
座っている時間が長いと、健康に悪いってホント?

1日どれくらい座っていると、どんな悪いことがある?
座位行動(sedentary behaviour)とは、座っている、もたれている、横になっている状態で、1.5METs以下のエネルギー消費が特徴的な行動1)。
座位時間は1日の座位行動をしている時間。
WHO身体活動・座位行動ガイドラインの2020年版においても、座位行動を減らすことは健康に重要であることを示しています1)。
この記事では、どれくらいの座位時間で死亡や要介護、疾患発症のリスクが増加するのか論文によるエビデンスを解説します。
この記事の結論は以下の通りです。
- 1日5時間を超える座位時間は死亡リスクが増加する
- 座位時間が1日1時間増加するごとに死亡リスクが増加する
- 長い座位時間は要介護リスクや疾患発症リスクが増加する
この記事は、地域住民向けに実施した健康講話の内容をエビデンスベースにしました。
座位時間に着目することは、予防や健康の維持に重要です。
- 1日何時間座っていると死亡リスクが増加するかわかる
- 1日何時間座っていると要介護、疾患発症リスクが増加するかわかる
長い座位時間は死亡リスクが増加する
ここでは、座位時間の増加による死亡リスクについて解説します。
「死亡」は生命の最も重大な健康状態を示す指標です。
- 1日5時間以上の座位時間で死亡リスクが増加する
- 高血圧症、糖尿病、脂質異常症があると、座位時間による死亡リスクはより増加する
- 1日座位時間が1時間増えるごとに死亡リスクが増加する

Duらは、日本老年学的評価研究(JAGES)のデータから、高齢者における座位時間と死亡率の関係をコホート研究にて調査しました2)。
対象は介護を必要としない65歳以上の日本人高齢者90.471名。
座位時間の測定方法は自記式質問票を使用。
結果は以下の通りです。
1日3時間未満の座位時間に比べて、8時間以上では31%も死亡リスクが増加(HR 1.31, 95%CI 1.18~1.46, p<0.001)

1日合計8時間以上の座位時間は健康に悪いことが示されていますね。
また、長い座位時間による死亡リスクの増加については、大規模集団調査で報告されています。 Changらは、イギリスとアメリカの大規模コホートデータから座位時間と死亡リスクの関係を調査しています3)。
対象者はイギリスのUKバイオバンクのデータから490,659名、アメリカの国民栄養調査(NHANES)データから33,534名の大規模データ。
座位時間の調査は自記式質問票で評価。
結果は以下の通りです。
- UKバイオバンク:5時間未満に比べて、5~8時間(HR 1.04, 95%CI1.02~1.07)と8時間超え(HR 1.14, 95%CI 1.10~1.19)で死亡リスクが増加
- NHANES:5時間未満に比べて、5~8時間(HR 1.24, 95%CI1.14~1.36)と8時間超え(HR 1.70, 95%CI 1.53~1.88)で死亡リスクが増加

座位時間は5時間未満に比べて、5時間以上で死亡リスクが増加しました。
異なる2つの大規模集団調査から、座位時間の増加が全死亡リスクの増加と関連しており、座位時間が重要な健康指標と考えられます。
また、日本における調査でも1日の座位時間と死亡リスクの関係が報告されています。
Koyamaらは、日本多施設共同コホート研究(JMICC)のデータから座位時間と死亡率の関係を調査しました4)。
対象者は、35~69歳の64,456名。
座位時間は自記式質問票で測定。
結果は以下の通りです。
1日の座位時間が5時間未満に比べて、7~9時間未満で21%(HR 1.21,95%CI 1.06~1.36)、9時間以上で54%(HR 1.54,95%CI 1.39~1.71)も有意に死亡リスクが増加した

日本における調査でも、座位時間が長いと死亡リスクが増加することが報告されています。
また、Koyamaらの調査の興味深い点として、座位時間と死亡リスクの関係に高血圧症、脂質異常症、糖尿病の疾患数が影響するか調査しました。
結果は以下の通りです。
- 高血圧症、脂質異常症、糖尿病の疾患数が0でも、1日9時間以上の座位時間では死亡リスクが有意に増加した(HR 1.45、95%CI 1.25~1.67)
- 1日の座位時間と死亡リスクの関係は、疾患数が増えるごとに死亡リスクが増加し、疾患数が3では、5~7時間未満でも高い死亡リスクを認めた(HR 2.27、95%CI 1.11~4.63)

