【静的ストレッチ】高強度ストレッチは関節可動域拡大の効果が大きい可能性【ストレッチ強度】

評価

ストレッチにも強度があるの?

強い方が効果的?

痛いほど伸ばすのは良くないの?

静的ストレッチの強度は、可動域拡大の効果に関わる要素の一つです。

患者さんの状態や目的にあった強度を選択することで、臨床での効果が変わってくると思います。

この記事では、

関節可動域拡大効果を得るための静的ストレッチ強度について、論文によるエビデンスを解説します。

この記事の結論は以下の通りです。

  • 高強度の静的ストレッチで関節可動域拡大の効果が大きい可能性
  • 最終域付近でのストレッチは炎症反応を引き起こす可能性がある
この記事を読むメリット

静的ストレッチの強度が関節可動域に影響する効果がわかる

関節可動域拡大に影響する静的ストレッチの時間や頻度については別記事で解説しています。

高強度の静的ストレッチの関節可動域拡大の効果

ここでは、静的ストレッチを高強度で実施した関節可動域拡大の効果について解説します。

以下、結論です。

低強度・中強度のストレッチよりも高強度ストレッチの方が可動域拡大に有効

高強度ストレッチの有効性に関する論文をいくつか紹介します。

Fukayaらの2020年の調査では、健常者を対象に「高強度-短時間ストレッチ」と「低強度-長時間ストレッチ」の効果を比較しました1)。

その結果、以下の通りでした。

足底屈筋に対して、高強度-短時間(強度120%で100秒)ストレッチした方が低強度-長時間(強度50%で240秒)ストレッチよりも、足背屈ROMが有意に拡大した(p<0.05)、腓腹筋内側のせん断弾性率が有意に減少した(p<0.05)。

この調査では、ストレッチ前の足背屈角度を100%と定義して、強度を設定しています。

高強度-短時間ストレッチの方が、可動域拡大や筋の柔軟性向上に有効である可能性を示しています。

また、Takeuchiらは、3種類の静的ストレッチ強度と持続時間からランダム化クロスオーバー研究で調査しています2)。

調査内容は以下の通りです。

  • ストレッチ部位はハムストリングスで、測定ROMはSLR。
  • 3種類の強度と時間を設定 ①高強度(120%POD)ストレッチ50秒×3セット ②中強度(100%POD)ストレッチ60秒×3セット ③低強度(80%POD)ストレッチ75秒×3セット
  • ストレッチ強度は、ストレッチ前の関節角度を100%として設定

結果は以下の通りでした。

  • 高強度ストレッチは中強度や低強度よりも有意に関節可動域が拡大した(p<0.01)
  • 高強度ストレッチは中強度や低強度よりも有意にハムストリングスの筋腱単位の硬さは低かった(p<0.01)

この調査では、不快感が出現した角度を100%として、ストレッチ強度を定義しています。

高強度ストレッチは、低強度や中強度と比べてROM拡大と筋腱単位の硬さの低下に高い効果を示します。

さらに、Nakamuraらは異なる3つの強度(120%・100%・80%)のストレッチで大腿四頭筋への影響を調査しています3)。

結果は以下の通りでした。

  • 関節可動域は強度100%と強度120%で有意な増加を認めた(p<0.01)が、強度80%ではストレッチによる可動域拡大は認めなかった(p=0.85)
  • 強度80%よりも120%でROMが有意に高かった(p<0.01)が、強度100%と120%では有意な差を認めなかった(p=0.43)

ストレッチ強度の設定は、ストレッチ前の関節角度を100%として設定しています。

低強度ストレッチに対して、中強度や高強度の方が可動域拡大の効果が高いことを示しています。

紹介した研究は、健常者を対象とした調査ですが、

いずれも低強度の静的ストレッチに比べ、高強度で関節可動域拡大の効果が大きいことを示しています。

ちなみに、高強度の静的ストレッチで可動域拡大が図れる機序は以下のように述べられています4)。

  • 静的ストレッチによる可動域拡大は,H反射活動の低下が関わっている
  • 反射活動の低下はストレッチ強度に比例する

つまり、「高い強度のストレッチによって、反射活動がより低下し、通常のストレッチより関節可動域が拡大する」ということです。

その他にも、以下の機序が考えられています。

  • 静的ストレッチ強度が高いほど、伸張終了前の負荷に耐える能力の増加(伸張耐性の増加)するためROMが増加する
  • 柔軟性の指標の一つである筋のstiffnessの変化は、伸張強度と相関関係にあり、強度が高いことでstiffnessが低下する

