
腰椎過前弯姿勢(反り腰)って運動で治るの?

腰椎過前弯姿勢(反り腰)には、どんなストレッチや筋力トレーニングが効果的?
腰椎過前弯姿勢(反り腰)は、よく目にする異常姿勢であり、腰痛を引き起こす原因の一つです。
この記事では、腰椎過前弯姿勢(反り腰)に対するストレッチや筋力トレーニングの効果について論文などのエビデンスを解説します。
また、臨床ですぐに活用できる具体的なプログラムも紹介するため、臨床でも活用してみましょう。
この記事の結論は以下の通りです。
- 運動によって姿勢が改善するという高いエビデンスが示されている
- ストレッチは姿勢改善に有効かは明らかではない
- 腰椎過前弯姿勢は股関節屈筋群と脊柱起立筋群の緊張、腹筋群や股関節伸展筋群の抑制(筋力低下)を特徴とした筋のアンバランスを示す
- 腰椎過前弯姿勢へのメインアプローチ:股関節屈筋群や脊柱起立筋群のストレッチ、腹筋群や股関節伸展筋群の筋力トレーニング
また、腰椎過前弯姿勢に対する運動アプローチについて、4種類22トレーニングを紹介しています。
トレーニングの方法はいくつもあるため、患者さんの状態やトレーニングの受け入れやすさに応じてプログラムを選択しましょう。
- 腰椎過前弯姿勢の改善に対する運動の効果がわかる
- 腰椎過前弯姿勢への具体的な運動介入がわかる
ちなみに、腰椎過前弯姿勢の特徴や評価方法は別記事にてまとめています。
姿勢を改善する運動効果のエビデンス
ここでは、姿勢や胸椎後弯角度・腰椎前弯角度に対する運動の効果を論文から解説します。
結論は以下の通りです。
- 運動によって姿勢が改善するという高いエビデンスが示されている
- ストレッチは姿勢改善に有効か明らかではないが、筋力トレーニングは姿勢改善に大きな効果を示す
- 腰椎過前弯姿勢の改善に運動アプローチは有効
González-Gálvez らは、筋力トレーニングやストレッチ、有酸素運動によって、胸椎後弯角と腰椎後弯角が改善するか系統的レビューとメタ解析で調査しました1)。
対象はRCT10研究、介入群284名(28.4±13.8歳)、対照群255名(25.5±13.1歳)。
結果は以下の通りでした。
- 胸椎後弯角の有意な大きい改善を認めた (SMD -1.40, 95%CI -2.15~-0.66, p=0.0002,7研究)
- 腰椎前弯角の有意な改善を認めなかった (SMD -0.53, 95%CI -1.76~-0.70, p=0.40,4研究)

SMDは標準偏差として介入効果を表す
SMD 0~0.2 小さい効果、0.3~0.7 中等度の効果、0.8以上 大きい効果
筋力トレーニングやストレッチ、有酸素運動などの運動は、胸椎後弯角を改善するが、腰椎前弯角には明らかな効果がない可能性を示す結果でした。
腰椎前弯角に効果を示さなかった点に関して、González-Gálvez らは考察にて以下のような内容を述べています。
メタ解析では腰椎前弯角度に有意な改善は認めなかった。
しかし、腰椎過前弯は腸腰筋の短縮、腹部および脊柱起立筋の筋力低下、ハムストリングスの短縮と関係しているという報告があり、ストレッチと筋力強化は腰椎前弯症に関連していると結論づけている。
González-Gálvez らは、腰椎前弯角への運動効果は統計解析では認めませんでしたが、
腰椎前弯角へのアプローチとしてストレッチや筋力強化などの運動アプローチは有効と述べています。
また、この論文のおもしろい点は、姿勢改善における運動の期間や頻度について提案していることです。
姿勢の改善には、運動アプローチを8~12週間の期間、週2~3回の頻度で行う
部位やトレーニングの負荷量など検討していないため、明確な基準にはなりませんが、トレーニング期間や頻度を設定する目安として参考になると思います。
ストレッチと筋力トレーニングの介入に関して、姿勢改善の効果をそれぞれ調査した研究もあります。
Warnekeらはで、ストレッチと筋力トレーニングによる姿勢(骨盤傾斜/腰椎前弯/胸椎後弯/頭位傾斜)への及ぼす影響をメタ解析による系統的レビューで調査しました2)。
対象はRCTと非RCTの23研究、969名。
ストレッチと筋力トレーニングそれぞれの姿勢改善の効果は以下の通りです。
- ストレッチは介入直後や1週間以上の長期介入でも姿勢改善に影響しない(中等度のエビデンス)
- 1週間以上の筋力トレーニングは姿勢矯正に大きな効果を示した(中等度のエビデンス)

