【股関節の前部痛】股関節内転筋群が関わる4つ機序とアプローチ(内転筋群の筋緊張亢進・外転筋力低下・後方筋群の伸張性低下・骨盤後傾)

評価
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みなさんは患者さんから痛みの訴えを聞いた時、

疼痛の誘発している原因をいくつ想定できますか?

疼痛を誘発する原因を知っておくことで、

評価の精度が高くなり、アプローチのポイントを絞りやすくなります。

今回は、股関節前部の疼痛について、

臨床で多い、内転筋群をピックアップしてまとめました。

他にも、腸腰筋や機能障害をピックアップした股関節前部痛をまとめているので、ご興味があればどうぞ。

この記事の結論は、

内転筋群関連の疼痛は、

  • 股関節内転筋群の筋緊張亢進
  • 股関節外転筋力低下
  • 股関節後方筋群の伸張性低下
  • 骨盤後傾

が原因です。

この記事を読むメリット
  • 股関節前部痛の誘発原因がわかる
  • 股関節前部痛の評価治療がわかる

股関節内転筋群の筋緊張亢進

変形性股関節症や大腿骨骨折の術後では、

安静時でも股関節内転筋群の筋緊張は亢進しやすくなります。

また、股関節外転筋力が弱いと、

骨盤を安定させるための代償として内転筋群が過剰に働きます。

つまり、股関節外転筋力低下は内転筋群の筋緊張亢進を引き起こします

股関節内転筋群の筋緊張亢進は、

内転筋群の伸張性低下や筋スパズムの原因となり、伸張痛やスパズム性疼痛を引き起こします。

また、股関節内転筋群の筋緊張亢進や伸張性低下は、

閉鎖神経障害を引き起こす可能性があります。

解剖学として、閉鎖神経は腰神経叢から分岐し、前枝と後枝にわかれます。

閉鎖神経の前枝は長内転筋や恥骨筋を通過しているため、

筋緊張の亢進や伸張性が低下していると筋に圧迫され絞扼性神経障害を引き起こす可能性があります。

閉鎖神経の前枝は、大腿内側領域を支配しているため、

鼠径部内側の知覚障害や放散痛が主症状となります。

股関節内転筋群の筋緊張亢進の評価方法として、

  • 内転筋群の触診
  • 内転筋群の圧痛
  • 股関節内転方向への自動運動時のスパズム様の疼痛
  • 股関節外転運動時の伸張痛

などがあります。

他にも、股関節内転筋群のリラクゼーションで疼痛が改善する場合は、

股関節内転筋群の筋緊張亢進が疼痛に関わっていると判定できます。

股関節内転筋群の筋緊張亢進へのアプローチ
  • 股関節内転筋群のリラクゼーション:背臥位にて自動もしくは他動運動で軽く揺らす
  • 股関節内転筋群のストレッチ:背臥位、対側股関節屈曲位保持にて股関節外転ストレッチ
  • 大殿筋の筋力強化:ベッドから足を下ろした股関節中間位でのブリッジ運動
  • 小殿筋の筋力強化:側臥位にて両股膝関節屈曲位で股関節内旋の自動運動

