変形性膝関節症への股関節外転運動の効果を解説:疼痛軽減や機能向上には有効だが膝関節内反モーメントへのエビデンスがない

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変形性膝関節症は股関節の筋力に影響するの?

変形性膝関節症で股関節外転筋力を鍛えると、どんな効果があるの?

変形性膝関節症の運動療法では、股関節外転運動も重要です。

この記事では、変形性膝関節症に対する股関節外転運動の効果について解説します。

この記事の結論は以下の通りです。

  • 変形性膝関節症は股関節の外転筋力が低い
  • 股関節外転筋力の低下は変形性膝関節症の悪化に関わる可能性がある
  • 股関節外転筋力運動は変形性膝関節症の疼痛軽減と機能向上に有効
  • 股関節外転筋力運動が膝関節の負担軽減や関節症の予防に有効かはエビデンス不明
この記事を読むメリット
  • 変形性膝関節症における股関節外転筋力の重要性がわかる
  • 変形性膝関節症に対する股関節外転筋力トレーニングの効果がわかる

変形性膝関節症では股関節外転筋力が低い

ここでは、変形性膝関節症と股関節筋力の関係を解説します。

結論は以下の通りです。

  • 変形性膝関節症は股関節外転筋力が低いというエビデンスがある
  • 変形性膝関節症では外転以外の股関節筋力も低下している可能性がある

Deasyらは2016年に、変形性膝関節症と健常者の股関節筋力の関係をメタ解析による系統的レビューで報告しました1)。

その結果、

  • 変形性膝関節症は健常者よりも股関節外転筋力が有意に低い(SMD -0.60, 95%CI -1.04~-0.17)
  • 変形性膝関節症と健常者では股関節内転筋力に有意な差はない(SMD -0.26, 95%CI -1.33~0.81)

* SMDは標準偏差として介入効果を表す SMD< 0.4:小さい効果,0.4~0.7:中等度の効果,SMD> 0.7:大きい効果

でした。

Deasyらは、変形性膝関節症で股関節外転筋力が低いことは中等度のエビデンスがあるとしており、

3研究の結果では、股関節の等尺性外転筋力は健常者より7~24%も低かったようです。

ただし、股関節内転筋力は有意な差を認めませんでした。

変形性膝関節症の股関節筋力を調査した他の研究も紹介します。

Hinmanらは内側型変形性膝関節症と健常者の等尺性股関節筋力体重比(Nm/kg)を比較しました2)。

その結果は以下の通りでした。

年齢や性別を調整しても、健常者よりも変形性膝関節症はすべての股関節筋力が16~27%も有意に低かった。

Hinmanらの報告では、股関節外転だけでなく、他の股関節筋力も低いと述べています。

また2022年にHislopらは、変形性膝関節症の罹患側に対して、非罹患側や健常者の下肢筋力を比較しています3)。

その結果は以下の通りでした。

  • 罹患側は非罹患側より膝関節伸展筋力が15.7%も有意に低かった(95%CI 9.9~21.5,p<0.001)
  • 罹患側は非罹患側より股関節内転筋力が9.3%も有意に低かった(95%CI 2.7~16.0,p<0.01)
  • 健常者と比較して、罹患側と非罹患側はともに膝関節伸展、股関節屈曲、伸展、外転、内転の有意に低かった

片側変形性膝関節症において、罹患側は非罹患側よりも膝関節伸展筋力と股関節内転筋力が有意に低くかった。

そして、健常者と比べると、膝関節伸展筋力、股関節屈曲、伸展、外転、内転の筋力が低いと報告しています。

変形性膝関節症において股関節外転筋力の低下は、メタ解析による系統的レビューからエビデンスが報告されています。

また、股関節外転以外の股関節筋力の低下も生じている可能性が十分考えられます。

変形性膝関節症患者では股関節筋力の評価も重要ですね。

股関節外転筋力は変形性膝関節症に影響する可能性がある

ここでは、股関節外転筋力が変形性膝関節症に影響するのか解説します。

結論は以下の通りです。

  • 股関節外転筋力が高いと変形性膝関節症の予防に有効な可能性がある
  • ただし股関節外転筋力と変形性膝関節症が関係するというエビデンスは不十分

2005年にChangらは、歩行時の股関節外転モーメントと脛骨大腿関節内側部での関節症の進行と関係するか調査しました4)。

その結果は以下の通りです。

歩行中の股関節外転モーメントと脛骨大腿関節内側部の変形性関節症と有意に関連した(OR 0.43, 95%CI 0.22~0.81)