代謝性疾患の数が増えると、座位時間の増加に伴う死亡リスクがより増加することが明らかとなりました。
座位時間の悪影響は、特に代謝性疾患がある人では注意が必要ですね。
1日の座位時間と死亡リスクの関係について、「1日に何時間の座位時間が増えると死亡リスクが増加するか」も調査されています。
何時間の座位時間が増えると、リスクが高まるか知ることで、座位時間を短くする意識が高まります。
Koyamaらの調査結果は以下の通りです4)。
- 1日の座位時間が2時間増加するごとに、13%死亡リスクが増加(HR 1.13、95%CI 1.07~1.18)
- 高血圧症、脂質異常症、糖尿病の疾患数が増えるごとに、2時間増加毎の死亡リスクも増加(最大42%、HR 1.42、95%CI 1.16~1.73)


日本人を対象とした研究において、1日2時間の座位時間が増えることは死亡リスクが増加することが示されています。
また、Zhaoらは、座位時間と全死因死亡率との用量反応関係をメタ解析にて調査しました5)。
対象は、18歳以上の座位行動と健康状態を調査した24の前向きコホート研究で、米国、英国、デンマーク、ノルウェー、カナダ、スペイン、日本、オーストラリアでの調査。
結果は以下の通りです。
- 座位時間と全死因死亡リスクは用量依存的に関連
- 1日の座位時間が1時間増加するごとに死亡リスクは3%増加(HR 1.03、95%CI 1.02~1.03)

さまざまな国の調査を対象としたメタ解析において、座位時間が1時間増えるだけでも死亡リスクが増加することが明らかとなりました。
さらに、1日の座位時間の閾値を報告した研究もあります。
Pattersonらは、座位行動と死亡リスクとの関係を用量反応メタ解析で調査しました6)。
対象は、非疾患成人の座位活動と健康状態を調査した34の前向き研究で、北米、欧州、豪州、アジアの研究が含まれている。
結果は以下の通りです。
- 1日の座位時間は8時間を閾値として、8時間/日よりも短い場合は、座位時間が1時間増加ごとの死亡リスクの増加は小さい(RR 1.01,95%CI 1.00~1.01)
- 1日の座位時間が8時間よりも長い場合は、座位時間が1時間増加ごとの死亡リスクが急激に増加する(RR 1.04、95%CI 1.03~1.05)
8時間の座位時間を閾値として、1時間ごとの死亡リスクの増加が急激に増加すると報告しています。
1日8時間以上座っている人では、より座位時間に注意が必要かもしれません。
ここまで、座位時間が死亡リスクの増加に関わっているという研究をまとめました。
しかし、座位時間と死亡リスクについては、統計的に有意な関係を認めないという報告もあります。
Chenらは、日本人高齢者を対象に加速度計による座位時間と死亡率の関連性を10年間調査しました7)。
対象は、65歳以上の障害がない高齢者1723名。
座位時間は加速度計を1週間装着して測定。
結果は以下の通りです。
1日402.8分(1/3分位数)未満に比べ、402分以上の座位時間は統計的に有意な死亡リスクの増加は認めなかった

座位時間と死亡リスクの関係において、統計的に有意な関係は認めなかったとしています。
また、Seinoらは、自記式質問票を用いて、日本人高齢者を対象に座位時間と全死亡率との用量反応関係を調査しました8)。
対象は、65~84歳を無作為層別抽出法で選出した8069名。
座位時間の測定は、自記式質問票IPAQ-SFを用いて評価。
結果は以下の通りです。
座位時間は死亡リスクと有意な用量反応関係は認めなかった。

