【変形性膝関節症】股関節外転のトレーニング効果を解説:膝関節の疼痛軽減や機能向上に有効【膝関節】

運動療法

変形性膝関節症に股関節の筋力って影響するの?

大腿四頭筋は鍛えてるけど、「歩くと痛い」って言われる。どうしたら良いの?

変形性膝関節症の治療ポイントの一つが、股関節外転筋です。

この記事では、エビデンスをもとに以下の点を解説します。

  • 変形性膝関節症は股関節外転筋力が約24%も低い
  • 股関節外転筋力の低下→KAM増加→疼痛や変形性膝関節症の悪化
  • 股関節外転筋力運動は疼痛軽減と機能向上に有効
この記事を読むメリット
  • 変形性膝関節症における股関節外転筋力の重要性がわかる
  • 自信を持って股関節外転筋力トレーニングを選択できる

膝だけの介入は卒業!なぜ股関節外転筋が必須なのか?

変形性膝関節症では、膝だけではなく、他の関節の評価も重要です。

特に、股関節の筋力は低下していることが多く、

膝関節への負担が増加し、疼痛や変形性関節症が進行に繋がります

変形性膝関節症⇒股関節外転筋の筋力低下⇒骨盤の下制+側方移動

⇒KAMの増加=膝内側部の負担増加疼痛の増悪+変形性関節症の進行

股関節の外転筋力の低下は、歩行時に膝関節の負担を増加させ、疼痛や変形性関節症の増悪を引き起こす要因となります。

変形性膝関節症の治療では、股関節の筋力も見落とさないようにしましょう。

変形性膝関節症は股関節の筋力が低下している⁉

変形性膝関節症は、股関節周囲筋の筋力が低下することがエビデンスで示されています。

特に股関節外転筋では、健常者と比べて約24%も低いようです。

Deasyらは2016年に、変形性膝関節症と健常者の股関節筋力の関係をメタ解析による系統的レビューで報告しました1)。

  • 変形性膝関節症は健常者よりも股関節外転筋力が有意に低い(SMD -0.60, 95%CI -1.04~-0.17)
  • 変形性膝関節症と健常者では股関節内転筋力に有意な差はない(SMD -0.26, 95%CI -1.33~0.81)

Deasyらは、変形性膝関節症で股関節外転筋力が低いことは中等度のエビデンスがあるとしており、

3研究の結果では、股関節の等尺性外転筋力は健常者より7~24%も低かったようです。

また、Hinmanらは内側型変形性膝関節症と健常者の等尺性股関節筋力体重比(Nm/kg)を比較しました2)。

健常者よりも変形性膝関節症はすべての股関節筋力が16~27%も有意に低かった

股関節すべての筋力が低いとしています。

さらに、2022年にHislopらは、変形性膝関節症の罹患側に対して、非罹患側や健常者の下肢筋力を比較しています3)。

  • 罹患側は非罹患側より膝関節伸展筋力が15.7%も有意に低かった(95%CI 9.9~21.5,p<0.001)
  • 罹患側は非罹患側より股関節内転筋力が9.3%も有意に低かった(95%CI 2.7~16.0,p<0.01)
  • 健常者と比較して、罹患側と非罹患側はともに膝関節伸展、股関節屈曲、伸展、外転、内転の有意に低かった

健常者と比べると、膝関節伸展筋力、股関節屈曲、伸展、外転、内転の筋力が低いと報告しています。

変形性膝関節症では股関節周囲筋の筋力が有意に低下しています。

特に股関節外転筋は健常者と比べて約24%も低い可能性があります。

変形性膝関節症をみる際は膝関節の筋力とセットで、股関節の筋力も評価しましょう。

股関節外転筋は変形性膝関節症を悪化させる⁉外部膝関節内反モーメント(KAM)への影響

股関節外転筋力の低下は膝関節の負担を増加させます。

キーワードは、外部膝関節内反モーメント (knee adduction moment: KAM)です。

  • 外部膝関節内反モーメントKAMとは、歩行時に床反力によって発生する膝関節内側を通る力
  • KAMは膝関節の負荷を示す指標であり、KAMの増加は膝関節内側部の負荷が大きい状態
  • KAMの増加は疼痛や変形性膝関節症の増悪因子

また、KAMにが変形性膝関節症に重要な要因であることはエビデンスでも示されています10)。

健康な軟骨とは対照的に、変形性膝関節症患者では内側の荷重がかかる領域の厚さが相対的に減少しており、内反モーメントが大きくなる

変形性膝関節症患者における高い内反モーメントと軟骨の薄さの関係は、疾患の重症度や内側型変形性膝関節症の進行と一致している。

Thomas P Andriacchi, et al. Gait mechanics influence healthy cartilage morphology and osteoarthritis of the knee. J Bone Joint Surg Am. 2009.