つまり、歩行中の股関節外転モーメントが大きいほど、脛骨大腿関節内側部の関節症が進行していませんでした。

Changらは、歩行中の股関節外転モーメントを高めることが、変形性膝関節症の予防に有効な可能性があると述べています。

ちなみに、股関節外転モーメントと変形性膝関節症が関係するメカニズムは以下の通りです。

股関節外転モーメントと変形性膝関節症が関係するメカニズム
  1. 立脚側の股関節外転筋力低下により,遊脚側に骨盤が下制+側方へ偏位
  2. 重心が遊脚側へ移動するため,立脚側の膝関節内側軟骨にかかる負荷が増加

理論的には、股関節外転筋力は変形性膝関節症と関わるとされています。

また、Changらは2019年にも股関節外転筋力と膝関節軟骨の損傷との関係を調査しました5)。

この調査ではベースラインの股関節外転筋力と2年後の脛骨大腿関節および膝蓋大腿関節の軟骨損傷スコアを評価しています。

その結果は以下の通りです。

ベースラインの股関節外転筋力(0.1Nm/kg)は2年後の

  • 膝蓋大腿関節の内側部の軟骨損傷と有意に関係した(RR 0.80, 95%CI 0.67~0.95)
  • 脛骨大腿関節の外側部の軟骨損傷と有意に関係した(RR 0.83, 95%CI 0.71~0.98)

股関節外転筋力が0.1Nm/kg増加すると、

膝蓋大腿関節内側の軟骨損傷リスクが20%減少し、脛骨大腿関節外側の軟骨損傷リスクが17%減少しました。

変形性膝関節症では、ベースラインでの股関節外転筋力が2年後の膝関節構造の悪化リスクと関係しているようです。

Changらは、以下のように考察しています。

股関節外転筋力が高まると、膝蓋大腿関節の機械的ストレス軽減や内外側脛骨大腿関節の負荷分散が正常化され、脛骨大腿関節の負担を軽減する可能性がある。

さらに、股関節の筋力の効果は、まだ確認できていないメカニズムが関わっている可能性も考えられる。

Chang A, et al. Hip Muscle Strength and Protection Against Structural Worsening and Poor Function and Disability Outcomes in Knee Osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage. 2019.

股関節の外転筋力を高めることは、膝関節の構造に有益であると述べています。

ただし、この研究では脛骨大腿関節内側部の軟骨損傷と股関節外転筋力は有意な関係を認めませんでした

臨床で頻繁にみられる内側型変形性膝関節症に対して、股関節外転筋力が関係しているかは疑問です。

Changらは股関節外転筋力と膝関節の構造が関係していると報告しましたが、

Deasyらは2016年に股関節筋力が変形性膝関節症の危険因子であるか系統的レビューで報告しています6)。

この論文では以下のように結論づけています。

変形性膝関節症の危険因子として股関節筋力を調査した前向き研究はなく、股関節筋力の低下が変形性膝関節症の危険因子であるかは不明。

Margaret Deasy, et al. Hip Strength Deficits in People With Symptomatic Knee Osteoarthritis: A Systematic Review With Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2016.