ESは介入や治療効果の大きさを示す
0 ≤ ES < 0.2 はわずか、0.2 ≤ ES < 0.5 は小さい、0.5 ≤ ES < 0.8 は中程度、ES ≥ 0.8 は大きい
ストレッチによる姿勢改善の効果は統計的には認めませんでした。
この結果に対して、Warnekeらは以下のように考察しています。
長期のストレッチが筋肉の硬直を軽減できたとしても、短縮した筋肉の硬直の減少と姿勢の改善との因果関係は依然として推測の域を出ず、さらなる調査が必要である。
現在、姿勢に対するストレッチのエビデンスはないが、十分なストレッチ量を用いた調査が不足していることが原因の可能性があり、さらなる研究が必要である。
筋のアンバランスや姿勢不良によって硬まった筋や短縮した筋へのストレッチは一般的ですが、ストレッチが姿勢改善に有効かの科学的根拠は乏しいようです。
2025年のストレッチに関するデルファイ合意声明では、ストレッチが姿勢に及ぼす影響について以下のように述べられています3)。
ストレッチは適切な姿勢の変化を促進しない
現在のエビデンスに基づき、姿勢の変化を促すためのストレッチは推奨しない

現段階では、ストレッチが姿勢改善に有効というエビデンスは示されていません。
今後、研究が進むことでストレッチが姿勢改善に及ぼす影響は、さらに解明されるかもしれませんね。
Warnekeらは、筋力トレーニングでは姿勢改善に明らかな効果を示した述べています。
ただし、部位別にサブ解析をすると結果は以下の通りでした。
- 頸椎胸椎では筋力トレーニングにより非常に大きな効果を認めた(ES -1.04, 95%CI -1.69~-0.40, p 0.005, 10研究)
- 腰椎骨盤では筋力トレーニングの影響を認めなかった(ES -0.23, 95%CI -1.45~0.98, p 0.25, 2研究)

サブ解析だけをみると、腰椎骨盤に効果はないように見えますが、
今回の調査では腰椎/骨盤に関する採択された研究は2研究のみとわずかでした。
そのために、腰椎骨盤に関しては有意な効果を認めなかった可能性も考えられます。
Warnekeらは、ストレッチよりも筋力トレーニングが姿勢改善に有効であると示し、以下のように結論づけています。
姿勢改善のための運動療法は、硬直した筋肉のストレッチを控えて、代わりに弱った筋の強化に重点を置くことで、大幅に効果を高めることができる。
姿勢の改善には、筋力トレーニングが重要であり、優先度も高いようですね。
さらに、姿勢と運動アプローチに関する報告では、腰椎過前弯姿勢のみを対象とした研究もあります。
Dimitrijević らは、腰椎過前弯姿勢に対するアプローチの効果をメタ解析にて調査しました。
対象は腰椎前弯角などのワードが含まれる10研究、482名(9~60歳)。
期間:2~12週間
プログラム:腰椎安定化運動、ウィリアム体操、体幹を安定させるストレッチとエクササイズ、ピラティストレーニング、姿勢矯正運動
腰椎過前弯姿勢への介入結果は以下の通りです。
- 腰椎前弯角に対して中等度の効果を認めた(SMD 0.55, 95%CI 0.36~0.75, p<0.001)
- 若年グループ(10~20歳代)でも中等度の効果(SMD 0.64, 95%CI 0.27~1.01, p<0.001)
- 高齢グループ(40~60歳代)でも中等度の効果(SMD 0.52, 95%CI 0.25~0.79, p<0.001)