KAMは変形性膝関節症に関わる重要な要素の一つです。

ちなみに、KAMを減少させる歩行指導に興味がある方は別の記事にて解説しています。

臨床で重要なポイントは、

変形性膝関節症に影響するKAMが股関節外転筋力の弱さで増加することです。

Step 1. 股関節外転筋力が弱いと、歩行時の立脚期に骨盤が遊脚側へ下制+側方偏位

Step 2. 重心が遊脚側へ移動し、立脚側のKAMが増加

股関節外転筋による骨盤の水平位保持は、変形性膝関節症に影響する重要な要素の一つです。

股関節外転筋を鍛え、歩行時の骨盤を安定させることが変形性膝関節症の治療に繋がります。

股関節外転筋を鍛えるメリット!

ここでは、変形性膝関節症に対する股関節外転筋力トレーニングの効果について解説します。

結論は以下の通りです。

  • 股関節外転筋力トレーニングは変形性膝関節症の疼痛軽減や機能改善に有効なエビデンスがある
  • 大腿四頭筋トレーニング単独よりも股関節筋力トレーニングを追加した方が有意に改善する

Thomasらは、変形性膝関節症に対する股関節外転筋力トレーニングの効果を検証した系統的レビューとメタ解析を報告しています7)。

  • 股関節外転筋力トレーニングは疼痛軽減に中等度の効果を示す(SMD -0.60, 95%CI -0.88~-0.33, p<0.001)
  • 股関節外転筋力トレーニングは機能向上に大きい効果を示す(SMD-0.75, 95%CI -1.05~-0.45, p<0.001)

変形膝関節症に対する股関節外転筋力トレーニングは、疼痛改善や機能向上に対して高いエビデンスがあります。

また、Hislopらは変形性膝関節症に対して、大腿四頭筋トレーニングに股関節運動を追加した運動効果を調査した系統的レビューとメタ解析を報告しています8)。

この調査の対象群は大腿四頭筋トレーニングを実施しており、大腿四頭筋トレーニングに股関節運動を追加した効果を明らかにしています。

収集した研究の股関節運動は3種類で以下の内容でした。

  1. レジスタンストレーニング
  2. 機能的トレーニング(ステップ運動など)
  3. マルチモーダルトレーニング(レジスタンストレーニング+機能的トレーニング)

股関節運動を追加した、疼痛軽減の効果は以下の通りでした。

  • 大腿四頭筋トレーニングに股関節運動を追加しても疼痛軽減の効果に差はなかった(SMD -0.09, 95%CI -0.96~0.79)
  • 大腿四頭筋運動に高強度レジスタンス運動を追加した単一研究では,疼痛軽減の効果を認めた(SMD -1.18, 95%CI -1.97~-0.4)
  • 大腿四頭筋運動に低強度レジスタンス運動を追加した単一研究では,疼痛軽減の効果を認めた(SMD -1.26, 95%CI -2.05~-0.47)

大腿四頭筋トレーニングに股関節運動を追加しても、疼痛軽減の効果は変わらない可能性が示されました。

ただし、単一の研究ですが高強度と低強度のレジスタンストレーニングを実施した研究において、股関節運動の追加は疼痛軽減の効果を認めています

疼痛軽減に対してレジスタンストレーニングは重要です。

またHislopらの調査における、機能面に関する結果は以下の通りでした。

  • 大腿四頭筋トレーニングに股関節運動を追加しても、機能面に差はなかった(SMD -0.74, 95%CI -1.56~0.08)
  • 内側変形性膝関節症を対象とした4研究では,機能改善の効果を認めた(SMD -1.06, 95%CI -1.91~-0.21)
  • 歩行に関して、股関節運動の追加によって歩行能力の改善効果を認めた(SMD -1.06, 95%CI -2.01~-0.12)
  • 階段昇降に関して、股関節運動の追加によって階段昇降能力の改善を認めなかった(SMD -0.79. 95%CI -1.67~0.26)