Deasyらも、理論的には股関節外転筋力の低下が変形性膝関節症を引き起こす可能性は述べていますが、臨床的なエビデンスは不十分としています。

股関節外転筋力と膝関節の構造については、股関節外転筋力が強いことで変形性膝関節症の進行予防に有益な可能性が報告されています。

理論的にも、股関節外転筋力が高まると立脚側の脛骨大腿関節内側部の負担が軽減する可能性はありますが、エビデンスは不十分である点も抑えておきましょう。

変形性膝関節症における股関節外転筋力運動の効果

ここでは、変形性膝関節症に対する股関節外転筋力トレーニングの効果について解説します。

結論は以下の通りです。

  • 股関節外転筋力トレーニングは変形性膝関節症の疼痛軽減や機能改善に有効なエビデンスがある
  • 大腿四頭筋トレーニング単独よりも股関節筋力トレーニングを追加した方が有意に改善する

Thomasらは、変形性膝関節症に対する股関節外転筋力トレーニングの効果を検証した系統的レビューとメタ解析を報告しています7)。

2022年の調査で、7研究のRCTが対象です。

その結果は以下の通りでした。

  • 股関節外転筋力トレーニングは疼痛軽減に中等度の効果を示す(SMD -0.60, 95%CI -0.88~-0.33, p<0.001)
  • 股関節外転筋力トレーニングは機能向上に大きい効果を示す(SMD-0.75, 95%CI -1.05~-0.45, p<0.001)

変形膝関節症に対する股関節外転筋力トレーニングは、疼痛改善や機能向上に対して高いエビデンスがあることが示されています。

変形性膝関節症の運動療法において、股関節外転筋を鍛えることは重要なプログラムですね。

また、Hislopらは変形性膝関節症に対して、大腿四頭筋トレーニングに股関節運動を追加した運動効果を調査した系統的レビューとメタ解析を報告しています8)。

この調査の対象群は大腿四頭筋トレーニングを実施しており、大腿四頭筋トレーニングに股関節運動を追加した効果を明らかにしています。

収集した研究の股関節運動は3種類で以下の内容でした。

  1. レジスタンストレーニング
  2. 機能的トレーニング(ステップ運動など)
  3. マルチモーダルトレーニング(レジスタンストレーニング+機能的トレーニング)

股関節運動を追加した、疼痛軽減の効果は以下の通りでした。

  • 大腿四頭筋トレーニングに股関節運動を追加しても疼痛軽減の効果に差はなかった(SMD -0.09, 95%CI -0.96~0.79)
  • 大腿四頭筋運動に高強度レジスタンス運動を追加した単一研究では,疼痛軽減の効果を認めた(SMD -1.18, 95%CI -1.97~-0.4)
  • 大腿四頭筋運動に低強度レジスタンス運動を追加した単一研究では,疼痛軽減の効果を認めた(SMD -1.26, 95%CI -2.05~-0.47)

大腿四頭筋トレーニングに股関節運動を追加しても、疼痛軽減の効果は変わらない可能性が示されました。

ただし、単一の研究ですが高強度と低強度のレジスタンストレーニングを実施した研究において、股関節運動の追加は疼痛軽減の効果を認めています

疼痛軽減に対してレジスタンストレーニングは重要です。

この調査で興味深い点は、レジスタンストレーニングの強度は高強度でも低強度でも効果に大きな差はありませんでした。

もしかしたら、低強度でもレジスタンストレーニングを追加することで疼痛軽減の効果を認めるかもしれません。

またHislopらの調査における、機能面に関する結果は以下の通りでした。

  • 大腿四頭筋トレーニングに股関節運動を追加しても、機能面に差はなかった(SMD -0.74, 95%CI -1.56~0.08)
  • 内側変形性膝関節症を対象とした4研究では,機能改善の効果を認めた(SMD -1.06, 95%CI -1.91~-0.21)
  • 歩行に関して、股関節運動の追加によって歩行能力の改善効果を認めた(SMD -1.06, 95%CI -2.01~-0.12)
  • 階段昇降に関して、股関節運動の追加によって階段昇降能力の改善を認めなかった(SMD -0.79. 95%CI -1.67~0.26)