腰椎過前弯姿勢の改善には運動が有効です。
また、サブ解析にて若年(10~20歳代)と高齢(40~60歳代)に分けて検討しても、若年と高齢ともに姿勢改善に運動の有効性を認めています。
腰椎過前弯姿勢を含めた異常姿勢を改善するために、運動は有効性はエビデンスがあります。
姿勢改善には筋力トレーニングなどの運動療法を積極的に取り入れましょう。
ただし、ストレッチに関しては効果が明らかになっていない点もあるため、今後の調査が期待されるようです。
腰椎過前弯姿勢(反り腰)への運動プログラムと効果
ここでは、腰椎過前弯姿勢に対してどのような運動が有効であったか論文を解説します。
具体的な運動内容もまとめているので、プログラムを作成する参考になれば幸いです。
腰椎過前弯姿勢への運動効果の結論は以下の通りです。
- 腹筋群の筋力トレーニングは腰椎過前弯の改善に有効
- 股関節伸展筋群の筋力トレーニングは腰椎過前弯の改善に有効
- 腹筋群や股関節伸展筋群の筋力トレーニングを複合したコア安定化運動は腰椎過前弯の改善に有効
Leeらは腰椎過前弯姿勢で腰痛を訴える人を対象に、スプリンター腹筋運動とクランチ腹筋運動が即時効果として腰椎前弯角や腹筋の筋活動にどのような影響を及ぼすか調査しました4)。
動作保持10秒×10回×3セット、セット間15秒休憩
- スプリンター腹筋運動:背臥位にて片方の上肢を屈曲+内転+外旋させながら、対側の下肢を屈曲+内転+外旋
- クランチ腹筋運動:背臥位で膝屈曲45°で頭と肩を上げ、肩甲骨下角をマットから浮かせた
介入した効果は以下の通りです。
- スプリンター腹筋運動群とクランチ腹筋運動群で腰椎前弯角と仙骨前傾角は有意に改善した (p <0.001)
- スプリンター腹筋運動群はクランチ腹筋運動群より外腹斜筋と内腹斜筋の活動が有意に増加した (p <0.05)

調査から即時効果として、スプリンター腹筋運動やクランチ腹筋運動は腰椎過前弯患者の姿勢を改善し、腹筋群の活動を高めることが示されています。
興味深いのは、クランチ腹筋に比べて、スプリンター腹筋の方が外・内腹斜筋の活動が高く、腰椎前弯角の改善に優れている可能性があるようです。
また、腰椎過前弯と腹筋運動に関する症例報告もあります。
Yooは、腰椎過前弯と腰痛を訴える56歳女性に対して、頸部屈曲+自動SLR運動による体幹屈筋群のトレーニング効果を報告しています5)。
2週間、1日30回×3セット、首を屈曲させながら両下肢の自動SLR運動
介入した結果は以下の通りでした。
頸部屈曲位での自動SLR運動による2週間の介入によって、骨盤前傾角の減少と体幹伸展時の腰痛減少を認めた

頸部屈曲+脚上げ運動の介入は、腰椎過前弯患者の骨盤前傾角と腰痛の改善に有効な可能性が示されています。
Yooは、介入の効果に関して以下のように考察しています。
首を曲げながら脚を上げることで腹筋が共収縮し、腹腔内圧が上昇することで、骨盤前傾が軽減され、脊柱前弯の原因となる骨盤前傾が軽減される。
腰椎過前弯患者において、腹筋群の運動は重要です。
腹筋群の筋力トレーニングは積極的に実施しましょう。
また、腰椎過前弯姿勢に対する運動療法は、腹筋トレーニング以外にも股関節伸展筋群を鍛えることも大切です。
腰椎過前弯に対する股関節伸展筋群へのアプローチの重要性について、Colonnaらは以下のように述べています6)。
- ハムストリングスや大殿筋などの股関節伸展筋群の活性化は、骨盤後傾を誘発し、腰椎前弯の軽減と関連している。
- 股関節伸展筋群の活性化は、腰椎過前弯によって短縮しやすい股関節屈筋群の活動を抑制する
腰椎過伸展を避けながら、骨盤を可能な限り高い位置まで挙上する二足ブリッジを骨盤挙上位で20~30秒間保持して戻す運動を4~5回繰り返す
- 腹部引き込み運動を行いながらブリッジ運動
- セラバンドで抵抗をかけながら股関節外転位保持をしながらブリッジ運動
腰椎過前弯において、骨盤前傾を改善するために股関節伸展筋を鍛える重要性が示されています。
また、症例報告ですが、Yooは腰椎過前弯患者を対象に、腹直筋・大殿筋・ハムストリングスのトレーニング効果を報告しています7)。
3つの筋力トレーニングを2週間実施、1日20回×3セット
- クランチ腹筋運動
- 立位でテーブルに体を預けて下肢の伸展運動
- 腹臥位でゴムバンドを使用し膝関節屈曲運動
介入の結果は以下の通りでした。
腹直筋・大殿筋・ハムストリングスへのトレーニングを2週間継続することで、骨盤前傾角の減少と腰椎可動性の拡大、体幹伸展時の腰痛減少を認めた