大腿四頭筋トレーニングに股関節運動をしても、機能評価は変わりませんでした。

しかし、内側型変形性膝関節症では機能改善に効果があり、

特に歩行能力は有意に改善しました。

Hislopらの調査結果から、条件によって異なるが大腿四頭筋のトレーニング単独よりも、股関節運動を追加する方が効果は高いようです。

さらに、股関節外転運動の追加は回復が早まるという報告もあります。

Yuenyongviwatらは、変形性膝関節症に対する股関節外転筋力を追加した効果をRCTにて調査しました9)。

  • 大腿四頭筋トレーニングに股関節外転運動を追加することで、大腿四頭筋トレーニング単独よりも2~4週間も早く疼痛やADL、QOLが改善した
  • 10週間のトレーニング後は大腿四頭筋トレーニング単独群と股関節外転運動の追加群は、両方とも同レベルであった

股関節外転運動を追加することで、介入後2~4週では改善が早まる可能性が示されました。

Yuenyongviwatらは、結果から以下のように述べています。

大腿四頭筋運動を追加すると、大腿四頭筋運動単独よりも痛み、症状、日常生活の活動、生活の質の改善が早くなる

ただし2~4週間の期間のみで、それ以降は差がなかった。

したがって、治療プロトコルに股関節外転筋運動を追加するかどうかは、患者と医師の視点に基づいて検討する必要がある。

Varah Yuenyongviwat , et al. Effect of hip abductor strengthening exercises in knee osteoarthritis: a randomized controlled trial. BMC Musculoskelet Disord. 2020.

股関節外転運動が全員に必要なトレーニングか、検討の余地があるようです。

当たり前ですが股関節運動の選択は、患者の評価をもとに検討しましょう。

変形性膝関節症に対する股関節運動の効果に関しては、いくつもの論文から疼痛軽減や機能改善に有効なアプローチとしてエビデンスが報告されています。

また、大腿四頭筋トレーニングに股関節運動を追加すると、大腿四頭筋トレーニング単独よりも有効です。

変形性膝関節症の運動療法には、股関節筋のレジスタンストレーニングを積極的に取り入れましょう。

臨床で使える!股関節外転筋のトレーニング

股関節外転筋を鍛える運動について紹介します12~16)。

レベル1:軽負荷での殿筋トレーニング

種目ポイント
クラムシェル骨盤が後方に倒れないようにセラピストが固定もしくは壁に背中を当てる,両方の足部が離れないように注意 10~20回×2~3セット
股外転30°+膝屈曲90°以上で両脚ブリッジ膝関節深屈曲位のブリッジは殿筋の活動が増加するセラバンドを膝に巻き股関節外転に負荷をかけてもよい 10回×2~3セット

負荷量は比較的に低強度のため、筋力トレーニングの導入にも適しています。

殿筋への収縮練習にも適しています。

レベル2:負荷をかけた筋力トレーニング

種目ポイント
側臥位で股関節外転の反復運動重錘やセラバンドを使用して10RMを目安,
股関節屈曲位は大腿筋膜張筋が優位になるため注意10~20回×2~3セット
側臥位で股関節外転30°位を保持5~10秒が目安,重錘やセラバンドで負荷を調整5~10セット

反復運動や等尺性運動による筋力トレーニングです。

重錘やセラバンドを用いて十分に負荷をかけて実施しますが、膝関節痛の発生には注意しましょう。

筋力トレーニングの負荷量設定に興味がある方は別記事にて解説しています。

レベル3:鍛えた殿筋を活用する機能トレーニング

種目ポイント
片脚立位姿勢を5秒保持10回×3セットが目安,遊脚側は股・膝関節90°屈曲位で骨盤を水平に保つよう意識させる
膝屈曲90°以上で片脚ブリッジ膝関節90°~120°屈曲位で中殿筋は活性化しやすい 10回×2セット
側方にステップトレーニング軽く手すりに触れてもよい,できるだけ足が前後しないように意識させる 10歩×3セット