大腿四頭筋トレーニングに股関節運動をしても、機能評価すべてを含めたアウトカムに差を示しませんでした。

しかし、内側型変形性膝関節症のみを対象とした調査では機能改善の効果を認めており、股関節運動を追加した効果が示されています。

特に、歩行能力は股関節運動の追加で、有意に歩行能力が改善しました。

Hislopらの調査結果から、条件によって異なるが大腿四頭筋のトレーニング単独よりも、股関節運動を追加する方が効果は高いようです。

また、股関節外転運動の追加は回復が早まるという報告もあります。

Yuenyongviwatらは、変形性膝関節症に対する股関節外転筋力を追加した効果をRCTにて調査しました9)。

その結果は以下の内容でした。

  • 大腿四頭筋トレーニングに股関節外転運動を追加することで、大腿四頭筋トレーニング単独よりも2~4週間も早く疼痛やADL、QOLが改善した
  • 10週間のトレーニング後は大腿四頭筋トレーニング単独群と股関節外転運動の追加群は、両方とも同レベルであった

股関節外転運動を追加することで、介入後2~4週では改善が早まる可能性が示されました。

Yuenyongviwatらは、結果から以下のように述べています。

大腿四頭筋運動を追加すると、大腿四頭筋運動単独よりも痛み、症状、日常生活の活動、生活の質の改善が早くなる。

ただし2~4週間の期間のみで、その後は差がなかった。

したがって、治療プロトコルに股関節外転筋運動を追加するかどうかは、患者と医師の視点に基づいて検討する必要がある。

Varah Yuenyongviwat , et al. Effect of hip abductor strengthening exercises in knee osteoarthritis: a randomized controlled trial. BMC Musculoskelet Disord. 2020.

股関節外転運動が全員に必要なトレーニングか、検討の余地があるようです。

当たり前ですが股関節運動の選択は、患者の評価をもとに検討しましょう。

変形性膝関節症に対する股関節運動の効果に関しては、いくつもの論文から疼痛軽減や機能改善に有効なアプローチとしてエビデンスが報告されています。

また、大腿四頭筋トレーニングに股関節運動を追加すると、大腿四頭筋トレーニング単独よりも有効です。

変形性膝関節症の運動療法には、股関節筋のレジスタンストレーニングを積極的に取り入れましょう。

股関節運動は膝関節内反モーメントに影響しない

膝関節内反モーメントは変形性膝関節症の危険因子として重要です。

ここでは、変形性膝関節症に対する股関節運動により、膝関節内反モーメントが変化するのか解説します。

結論は以下の通りです。

  • 膝関節内反モーメントは変形性膝関節症の危険因子
  • 変形性膝関節症に股関節外転トレーニングを実施しても膝関節内反モーメントは改善しない
  • 股関節運動は変形性膝関節症の進行予防に有効かはエビデンスが不十分

膝関節内反モーメントについて、簡単に紹介します。

膝関節内反モーメント(KAM: Knee Adduction Moment)
  • 膝関節内反モーメントとは、膝関節を内反させる力
  • 変形性膝関節症の危険因子

AndriacchiらはJBJSのビッグジャーナルにおいて、膝関節内反モーメントと変形性膝関節症の関係について、以下のように述べています10)。

健康な軟骨の場合、内反モーメントの大きさに応じて内側軟骨の相対的な厚さが増加する。

健康な軟骨とは対照的に、変形性膝関節症患者では内側の荷重がかかる領域の厚さが相対的に減少しており、内反モーメントが大きくなる

変形性膝関節症患者における高い内反モーメントと軟骨の薄さの関係は、疾患の重症度や内側型変形性膝関節症の進行と一致している。

Thomas P Andriacchi, et al. Gait mechanics influence healthy cartilage morphology and osteoarthritis of the knee. J Bone Joint Surg Am. 2009.