これらの調査結果のように、座位時間が必ずしも死亡リスクと関係しないことも報告されています。
ただし、Seinoらは、座位時間が死亡リスクと関連しなかった点について以下のように考察しています。
座位行動のタイプ(精神的に能動的or受動的)が影響した可能性があり、今後の調査では座位行動のタイプも考慮に入れる必要がある。
IPAQ-SFは座位時間を過小評価しやすく、認知バイアスが影響した可能性がある。
座位活動の内容の違いや加速度計のような客観的な方法ではなく、IPAQ-SFを使用する研究の限界である可能性を述べています。
対象や調査方法によって、座位時間は死亡リスクと関係しない可能性があるのかもしれません。
ここまで、座位時間と死亡リスクの関係について解説しました。
さまざまな国での大規模なコホート研究やメタ解析をみると、1日の座位時間が長いことは死亡リスクを増加させる要因と考えられます。
特に、1日5~8時間を超える座位時間は死亡リスクが顕著に増加し、
1日の座位時間が1~2時間増加するごとに、死亡リスクも増加するようです。
1日の座位時間をできるだけ短くすることは、健康に重要ですね。
長い座位時間は要介護・心血管疾患・がん・認知症のリスクが増加する
ここでは、座位時間と要介護や心血管疾患、がん、認知症のリスクについて解説します。
要介護や疾患の発症リスクは生命予後やQOLに関わる重要な要因です。
以下、結論です。
- 要介護リスクは1日8時間以上の座位時間で増加する
- 心血管発症のリスクは、座位時間が長い人の方が高く、1時間増加するごとに5%増加する
- 乳・大腸・直腸・子宮内膜・卵巣・前立腺がん発症リスクは長い座位時間で増加する
- 認知症発症のリスクは、1日5~8時間を超える座位時間で急激に増加する
座位時間と要介護リスクの関係
ここでは、座位時間と要介護リスクの関係について解説します。
1日の座位時間の長さは要介護リスクを高める原因です。
以下、結論です。
- 1日の座位時間が8時間を超えると要介護のリスクが増加する
- 1日600分以上の座位時間は直線的に要介護リスクが増加する
- 高い活動量は座位時間による要介護リスクを相殺する可能性がある

1日の座位時間が長いと要介護リスクが増加することが明らかとなっています。
Duらは、日本老年学的評価研究(JAGES)のデータから高齢者の座位時間と機能障害(要介護2~5)の関係をコホート研究で調査しました2)。
対象は介護を必要としない65歳以上の高齢者90,471名。
座位時間の測定方法は、自記式質問票であるJPHC-PAQを使用。
JPHC-PAC:座位時間について「仕事中を含め、1日に何時間座っていますか」という質問に対して、(i) 3時間未満、(ii) 3時間以上8時間未満、(iii) 8時間以上の選択しから回答。
機能障害は、介護保険制度にて要介護度2~5と定義。
結果は以下の通りです。
- 1日の座位時間が3時間未満に対して、3~8時間未満では機能障害のリスクと有意な関連は認めない(HR 1.03、95%CI 0.96~1.11)
- 1日の座位時間が8時間以上では機能障害のリスクが33%も増加した(HR 1.33、95%CI 1.19~1.48)

1日8時間以上の座位時間では要介護2~5となるリスクが増加するようです。
また、Seinoらも座位時間と障害発生(要支援1以上)リスクの関係を調査しています9)。
対象は、介護保険を受けていない65~84歳の高齢者7480名。
座位時間の調査は自記式質問票であるIPAQ-SFを使用。
障害発生とは、介護保険制度で要支援1以上に新たに認定される状態と定義。
結果は以下の通りです。
- 1日300分以上の座位時間と比較して、600分以上では障害発生リスクが直線的に有意に増加した
- 障害発生リスクは、1日の座位時間1080分で最大となった(HR 1.31, 95%CI 1.01~1.71)

1日600分以上の座位時間では、要支援1以上となるリスクが増加することが明らかとなりました。
また、Seinoらの調査では、座位時間と障害発生リスクの関係に、フレイルの有無が影響しているか調査しています9)。
フレイルの有無は、基本チェックリスト15項目のうち4以上に該当と定義しました。
結果は以下の通りです。
- 非フレイルでは、座位時間1日300分と比較して、600分以上に達するとHRは直線的に増加し、1080分で最大HRとなった(HR 1.47, 95%CI 1.02~2.12)
- フレイルでは、座位時間とリスクは直線的な関係の傾向を認めたが,統計的に有意ではなかった