Yooは、腰椎過前弯を伴う腰痛患者では、骨盤を後傾させる筋をトレーニングが必要であるとしています。
腰椎過前弯と関わる骨盤前傾姿勢を改善するため、大殿筋やハムストリングスなどの股関節伸展筋のトレーニングが重要です。
骨盤後傾に関わる殿筋群やハムストリングスにも着目しましょう。
さらに、腹筋群や股関節伸展筋群などを含めた複合的なコアの安定化運動が腰椎前弯角に及ぼす影響を調査した研究もあります。
Shalamzariらは、腰椎過前弯姿勢の患者を対象に、コア安定化運動や電気刺激と運動を組み合わせた介入の効果をRCTにて調査しました8)。
6週間、週1回の頻度、静的エクササイズでは12~20秒、動的エクササイズでは20~45回、3セット数、1~2分の休憩時間
- 腹部引き込み運動
- ブリッジ
- 腹筋運動
- 片手片足プランク
- 腹筋を収縮させるキャット&カウストレッチ
- 背臥位で下肢の上げ下ろし
- リバースクランチ
- クリスクロスクランチ
- 片脚グルートブリッジ
- バランスボールを使った片脚ブリッジ
- バランスボールを使ったクランチ
- バランスボールに下腿を乗せて膝を捻る運動
コア安定化運動による介入の結果は以下の通りです。
コア安定化運動を6週間介入することで、腰椎前弯角は有意に改善した

Shalamzariらは、コア安定化運動の効果について以下のように考察しています。
腰椎過前弯変形は筋肉のアンバランスや応力-歪み関係の乱れを伴うため、コア安定化運動は弱った筋肉の強化、神経筋協調の改善、応力-歪み関係の修正を通じて前弯曲角度の改善に役立つ可能性がある。
コア安定化運動によって腰椎前弯角の改善効果が期待できることが報告されています。
論文を個別にみると腹筋群や股関節伸展筋群を中心とした運動が、腰椎過前弯の改善に有効なようです。
運動アプローチとして積極的に取り入れましょう。
腹筋群や股関節伸展筋群のトレーニングが重要な理由については下の項でも解説します。
腰椎過前弯姿勢(反り腰)の筋特徴と原因から考える運動アプローチ
ここでは、腰椎過前弯姿勢(反り腰)の筋の特徴と原因から考えられる運動アプローチを解説します。
結論は以下の通りです。
- 腰椎過前弯姿勢の原因には、下位交差症候群という股関節屈筋群と脊柱起立筋群の緊張、腹筋群や股関節伸展筋群の抑制を特徴とした筋のアンバランスがある
- 腰椎過前弯姿勢は股関節屈筋群や脊柱起立筋の過緊張・腹筋群や殿筋群の低緊張といった特徴を示す
- 腰椎過前弯姿勢では、股関節屈筋群と脊柱起立筋群のストレッチ、腹筋群や股関節伸展筋群のトレーニングが重要
腰椎過前弯姿勢(反り腰)の原因の一つに、下位交差症候群という筋のアンバランスがあります。
下位交差症候群は、筋のアンバランスにより姿勢異常や股関節・腰部に大きな負担をかけるため、臨床的には重要な問題です。
下位交差症候群の概要は以下があります。
- 下位交差症候群とは、骨盤周囲(下肢帯,股関節~骨盤)に生じる筋のアンバランスのこと
- 股関節屈筋群と脊柱起立筋群の緊張(緊張・短縮)と腹筋群や殿筋群の抑制(抑制・筋力低下)が特徴
- 下位交差症候群は骨盤の前傾や股関節の屈曲が増大し、代償として腰椎の過前弯が生じる