膝関節内反モーメントは変形性膝関節症に関わる重要な要因です。

変形性膝関節症の膝関節内反モーメントが運動療法によって改善するか、いくつかの報告があります。

Ferreiraらは、RCT3研究233名を対象とした系統的レビューによって、以下のように報告しています11)。

膝関節内反モーメントは運動療法群と対照群で有意差はなかった

運動療法によって膝関節内反モーメントは改善しないことが示唆されました。

股関節運動が膝関節内反モーメントに有効かを調査した単独のRCTにおいて、

Bennellらは股関節外転と内転の筋力強化が内側型変形性膝関節症の症状改善に有効か調査しました12)。

その結果は以下の通りでした。

  • 対照群と比べて股関節強化群は疼痛,身体機能,膝や股関節筋力は有意に改善した(p<0.05)
  • 膝関節内反モーメントの変化は対照群と股関節強化群で有意差なし(平均差0.13, 95%CI-0.07~0.34, p0.19 Nm/BW×HT%)

股関節の筋力強化は疼痛や機能の改善に有効だが、膝関節内反モーメトは有意差がありませんでした。

変形膝関節症の膝関節内反モーメントは、股関節運動を含めて運動療法によって改善するというエビデンスはないようです。

ただし、内反モーメントの測定では評価できない観点で関節負荷に影響を及ぼす可能性もあるため、運動療法が関節負荷に与える影響については今後の調査に期待したいですね。

変形性膝関節症への具体的な股関節運動

変形性膝関節症に対する股関節運動の効果を調査した研究から、具体的な股関節運動を紹介します。

Bennellらの調査では、股関節運動を以下のように設定しています12、13)。

足関節に重錘もしくはゴムチューブを装着した股関節外転と内転の筋力トレーニング

頻度:週5日 期間:12週間

種目:側臥位にて股関節外転運動 10RM 10回×3セット

 側臥位にて股関節外転の等尺性収縮 5秒保持 10回×3セット

 遊脚側の股関節膝関節90°屈曲位での片脚立位保持 5秒保持 10回×3セット

 側臥位にて股関節内転運動 10RM 10回×3セット

 端坐位にて丸めたタオルを挟む股関節内転の等尺性収縮 5秒保持 10回×3セット

また、YuenyongviwatらやXieらの調査では、股関節運動を以下のように設定しました9、14)。

足関節に重錘もしくはゴムチューブを装着して10RMの50~90%まで負荷を上げた股関節外転の筋力トレーニング

頻度:週3日 期間:10週間

種目:側臥位にて股関節45°外転位保持の等尺性収縮 10秒保持 10回×2セット

股関節外転の筋力トレーニング

頻度:1日2回 期間:6週間

種目:側臥位にて股関節30°外転位保持の等尺性収縮 5~10秒保持 10回×3セット

紹介した報告以外でも、変形性膝関節症の股関節運動では重錘やゴムチューブを使って負荷量を調整し、側臥位または立位にて股関節外転や内転の筋力強化を図るトレーニングが多いようです。

また、筋力トレーニング以外の股関節運動は、機能トレーニングとしてステップトレーニングを実施する研究もあります。

ChaipinyoらやBennellらは、以下のようなプログラムを実施しました15、16)。

ステップトレーニング

頻度:週5日 期間:4週間

種目:前方・側方・後方にステップトレーニング 各30回/日

ステップトレーニング

期間:12週間

種目:前方・側方・後方ステップ 10回×3セット

筋力強化ではなく、機能向上を目的としてプログラムを実施しています。

変形性膝関節症に対する股関節運動の効果を調査した研究をみると、筋力強化を目的としたトレーニングが多く、ステップトレーニングのような機能トレーニングを用いた研究は少ないようです。