非フレイルは、全体と同様に、600分以上の座位時間は要支援1以上となるリスクが増加しますが、フレイルでは座位時間と要介護リスクに有意な関連を認めませんでした。
この結果についてSeinoらは、以下のように考察しています。
非フレイル高齢者では、座位位時間を減らすことで障害発生リスクの予防になる可能性がある。
フレイル高齢者では、座位時間の減少だけではなく、座位時間を(中~高強度の)身体活動に置き換えることが重要な可能性がある。
座位時間を減らすことは要介護の予防に効果がありますが、フレイル高齢者においては、座位時間よりも身体活動に着目する方が重要かもしれません。
座位時間と身体活動の関係が(要介護リスクに)重要なことは、別の調査からも明らかとなっています。
Watanabeらは、高齢者における身体活動・座位時間と障害(要支援1以上)の関連を前向きコホートにて調査しました10)。
対象は、65歳以上の日本人高齢者10,164名。
IPAQ-SFにて、座位時間と中~高強度の身体活動(MVPA)の量を測定。
中~高強度の身体活動(MVPA)から、1週間に150分以上を”高MVPA”、150分未満を”低MVPA”と定義 ・座位時間(ST)から、1日に300分以上を”高ST”、300分未満を”低ST”と定義
障害発生は、介護保険制度で要支援1以上と定義。
結果は以下の通りです。
- 活動量が多く座位時間が短い群(高MVPA/低ST)に比べて、活動量が多くて座位時間が長い群(高MVPA/高ST)は障害リスクに有意な関係は認めなかった(HR 1.04,95%CI 0.87~1.25)
- 活動量が少なく座位時間が短い群(低MVPA/低ST)でHR1.22(95%CI 1.05~1.42)、活動量が少なく座位時間も長い群(低MVPA/高ST)でHR1.52(95%CI 1.31~1.75)と障害発生のリスクが有意に増加した
- 低MVPAではSTが障害リスクと関連したが、高MVPAでは関連を認めなかった


活動量が多い群では障害リスクとの関係は認めませんでしたが、活動量が少なく座位時間が短い群と長い群で障害発生リスクを認めました。
中~高強度の身体活動と座位時間は、要介護リスクと関連しており、
活動量を増やし座位時間を減らすことが介護予防に重要なようです。
身体活動と座位時間が要介護リスクに及ぼす影響について、Watanabeらは以下のように考察しています。
長時間の座位時間が要介護リスクに及ぼす悪影響は中~高強度の身体活動に依存し、
活動量が多いと座位時間に関連するリスクを部分的に相殺する。
長く座ることがあっても、中~高強度の活動をすることで悪影響を減らせるかもしれませんね。
ここまで、座位時間と要介護リスクについて解説しました。
1日8時間以上の座位時間は要介護リスクを増加させます。
介護予防のためにも座位時間を短くすることは有効ですね。
また、座位時間だけでなく身体活動も要介護リスクに関わっており、
中~高強度の身体活動は長い座位時間の悪影響を相殺する可能性があります。
座位時間と活動量の両方が健康に重要な要素です。
座位時間と心血管疾患リスクの関係
ここでは、長時間の座位時間が心血管疾患による死亡や発症リスクについて解説します。
以下、結論です。
- 1日5時間を超える座位時間は心血管疾患による死亡リスクが急激に増加する
- 座位時間が長い人の方が心血管疾患の発症リスクは高く、1時間増加するごとに5%増加する

まず、心血管疾患による死亡リスクと座位時間について、いくつか報告があります。
Pattersonらは、座位行動と心血管疾患(CVD)リスクの関係を用量反応メタ解析で調査しました11)。
18歳以上の非疾患成人の座位活動と健康状態を調査した34の前向き研究1,331,468 人。
平均追跡期間8.9年(2~31年),北米17・欧州9・豪州4・アジア4研究が含まれた。
結果は以下の通りです。
- 1日の座位時間は6時間を閾値として、6時間/日よりも短い場合は、座位時間と心血管疾患による死亡リスクに有意な関係は認めなかった(RR 1.01,95%CI 0.99~1.02)
- 1日の座位時間が6時間よりも長い場合は、座位時間が1時間増加ごとの心血管疾患による死亡リスクが急激に増加する(RR 1.04、95%CI 1.03~1.04)

メタ解析の調査から、6時間を超える1日の座位時間で心血管疾患による死亡リスクが増加することを明らかにしています。
また、大規模な国民調査データから座位時間と心血管疾患による死亡リスクが関連していることも報告されています。
Changらは、イギリスのUKバンクとアメリカの国民栄養調査(NHANES)データからそれぞれ3万人以上を対象に調査しました3)。
結果は以下の通りです。
- UKバイオバンク:5時間未満に比べて、8時間超え(HR 1.11, 95%CI 1.02~1.20)で心血管疾患による死亡リスクが増加
- NHANES:5時間未満に比べて、5~8時間(HR 1.42, 95%CI 1.21~1.67)と8時間超え(HR 1.72, 95%CI 1.41~2.11)で心血管疾患による死亡リスクが増加