下位交差症候群は、股関節屈筋群や脊柱起立筋が緊張と短縮しやすく、殿筋群と腹筋群が抑制と筋力低下しやすい特徴があり、腰椎過前弯の原因となります。
また、腰椎過前弯姿勢はアライメントや筋の特徴として、Duらは以下のように述べています9)。
アライメント:腰椎の前弯増加・骨盤前傾
伸張位の低緊張筋:腹筋群(腹直筋・内腹斜筋・外腹斜筋)、腹横筋、頸部伸筋、上部脊柱起立筋、多裂筋
短縮位の過緊張筋:脊柱起立筋、僧帽筋、股関節屈筋(腸腰筋・大腿直筋・縫工筋など)、頸部伸筋、ハムストリングス

股関節屈筋群や脊柱起立筋の過緊張、腹筋群や殿筋群の低緊張は、
下位交差症候群の原因として共通しているだけでなく、腰椎過前弯姿勢の特徴的な筋の状態です。
ただし、患者さん個人によって、筋の状態は大きく異なります。
筋肉ごとに緊張や伸張性、筋力などは評価をしましょう。
腰椎過前弯姿勢の評価や下位交差症候群については、別記事でも解説しています。
腰椎過前弯姿勢の原因や筋の特徴から、アプローチを考えると以下のプログラムが挙げられます。
- 股関節屈筋群のストレッチ
- 脊柱起立筋群のストレッチ
- 腹筋群の筋力トレーニング
- 股関節伸展筋群の筋力トレーニング
ストレッチによって緊張している筋を伸ばして、筋力トレーニングによって抑制・低緊張の筋を強化することがスタンダードなアプローチになります。
アライメントや筋の状態に合わせてアプローチを選択しましょう。
ただし、上述した論文を読むと、姿勢改善へのアプローチはストレッチよりも筋力トレーニングの方が優先度は高そうですね。
それぞれの詳細なトレーニングの方法については以下の項でまとめます。
腰椎過前弯姿勢のストレッチ・筋力トレーニングプログラム
ここでは、股関節屈筋群や脊柱起立筋群のストレッチ、腹筋群や股関節伸展筋群の筋力トレーニングの具体的なプログラムを紹介します。
患者さんに合わせて選択できるように、たくさんのトレーニング方法を知っておきましょう。
股関節屈筋群のストレッチ
ここでは、股関節屈筋群のストレッチを紹介します。
メインターゲットは腸腰筋、大腿直筋です。
注意点としては、骨盤の前傾や腰椎の前弯が増強しないように気をつけましょう。
腸腰筋ストレッチ:片膝を着き、反対側の足を前に出す。ランジ姿勢で軽く前傾する。
腸腰筋+大腿直筋ストレッチ:片膝を着き、反対側の足を前に出す。ランジ+膝屈曲姿勢で軽く前傾する。

片側の下肢を前に出し、前方の膝は曲げて、後方の膝はしっかりと伸ばして、体幹を前方へ曲げる。

横向きに寝て、手で足首(足背)を持ち、踵がお尻に当たるように膝を曲げる。
*腰は反らないように注意

背臥位にて片膝を抱えるように腹部へ引っ張りながら、反対側の膝を床に押し付ける。

脊柱起立筋群のストレッチ
ここでは、脊柱起立筋群のストレッチを紹介します。
腰椎を後弯、骨盤を後傾することが大切なポイントです。
片脚ずつ、手で膝を抱える両膝を胸に引き寄せて5~10秒間保持する。
戻るときは片脚ずつ、ゆっくりと下ろす。

両足を合わせ、膝伸展位で両膝を胸に引き寄せて姿勢を保持する。
腰またはお尻を両手で支える。

1:四つ這いの姿勢で、胸を張りながら腰を反らす。
2:四つ這いの姿勢で、へそを見ながら腰を丸める。
3:1と2をゆっくり繰り返す

腹筋群の筋力トレーニング
ここでは、腹筋群の筋力トレーニングを紹介します。
研究で用いられたトレーニング方法も含めているため参考になれば幸いです。
腹直筋、内腹斜筋、外腹斜筋がターゲットです。
背臥位で膝を曲げて、骨盤を傾けるように腰を床に押し付ける。
5~10秒間保持が目安

背臥位から体を起こして、下肢・体幹屈曲姿勢を保持する。
数秒保持を目安に、もとの姿勢に戻る。
ゆっくり繰り返す。

スプリンター腹筋運動:背臥位で膝屈曲45°、腕は体の横に置いた姿勢で開始する。頭を上げ、片側の上を屈曲+内転+外旋位、対側の下肢を屈曲+内転+外旋位で保持する。
クランチ腹筋運動:背臥位で膝屈曲45°、両手を頭の後ろで組む。肩甲骨の下角をマットから浮かせて保持する。

