符号検定かt検定で計算しました.

クロンバックα係数:複数の検者もしくは同一検者によって得たデータの信頼性を意味し,0~1までの値をとる.1に近いほど信頼性が高いことを示す.⇒同じ検者もしくは違う検者がやっても誤差が少なく同様の結果になるかを解析できる.

結果

検者内信頼性は,機能的HLでクロンバックα係数がα=0.84,伝達的HLでα=0.77,批判的HLでα=0.65でした.この結果から,このヘルスリテラシー問診票は検者内信頼性が適切であると判断でき,信頼できる評価スケールとしました.

HLスコアと他の評価との関係をみると,糖尿病の知識スコアは全てのHLスコアと強い正の相関を示したが,情報源の数や自己効力感は機能的HLとは関連しなかった.

また年齢についてみると,機能的HLと批判的HLは高齢者で有意に低かったが,伝達的HLは連例と関連しなかった.

臨床的な特徴として,HbA1cの低さは高い伝達的HLと関連していた.

結論

今回の研究は健康関連情報の抽出,理解,使用する能力を含むHLの広い概念を測定したが,新しく開発したHLスケールは,糖尿病患者の3種類のHLの信頼性が高く有効な測定であった.

またHLは他の測定値とも関連を示しており,患者のHLレベルを調査することで,病気の自己管理と健康増進行動に対する患者の潜在的な障壁をより理解できる可能性がある.

読んで伝えたいこと

各HLスコアはそれぞれ意味する内容が異なるので,結果をしっかりと解釈する必要がありと思います.

例えば,今回の結果でもあったように高齢で機能的HLと批判的HLが低いような人であれば,情報を得る方法や調べ方の工夫などが必要になるかもしれません.

3項目のHLスコアから患者さんもしくは対象者の特性を理解するためにはこの評価は面白いと思いました.

今回の研究対象者は糖尿病患者さんで,他の糖尿病に関する研究でもこの論文を引用した報告がは多くありますが,このスケールは慢性疾患患者さん,例えば心不全やCOPDといった患者さんにも応用可能な評価方法ではないかと思います.

また,Ishikawaらは疾患をもつ患者さんではなく,一般向けに伝達的HLと批判的HLを評価する別の質問紙表を作成しています.

Health Promot Int. 2008. Developing a measure of communicative and critical health literacy: a pilot study of Japanese office workers. Hirono Ishikawa. 引用作成

(ちなみに,機能的HLがないのは一般の人では病院や薬局からパンフレットや説明書をもらわないから,かなって思います.)

もし患者さんではなく,地域の健康増進に役立てたい方はこちらのスケールを活用して頂くと良いかもしれません.

普段はつい評価をせずに見逃してします,ヘルスリテラシーについてお話しました.

この研究の対象者は日本人ですので,質問票も違和感なく使えるかと思います.

自分の患者さんや地域にてヘルスリテラシ―を評価し,治療や健康増進に役立てて頂けたら幸いです.

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