大規模な集団データから、1日の座位時間が5~8時間を超えると心血管疾患による死亡リスクが増加することが明らかとなりました。
さらに、1日1時間座位時間が増えるごとに、心血管疾患による死亡リスクが増加することもメタ解析にて報告されています。
Zhaoらは、座位時間と心血管疾患による死亡率との用量反応関係をメタ解析にて調査しました5)。
結果は以下の通りです。
座位時間が1日1時間増加ごとに心血管疾患による死亡リスクは4%増加した(HR 1.04, 95%CI 1.02~1.07)

1時間座位時間が増えるだけでも、健康への影響は大きいようです。
また、1日の座位時間は心血管疾患による死亡リスクだけでなく、
心血管疾患を発症するリスクも増加することが報告されています。
Onagbiyeらは、座位行動と心血管疾患(CVD)の発症リスクとの関係をメタ分析にて調査しました12)。
対象は健康成人を対象に心血管疾患の発症や死亡率を調査コホート研究27研究、22,257名。
座位時間、6研究で加速度計、その他の研究では自己申告にて測定。
結果は以下の通りです。
- 座位時間が短い人と比べて、座位時間が長い人では心血管疾患の発症リスクが29%増加した(HR 1.29、95%CI 1.22~1.37)
- 座位時間が1日1時間増加するごとに、心血管疾患の発症リスクは5%増加した

コホート研究を対象としたメタ解析から、座位時間が長いことは心血管疾患を発症するリスクを増加させ、
1日の座位時間が1時間増加するごとに5%も心血管疾患の発症リスクが増加することが示されました。
ここまで、座位時間と心血管疾患による死亡リスクや心血管疾患の発症リスクについて解説しました。
1日の座位時間が増加すると、心血管疾患による死亡や疾患の発症リスが増加します。
特に、1日5~6時間以上の座位時間は心血管疾患による死亡リスクが増加するため注意しましょう。
また、座位時間の増加も心血管疾患の発症リスクを増加させ、1時間増加するごとに5%増加する可能性があります。
心血管疾患を予防するためにも座位時間が短い生活をしましょう。
座位時間とがんリスクの関係
ここでは、長時間の座位時間ががんによる死亡や発症のリスクとなる可能性について解説します。
以下、結論です。
- 1日の5時間を超える座位時間は、がんによる死亡リスクが増加する
- 長い座位時間は、乳がん・大腸がん・直腸がん・子宮内膜がん・卵巣がん・前立腺がんの発症リスクが増加(RR 1.07~1.29)する

まず、座位時間とがんによる死亡リスクの関係について解説します。
Changらは、イギリスのUKバイオバンクとアメリカのNHANESの大規模データから座位時間とがんによる死亡リスクを調査しました3)。
結果は以下の通りです。
- UKバイオバンク:5時間未満に比べて、5~8時間(HR1.03, 95%CI 1.00~1.07)と8時間超え(HR 1.11, 95%CI 1.05~1.17)でがんによる死亡リスクが増加
- NHANES:5時間未満に比べて、5~8時間と8時間超えでは、がんによる死亡リスクと有意な関係は認めなかった

アメリカにおけるデータでは、有意差を認めませんでしたが、
イギリスでは5時間以上の座位時間でがんによる死亡リスクが増加する可能性が報告されています。
また、がんによる死亡リスクは座位時間と用量依存的に増加することが報告されています。
Zhaoらは、用量反応メタ解析にて座位時間とがんによる死亡リスクを調査しました5)。
結果は以下の通りです。
座位時間が1日1時間増加するごとに、がんによる死亡リスクは1%増加する(HR 1.01, 95%CI 1.00~1.02)

座位時間が1時間増加すると、がんによる死亡リスクが増加すると報告しており、
長い座位時間はがんによる死亡リスクを増加することが明らかとなっています。
また、がんによる死亡リスクだけでなく、座位時間はがんの発症リスクも増加させると報告している調査もあります。
Hermelink らは、がんと座位行動の関連を明らかにするアンブレラレビューとメタ解析を実施しました。
対象は、がん発症率・全がん死亡率と座位行動の関連を調査した系統的レビューおよびメタ解析14研究。
70件以上の異なる研究から17のがん部位について合計20万件以上のがん症例を含むデータを統合した。
座位行動レベルによるがんの発症リスクの結果は以下の通りです。
- 乳がん RR1.08 (95%CI 1.04~1.12)
- 大腸がん RR1.25 (95%CI 1.16~1.33)
- 直腸がん RR1.07 (95%CI 1.01~1.12)
- 子宮内膜がん RR1.29 (95%CI 1.15~1.44)
- 卵巣がん RR1.29 (95%CI 1.17~1.54)
- 前立腺がん RR1.08 (95%CI 1.00~1.17)