高強度の伸長より、神経、筋への影響が大きくなることが起因しているようです。

安易に低強度でストレッチを行うのではなく、疼痛を含め状態を考慮した上で、

高強度の静的ストレッチを実施することは関節可動域拡大のために有益である可能性があります。

高強度の静的ストレッチ効果のエビデンスレベルは低い

ここでは、強度に着目した系統的レビューやメタ解析から、静的ストレッチの強度に関するエビデンスを解説します。

系統的レビューやメタ解析では高強度ストレッチの決定的な有効性は不明

Konradらは2023年に、健常者を対象とした77研究を含めたメタ解析による系統的レビューの結果からストレッチ強度に関して以下のように述べています5)。

高強度ストレッチと低強度ストレッチで可動域拡大の効果に差はなかった(ES -0.95, 95%CI -1.13~-0.78, p 0.54)

つまり、ストレッチは高強度でも低強度でも得られる可動域拡大の効果は同程度でした。

ただし、Konradらの調査は、静的ストレッチに限らず、動的ストレッチやPNFストレッチなども含めているため、

静的ストレッチのみの結果ではない可能性が考えられます。

また、対象者の平均年齢が比較的若い点も、病院などの臨床とは異なる点かもしれません。

静的ストレッチの強度に関しては、Bryantらも2023年に系統的レビューで以下のように報告しています4)。

16研究のうち、8研究で高強度の静的ストレッチが可動域に有効8研究で高強度ストレッチに利点はないとした

不快感や痛みのレベルを超えた高強度ストレッチは可動域拡大に有効な可能性があるとしつつも、

一貫性がないため今後の検証が必要であり、具体的なストレッチ強度も示せないと述べられています。

メタ解析を含めた系統的レビューでは、高強度のストレッチが有効かもしれませんが、結論はでていないようです。

高強度ストレッチが炎症反応を引き起こす可能性

ここでは、高強度ストレッチによる有害事象である炎症反応との関係について解説します。

高強度のストレッチは、筋肉をはじめとした軟部組織への負荷が大きくかかります。

Apostolopoulos BPHEらは、健常男性を対象として、ストレッチ強度ごとに炎症反応を調査しました6)。

その結果は以下の通りでした。

  • 最大可動域の90%を超えるストレッチでは急激に炎症所見を認める
  • 30%と60%では、炎症所見に有意差なし

最大可動域付近のストレッチでは、急激に炎症反応を示す可能性がありました。

ただし、ストレッチによって生じた炎症反応も許容範囲の可能性もあり、

臨床への影響について結論はでていません。

高強度の静的ストレッチが有害かは、さらに調査が必要だと考えられます。

まとめ

  • 高強度の静的ストレッチは、低・中強度より関節可動域拡大や筋を柔らかくする効果が高い
  • 系統的レビューやメタ解析による、高強度ストレッチ効果のエビデンスは不十分
  • 高強度ストレッチは炎症反応を引き起こすが、臨床へ影響するかは不明

参考資料

  1. Taizan Fukaya, et al. Effects of Static Stretching With High-Intensity and Short-Duration or Low-Intensity and Long-Duration on Range of Motion and Muscle Stiffness. Front Physiol. 2020.
  2. Kosuke Takeuchi, et al. Acute Effects of Different Intensity and Duration of Static Stretching on the Muscle-Tendon Unit Stiffness of the Hamstrings. J Sports Sci Med. 2022.
  3. Masatoshi Nakamura, et al. The Comparison of Different Stretching Intensities on the Range of Motion and Muscle Stiffness of the Quadriceps Muscles. Front Physiol. 2021. 
  4. Joseph Bryant, et al. The Effects of Static Stretching Intensity on Range of Motion and Strength: A Systematic Review. J Funct Morphol Kinesiol. 2023.
  5. Andreas Konrad, et al. Chronic effects of stretching on range of motion with consideration of potential moderating variables: A systematic review with meta-analysis. J Sport Health Sci. 2023.
  6. Nikos Apostolopoulos BPHE, et al. Stretch Intensity vs. Inflammation: A Dose-dependent Association? International Journal of Kinesiology & Sports Science. 2015.

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