扁平足は病院以外でも目にする機会が多い疾患です.
リハビリでは,「扁平足で痛みで困っている」という人は意外と少なく,扁平足をメインに治療する機会は多くないかもしれません.
ですが・・・
扁平足=足アーチの不良は,変形性膝関節症を誘発したり,ランニング時に足部の疼痛(足底腱膜炎を含め)を引き起こしたり,バランス能力の低下の要因になったり,
“メインターゲットではないけど,障害に関与している可能性が疑われる”ということが,しばしばあると思います.
今回は,「扁平足かな?」って思ったら,実施する評価と運動療法を紹介します.
これを読むとこんなメリットがあります.
- 扁平足を疑ったときの評価がわかる
- 扁平足に対する運動アプローチがわかる
扁平足のおススメ評価3選
- too many toe sign
- leg heel alignment
- 舟状骨落下試験Navicular Drop Test (NDT)
too many toe sign
方法:対象者にはリラックスした立位姿勢をとってもらう.足部を後方から観察する.
判定:外側の足趾が見える,左右差があれば陽性.
おススメの理由:短時間で評価ができる.わかりやすい.
扁平足は縦アーチがつぶれて中足部が外転位となるため,外側の足趾が多く見えます.
左右で顕著な差があればわかりやすいですが,扁平足が軽症であったり,両側で認める場合は注意が必要かもしれません.
leg heel alignment
方法:対象者にはリラックスした立位姿勢をとってもらう.下腿の長軸と踵骨の長軸のなす角を測定する.
下腿長軸-下腿最大膨隆部の中央とアキレス腱中央を結ぶ線
踵骨長軸-踵骨中央とアキレス腱中央を結ぶ線
判定:5°以上 後足部回内もしくは下腿外方傾斜を示す=扁平足
おススメの理由:後足部と下腿の関係が評価できる.数値で追えるので人に伝えやすく,経過も追いやすい.
内側縦アーチがつぶれる扁平足では,後足部の回内-下腿の外方傾斜を認めます.
足部と下腿とどちらの変化が先かは原因によって異なりますが,どちらか一方の変化が生じると運動連鎖によりもう一方も変化することになります.
足部と下腿の関係を視診のみで確認するのではなく,数値化して評価することも大切です.
舟状骨落下試験 Navicular Drop Test (NDT)
方法:座位(非荷重位)と安静立位(荷重位)の2つの姿勢で,床から舟状骨までの距離(mm)を測定する.
判定:座位と立位での差が15mm以上では異常と判断(Brody D, 1982).13mm以上では有意に足底筋力の減少を認めるという報告がある(A G Snook, 2001).
おススメの理由:NDTが高値は内側縦アーチの低下と足部の回内を示します.非荷重-荷重位での変化をみれるため,荷重による影響をとらえやすい.
おススメの運動アプローチ3選
- 足関節背屈のストレッチ
- 後脛骨筋の筋力強化練習
- 足趾屈曲運動
足関節背屈のストレッチ
方法:通称“アキレス腱のばし”で有名なストレッチですね.膝関節伸展位と屈曲位の両方で伸ばした方がよく,目安は30秒×3セットです.
解説:足関節の背屈制限が生じると,後脛骨筋腱や長短腓骨筋腱に伸張ストレスが増強します.また,荷重位での下腿前傾運動時(歩行など)に足部回内が増強するため,回外に作用する後脛骨筋に伸張ストレスがかかり,扁平足を誘発します.
足関節背屈のストレッチにより足関節背屈制限の改善を図ります.
ちなみに,膝屈曲位での足背屈制限では,ヒラメ筋や長母趾屈筋,長趾屈筋,短腓骨筋などの関与が疑われます.
特に長母趾屈筋は下腿後面で距腿関節の後方を通るため,距骨の後方滑り運動を阻害しやすいので注意が必要です.
後脛骨筋の筋力強化練習
方法:内果の後方でボールを挟み,踵上げ運動を行う.
解説:後脛骨筋は骨間膜後面から舟状骨に停止する筋で,内側アーチを形成する重要な筋です.
そのため,加齢などをきっかけに後脛骨筋の機能不全や収縮不全が生じると,舟状骨は下制し内側縦アーチは破綻します.
内果でボールを挟む踵上げは,後脛骨筋に特異的に負荷をかけることができ,内側縦アーチを保つために有用です.
足趾屈曲運動
方法:座位にて足趾でグーを作ります.うまく出来なくても続けると少しずつ曲がるようになります.
解説:日本整形外科学会も扁平足の治療として紹介しており,足趾の屈曲運動は足底筋の筋収縮,筋力強化を図り,アーチを安定させます.
これも有名なアプローチの一つだと思いますが,どこでも手軽に実施できる点もおススメな理由です.
まとめ
臨床で使いやすい評価と運動アプローチを3つ紹介しました.
扁平足自体はメインの治療対象にならないこともあり,問題点として見落としているケースもあるかもしれません.
評価は短時間で簡易的にできるものを紹介したので,問題点として扁平足が影響しているか判断する際に,知っておくと瞬時に想定できます..
問題点を見落とすことがないように,そして自分の評価や治療の幅を広げることに役立ててもらえると幸いです.
参考資料
- スポーツリハビリテーションの臨床.青木治人,清水邦明.
- 運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略.編集 工藤慎太郎,医学書院.
- Ettore Vulcano, et al. Approach and treatment of the adult acquired flatfoot deformity. Curr Rev Musculoskelet Med. 2013.
- Brody D, et al. Techniques in the evaluation and treatment of the injured runner. Orthop Clin North Am. 1982.
- A G Snook, et al. The relationship between excessive pronation as measured by navicular drop and isokinetic strength of the ankle musculature. Foot Ankle Int. 2001.
- Kornelia Kulig, et al. Non-operative management of posterior tibialis tendon dysfunction: design of a randomized clinical trial. BMC Musculoskelet Disord. 2006.
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