股関節外転筋力の低下

内転筋群に関連する疼痛の原因の一つとして、

股関節外転筋力の低下があります。

変形性股関節症や骨折後だけでなく、スポーツ領域でも疼痛の原因となりやすいです。

例えば、

サッカーでは、大殿筋や股関節外転筋の筋力低下により、軸足での骨盤安定性が低下するため、

恥骨や坐骨のストレスが増大し、疼痛が誘発されることが報告されています。

また、”内転筋群の筋緊張亢進”でも言いましたが、

股関節外転筋力の低下により骨盤の安定性が低下すると、

股関節内転筋群が過剰に働くため、筋緊張が亢進します。

代償動作の原因となるため、股関節外転筋力が低下していないか評価することは重要ですね。

股関節外転筋力の評価方法として、

  • 股関節外転のMMT
  • ハンドヘルドダイナモメーターなど測定機器の利用
  • 片足立位など動作時の骨盤傾斜

などがあります。

数値による測定だけでなく、

歩行や片足立位保持など動作時の評価も大切です。

股関節外転筋力の低下へのアプローチ
  • 大殿筋の筋力強化:ベッドから足を下ろした股関節中間位でのブリッジ運動
  • 小殿筋の筋力強化:側臥位にて両股膝関節屈曲位で股関節内旋の自動運動
  • 中殿筋の筋力強化:MMTに沿った肢位、股関節外転を自動もしくは自動介助運動(中殿筋を後方誘導)
  • 中殿筋後部線維の筋力強化:両側股関節屈曲40~50°+膝関節屈曲90°位で股関節外旋を自動運動

股関節後方筋群の伸張性低下

股関節の後方筋群、特に小殿筋や深層外旋六筋の伸張性は重要です。

股関節後方筋群の伸張性低下

⇒股関節屈曲運動時に大腿骨頭の後方滑り運動が阻害

⇒前方に押し出され、股関節の前方組織とインピンジメント

鼠径部や股関節内転筋群に疼痛

股関節後方筋群の伸張性低下は股関節前部の疼痛を誘発します。

また、股関節後方筋群の伸張性と可動域の報告はいくつかあります。

小殿筋、双子筋、内外閉鎖筋の癒着は股関節の屈曲、内旋、外旋可動域を制限する。

福元哲也,他.股関節可動域制限と短外旋筋の癒着の関係.整形外科と災害外科.2019.

股関節屈曲角度が股関節内旋に伴い増加するなら、外旋六筋の短縮が屈曲を制限している可能性がある。

佐藤香緒里,他.健常人における股関節外旋筋群が股関節屈曲に及ぼす影響.理学療法学.2008.

股関節後方筋群の伸張性は股関節運動に重要です。

股関節後方筋群の伸張性の評価方法は、

  • 股関節屈曲、内旋、外旋の単独ROM
  • 股関節屈曲+内転or外転+内旋or外旋の複合ROM

などがあります。

特に、複合運動での可動域やend feelを丁寧にチェックしましょう。

股関節後方筋群の伸張性低下へのアプローチ

骨盤後傾

骨盤後傾姿勢は、高齢者では多い姿勢ですが、

股関節内転筋群、腸腰筋、大腿直筋、大腿神経が伸ばされるため、

伸張痛が誘発されます。

骨盤後傾は立位や歩行時は、常に伸張ストレスがかかっている状態となるため、

姿勢改善は重要です。

骨盤が後傾する要因としては、

  • 内腹斜筋の筋力低下
  • 大殿筋の筋力低下
  • 多裂筋など固有背筋群の筋力低下

があります。

内腹斜筋による腹圧の維持、大殿筋や多裂筋による骨盤正中位保持能力が重要となります。

骨盤後傾姿勢の評価方法は、

立位姿勢でのASISとPSISの位置が2横指以下=骨盤後傾姿勢

です。

短時間で評価可能なので、チェックしてみましょう。

骨盤後傾へのアプローチ
  • 大殿筋の筋力強化:ベッドから足を下ろした股関節中間位でのブリッジ運動
  • 内腹斜筋の筋力強化①:両股膝関節屈曲、背臥位にて腰部でベッドを押すDrow in
  • 内腹斜筋の筋力強化②:両股膝関節屈曲、背臥位にて腹部に重錘を乗せ、深呼吸をしながら腹圧を高める
  • 固有背筋群の筋力強化①:腹臥位にて両肘で体幹支持して体幹の自動伸展運動
  • 固有背筋群の筋力強化②:端坐位位にて両手で重錘を把持、両肩屈曲運動に合わせて体幹の自動伸展運動

まとめ

股関節前面の疼痛に関して、股関節内転筋群に着目してまとめた。

内転筋群関連の疼痛は、

  • 股関節内転筋群の筋緊張亢進
  • 股関節外転筋力低下
  • 股関節後方筋群の伸張性低下
  • 骨盤後傾

の4つが原因です。

詳細な評価と適切な運動療法により疼痛を改善できる可能性が高くなります。

ここまで読んできただき、ありがとうございます。

何かのお役に立てますと幸いです。

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