背臥位にて両膝関節伸展位を保持して、下肢を真上に上げて下ろす。

背臥位で、手を頭の後ろに組んだ姿勢で開始する。
片側の膝関節と対側の肘関節を近づけるように腹筋運動を繰り返す。

骨盤を傾けるように腰を床に押し付けて開始する。
両足を合わせて、膝が胸に着くように下肢を屈曲する。

キャット(猫のポーズ)で息を吐きながら、背中を丸めながら、顎を引いてお腹を見る。
カウ(牛のポーズ)で息を吸いながら、背中を反らせて、頭を上げる。
キャットとカウを交互に繰り返す。

股関節伸展筋群の筋力トレーニング
ここでは、股関節伸展筋群の筋力トレーニングを紹介します。
殿筋群やハムストリングスなどの骨盤を後傾させる筋がターゲットです。
脊柱は中間位を超えない範囲で、骨盤を可能な限り高く挙上する二足ブリッジを推奨する。
骨盤挙上位で20~30秒間保持して戻す運動を4~5回繰り返す。
ハムストリングスのトレーニングは、開始時膝関節60~90°屈曲位が推奨。

腰椎の伸展を制限するために、腹筋を収縮(腹部引き込み運動)させながらブリッジ運動を推奨する。
骨盤挙上位で20~30秒間保持して戻す運動を4~5回繰り返す。

膝にセラバンドを巻き、股関節を外転位に保持してブリッジ運動する。
骨盤挙上位で20~30秒間保持して戻す運動を4~5回繰り返す。

腰椎過前弯姿勢は股関節の内転筋群が過活動となりやすい状態です。
そのため、外転筋群を活性化することで腰椎過前弯姿勢を改善する可能性があるようです。
四つ這い姿勢で開始する。
片側の上肢を伸展挙上、対側の下肢を伸展挙上して保持する。
*腰部が反らないように注意

片脚を膝伸展位で挙上したまま、ブリッジ運動をする。

腹臥位でお腹でタオルを押すように腹部を引き込みながら、股関節を伸展運動をする。

腹部引き込み運動+股関節伸展運動については、腰椎過前弯患者を対象に運動の効果が調査されています。
Kimらは、腹臥位股関節伸展時に腹部引き込み動作(ADIM)の有無で筋活動が異なるか腰椎過前弯患者と正常者で比較しました10)。
結果は以下の通りです。
腰椎過前弯患者において、腹部引き込み運動+股関節伸展運動は、股関節伸展運動を単独で行うよりも大殿筋の活動は有意に増加し、脊柱起立筋の活動は有意に減少した

腰椎過前弯患者において、腹部引き込み運動をした状態で股関節伸展運動をすることは大殿筋の活動を高める可能性を示しています。
腰椎過前弯患者においては股関節伸展運動を単独で行うよりも、腹部引き込み運動を組み合わせることで、大殿筋を鍛えることが有意に鍛えることができるかもしれません。
個人的には腹部引き込みの感覚が難しいため、練習は必要になるかなと思いました。
まとめ
ここまで、腰椎過前弯姿勢に対する運動効果のエビデンスを解説し、4種22トレーニングを紹介しました。
- 運動介入によって姿勢が改善するという高いエビデンスが示されている
- ストレッチは姿勢改善に有効性を示すエビデンスがない
- 筋力トレーニングや脊柱安定化運動などは姿勢改善に大きな効果を示す
- 腰椎過前弯姿勢の改善に運動アプローチは有効
- 腰椎過前弯姿勢の原因には、下位交差症候群という股関節屈筋群と脊柱起立筋群の緊張、腹筋群や股関節伸展筋群の抑制を特徴とした筋のアンバランスがある
- 腰椎過前弯姿勢は、股関節屈筋群や脊柱起立筋の過緊張、腹筋群や殿筋群の低緊張が特徴
- 腰椎過前弯姿勢では、股関節屈筋群と脊柱起立筋群のストレッチ、腹筋群や股関節伸展筋群のトレーニングが重要
- 運動は患者さんの状態や実施しやすさからプログラムを選択する
参考資料
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