長い座位時間は、いくつかのがん発症リスクとなることが報告されています。
座位時間とがんが関連するメカニズムについて、Hermelinkらは以下のように考察しています。
- 座位行動は肥満と関連:座位で過ごす時間が長い人は肥満になりやすい。肥満は食道腺がん,大腸がんなど多くのがんリスクを増加させる。
- 座位行動は全身性の慢性炎症と関連:座位で過ごす時間が長いと全身性の慢性炎症を引き起こす。慢性炎症はがんの独立したリスク因子。
- 座位行動はインスリン抵抗性と関連:座位で過ごす時間が長いと、インスリン抵抗性を引き起こす。インスリン抵抗性は2型糖尿病のリスク因子であり,2型糖尿病は細胞分裂作用により、乳がん,大腸がん,肝臓がんなど多くのがんリスクを増加させる。

座位時間が長いと、血流障害や代謝障害を引き起こし、がんの発症リスクを増加させる可能性があるようです。
ここまで座位時間とがんによる死亡リスクとがん発症リスクについて解説しました。
1日の座位時間が長くなると、がんによる死亡リスクは増加します。
また、座位時間はいくつかの種類のがん発症リスクとも関係しており、最大29%も発症リスクが増加するようです。
座位時間が長いと、血流障害や代謝障害を引き起こし、がんの発症につながる可能性があるため、座位時間は短くしましょう。
座位時間と認知症リスクの関係
ここでは、長時間の座位時間が認知症を発症のリスクとなる可能性について解説します。
以下、結論です。
1日5~8時間を超える座位時間は、認知症の発症リスクが急激に増加する

1日の座位時間が長くなると、認知症を発症するリスクが増加することが多くの調査で明らかとなっています。
Sunらは、イギリスのUKバイオバンクから1日の余暇の座位時間と認知症の関係を調査しました14)。
対象は37~73歳の地域住民484,169名。
余暇の座位時間は自記式質問票で評価。
結果は以下の通りです。
1日の余暇での座位時間が5時間未満に比べて、
5~8時間(HR 1.07, 95%CI 1.02~1.13)と8時間超え(HR 1.25, 95%CI 1.13~1.38)で認知症の発症リスクが増加した

余暇での座位時間は5時間を超えると認知症のリスクが増加することを明らかにしました。
また、座位時間の測定を加速度計にて実施した研究もあります。
Raichlenらは、加速度計で評価した座位行動と認知症リスクの関係を調査しました15)。
対象は、イングランド・スコットランド・ウェールズに居住する60歳以上の高齢者49,841人。
座位時間は、1週間の腕時計型加速度計を装着して測定。
結果は以下の通りです。
1日の座位時間の中央値9.27時間に比べて、10時間(HR 1.08, 95%CI 1.04~1.12)、12時間(HR 1.63, 95%CI 1.35~1.97)、15時間(HR 3.21, 95%CI 1.04~1.12)で有意に認知症のリスクが増加した

信頼性の高い加速度計を用いた調査においても、
座位時間が長くなるほど、認知症のリスクが増加することが明らかとなりました。
座位時間と認知症のリスクについては、日本人を対象とした研究も報告されています。
Duらは、日本人高齢者における座位時間と認知症の関係をコホート研究にて調査しました2)。
対象は、2016~2021年のJAGESデータから,介護を必要としない65歳以上の日本人高齢者90,471名。
座位時間は、自記式質問票(JPHC-PAQ)で測定。
認知症の定義は、認知症高齢者の日常生活自立度でランクⅡa以上と定義。
結果は以下の通りです。
- 1日の座位時間が3時間未満に比べて、3~8時間未満では認知症と有意な関連は認めなかった(HR 1.02, 95%CI 0.95~1.10)
- 1日の座位時間が8時間以上では36%も認知症のリスクが増加した(HR 1.36, 95%CI 1.21~1.52)