変形性膝関節症の股関節運動としては、股関節の外転筋力トレーニングの方がエビデンスとして確立しているようです。

ただし、機能トレーニングに意味がないというわけではなく、理学療法評価をもとに患者さんごとに必要なプログラムを選択しましょう。

まとめ

変形性膝関節症の股関節運動について解説しました。

  • 変形性膝関節症では股関節の筋力低下を示すエビデンスがある
  • 股関節の等尺性外転筋力は健常者より7~24%も低いという研究報告もある
  • 股関節外転筋力が高い方が弱いよりも変形性膝関節症の予防に有効な可能性がある
  • 歩行時に立脚側の股関節外転筋力低下は遊脚側の骨盤が下制+側方へ偏位するため,立脚側の膝関節内側軟骨に負荷が増加する
  • 股関節筋力の低下が変形性膝関節症の危険因子であるかを明らかにした研究は不十分で股関節外転筋力と変形性膝関節症が関係するかエビデンスがない
  • 股関節外転筋力トレーニングは疼痛軽減と機能向上に有効
  • 大腿四頭筋トレーニングに股関節筋力トレーニングを追加すると、大腿四頭筋トレーニング単独よりも疼痛軽減や機能向上の効果を認めた
  • 変形性膝関節症の高い膝関節内反モーメントは内側型変形性膝関節症の進行と関係する
  • 変形膝関節症の膝関節内反モーメントは、股関節運動を含めて運動療法によって改善するというエビデンスはない
  • 膝関節内反モーメントの測定では評価できない観点で関節負荷の軽減に影響を及ぼす可能性もある

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

臨床での一助になれば幸いです。

参考資料

  1. Margaret Deasy, et al. Hip Strength Deficits in People With Symptomatic Knee Osteoarthritis: A Systematic Review With Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2016.
  2. Hinman RS:Hip muscle weakness in individuals with medial knee osteoarthritis. Arthritis Care Res. 2010.
  3. Andrew Hislop, et al. Hip strength, quadriceps strength and dynamic balance are lower in people with unilateral knee osteoarthritis compared to their non-affected limb and asymptomatic controls. Braz J Phys Ther. 2022.
  4. Chang A, et al. Hip abduction moment and protection against medial tibiofemoral osteoarthritis progression. Arthritis Rheum. 2005.
  5. Chang A, et al. Hip Muscle Strength and Protection Against Structural Worsening and Poor Function and Disability Outcomes in Knee Osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage. 2019.
  6. Margaret Deasy, et al. Hip Strength Deficits in People With Symptomatic Knee Osteoarthritis: A Systematic Review With Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2016.
  7. Dias Tina Thomas, et al. Hip abductor strengthening in patients diagnosed with knee osteoarthritis – a systematic review and meta-analysis. BMC Musculoskelet Disord. 2022.
  8. Andrew Craig Hislop, et al. Does adding hip exercises to quadriceps exercises result in superior outcomes in pain, function and quality of life for people with knee osteoarthritis? A systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2020.
  9. Varah Yuenyongviwat , et al. Effect of hip abductor strengthening exercises in knee osteoarthritis: a randomized controlled trial. BMC Musculoskelet Disord. 2020.
  10. Thomas P Andriacchi, et al. Gait mechanics influence healthy cartilage morphology and osteoarthritis of the knee. J Bone Joint Surg Am. 2009.
  11. Giovanni E Ferreira, et al. The effect of exercise therapy on knee adduction moment in individuals with knee osteoarthritis: A systematic review. Clin Biomech. 2015.
  12. K L Bennell, et al. Hip strengthening reduces symptoms but not knee load in people with medial knee osteoarthritis and varus malalignment: a randomised controlled trial. Osteoarthritis Cartilage. 2010.
  13. Kim L Bennell, et al. The effects of hip muscle strengthening on knee load, pain, and function in people with knee osteoarthritis: a protocol for a randomised, single-blind controlled trial. BMC Musculoskelet Disord. 2007.
  14. Yujie Xie, et al. Quadriceps combined with hip abductor strengthening versus quadriceps strengthening in treating knee osteoarthritis: a study protocol for a randomized controlled trial. BMC Musculoskelet Disord. 2018.
  15. Kanda Chaipinyo, et al. No difference between home-based strength training and home-based balance training on pain in patients with knee osteoarthritis: a randomised trial. Aust J Physiother. 2009.
  16. Kim L Bennell, et al. Neuromuscular versus quadriceps strengthening exercise in patients with medial knee osteoarthritis and varus malalignment: a randomized controlled trial. Arthritis Rheumatol. 2014.

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