筋力トレーニングと機能トレーニングは目的ごとに使い分けましょう。

発揮できる筋力が向上も重要ですが、動作の中で使えるように機能トレーニングも大切です。

まとめ

変形性膝関節症の股関節運動について解説しました。

  • 変形性膝関節症では股関節の筋力低下を示すエビデンスがある
  • 股関節の等尺性外転筋力は健常者より7~24%も低いという研究報告もある
  • 股関節外転筋力が高い方が弱いよりも変形性膝関節症の予防に有効な可能性がある
  • 歩行時に立脚側の股関節外転筋力低下は遊脚側の骨盤が下制+側方へ偏位するため,立脚側の膝関節内側軟骨に負荷が増加する
  • 股関節筋力の低下が変形性膝関節症の危険因子であるかを明らかにした研究は不十分で股関節外転筋力と変形性膝関節症が関係するかエビデンスがない
  • 股関節外転筋力トレーニングは疼痛軽減と機能向上に有効
  • 大腿四頭筋トレーニングに股関節筋力トレーニングを追加すると、大腿四頭筋トレーニング単独よりも疼痛軽減や機能向上の効果を認めた
  • 変形性膝関節症の高い膝関節内反モーメントは内側型変形性膝関節症の進行と関係する
  • 変形膝関節症の膝関節内反モーメントは、股関節運動を含めて運動療法によって改善するというエビデンスはない
  • 膝関節内反モーメントの測定では評価できない観点で関節負荷の軽減に影響を及ぼす可能性もある

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

臨床での一助になれば幸いです。

参考資料

  1. Margaret Deasy, et al. Hip Strength Deficits in People With Symptomatic Knee Osteoarthritis: A Systematic Review With Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2016.
  2. Hinman RS:Hip muscle weakness in individuals with medial knee osteoarthritis. Arthritis Care Res. 2010.
  3. Andrew Hislop, et al. Hip strength, quadriceps strength and dynamic balance are lower in people with unilateral knee osteoarthritis compared to their non-affected limb and asymptomatic controls. Braz J Phys Ther. 2022.
  4. Chang A, et al. Hip abduction moment and protection against medial tibiofemoral osteoarthritis progression. Arthritis Rheum. 2005.
  5. Chang A, et al. Hip Muscle Strength and Protection Against Structural Worsening and Poor Function and Disability Outcomes in Knee Osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage. 2019.
  6. Margaret Deasy, et al. Hip Strength Deficits in People With Symptomatic Knee Osteoarthritis: A Systematic Review With Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2016.
  7. Dias Tina Thomas, et al. Hip abductor strengthening in patients diagnosed with knee osteoarthritis – a systematic review and meta-analysis. BMC Musculoskelet Disord. 2022.
  8. Andrew Craig Hislop, et al. Does adding hip exercises to quadriceps exercises result in superior outcomes in pain, function and quality of life for people with knee osteoarthritis? A systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2020.
  9. Varah Yuenyongviwat , et al. Effect of hip abductor strengthening exercises in knee osteoarthritis: a randomized controlled trial. BMC Musculoskelet Disord. 2020.
  10. Thomas P Andriacchi, et al. Gait mechanics influence healthy cartilage morphology and osteoarthritis of the knee. J Bone Joint Surg Am. 2009.
  11. Giovanni E Ferreira, et al. The effect of exercise therapy on knee adduction moment in individuals with knee osteoarthritis: A systematic review. Clin Biomech. 2015.
  12. K L Bennell, et al. Hip strengthening reduces symptoms but not knee load in people with medial knee osteoarthritis and varus malalignment: a randomised controlled trial. Osteoarthritis Cartilage. 2010.
  13. Kim L Bennell, et al. The effects of hip muscle strengthening on knee load, pain, and function in people with knee osteoarthritis: a protocol for a randomised, single-blind controlled trial. BMC Musculoskelet Disord. 2007.
  14. Yujie Xie, et al. Quadriceps combined with hip abductor strengthening versus quadriceps strengthening in treating knee osteoarthritis: a study protocol for a randomized controlled trial. BMC Musculoskelet Disord. 2018.
  15. Kanda Chaipinyo, et al. No difference between home-based strength training and home-based balance training on pain in patients with knee osteoarthritis: a randomised trial. Aust J Physiother. 2009.
  16. Kim L Bennell, et al. Neuromuscular versus quadriceps strengthening exercise in patients with medial knee osteoarthritis and varus malalignment: a randomized controlled trial. Arthritis Rheumatol. 2014.

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