日本人における調査でも、座位時間が長いことは認知症のリスクを増加させることが明らかとなっています。
ここまで座位時間と認知症の発症リスクについて解説しました。
多くの大規模調査の結果から、1日5~8時間を超える座位時間は、認知症のリスクを急激に増加させる可能性が示されています。
認知症予防のためにも、座位で過ごす時間は減らしましょう。
まとめ
ここまで、1日の座位時間と死亡や要介護、疾患リスクについて解説しました。
- 日本人を対象とした研究や世界的な大規模な研究から、1日5~8時間以上の座位時間で死亡リスクは増加
- 日本人を対象とした調査において、高血圧症、糖尿病、脂質異常症があると座位時間による死亡リスクは増加しやすく、最大2倍以上も死亡リスクが増加
- 座位時間が1~2時間増加するごとに、死亡リスクが増加
- 1日8時間以上の座位時間は要介護リスクが増加
- 活動量が少なく座位時間が長い群で最も要介護リスクが増加
- 低MVPAではSTが障害リスクと関連したが、高MVPAでは関連を認めず、高いMVPAは座位時間に関連する悪影響を部分的に相殺する可能性
- 1日5時間を超える座位時間は心血管疾患による死亡リスクが増加
- 座位時間が長い人の方が心血管疾患の発症リスクは高く、1時間増加するごとに5%増加
- 1日の5時間を超える座位時間は、がんによる死亡リスクが増加
- 長い座位時間は、乳がん・大腸がん・直腸がん・子宮内膜がん・卵巣がん・前立腺がんの発症リスクが増加
- 1日5~8時間を超える座位時間は、認知症の発症リスクが急激に増加
- 大規模調査や加速度計を用いたエビデンスの高い調査から、座位時間が死亡リスクや疾患発症のリスクを増加させることが明らか
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
参考資料
- WHO身体活動・座位行動ガイドライン2020年版(日本語版)https://www.nibn.go.jp/eiken/info/pdf/WHO_undo_guideline2020.pdf
- Zhen Du, et al. Sedentary behavior and the combination of physical activity associated with dementia, functional disability, and mortality: A cohort study of 90,471 older adults in Japan. Prev Med. 2024.
- Qinyu Chang, et al. Replacement of sedentary behavior with various physical activities and the risk of all-cause and cause-specific mortality. BMC Med. 2024.
- Teruhide Koyama, et al. Effect of Underlying Cardiometabolic Diseases on the Association Between Sedentary Time and All-Cause Mortality in a Large Japanese Population: A Cohort Analysis Based on the J-MICC Study. J Am Heart Assoc. 2021.
- R Zhao, et al. The Dose-Response Associations of Sedentary Time with Chronic Diseases and the Risk for All-Cause Mortality Affected by Different Health Status: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Nutr Health Aging. 2020.
- Richard Patterson, et al. Sedentary behaviour and risk of all-cause, cardiovascular and cancer mortality, and incident type 2 diabetes: a systematic review and dose response meta-analysis. Eur J Epidemiol. 2018.
- Tao Chen, et al. Associations of objectively measured physical activity and sedentary time with all-cause mortality in Japanese older adults: a 10-year prospective study. Br J Sports Med. 2025.
- Satoshi Seino, et al. Dose-response Associations of Physical Activity and Sitting Time With All-cause Mortality in Older Japanese Adults. J Epidemiol. 2024.
- Satoshi Seino, et al. Dose-response associations between physical activity and sedentary time with functional disability in older adults with or without frailty: a prospective cohort study. Front Public Health. 2024.
- Daiki Watanabe, et al. Associations of Moderate-to-vigorous Physical Activity and Sitting Time With Risk of Disability and Mortality Among Japanese Older Adults. J Epidemiol. 2025.
- Richard Patterson, et al. Sedentary behaviour and risk of all-cause, cardiovascular and cancer mortality, and incident type 2 diabetes: a systematic review and dose response meta-analysis. Eur J Epidemiol. 2018.
- S Onagbiye, et al. Association of sedentary time with risk of cardiovascular diseases and cardiovascular mortality: A systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies. Prev Med. 2024.
- Rafael Hermelink, et al. Sedentary behavior and cancer-an umbrella review and meta-analysis. Eur J Epidemiol. 2022.
- Ying Sun, et al. Replacement of leisure-time sedentary behavior with various physical activities and the risk of dementia incidence and mortality: A prospective cohort study. J Sport Health Sci. 2023.
- David A Raichlen, et al. Sedentary Behavior and Incident Dementia Among Older Adults. JAMA. 2023.


コメント