誤嚥のリスク因子の数は死亡率や肺炎再発に影響する【論文】

リハ栄養
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肺炎は高齢化が進む日本では,以前よりも多く見かけますよね

特に,高齢者が多い地域病院では,施設や入院中に誤嚥性肺炎も経験します.

当院では残念ながら当院ではSTさんがいないため,PTや看護師さん,栄養士さんがチームを組んで嚥下に取り組んでいます.

そんな中で必要なのは臨床ですぐに使える知識を勉強しています.

今回は誤嚥リスク因子と死亡率や肺炎再発に関する報告を紹介します.

特に肺炎再発のリスク評価は,高齢者が多い地域では再発予防にも重要であり,家族への説明にも重宝します.

是非この機会に知って頂けると幸いです.

読むメリット

・誤嚥リスク因子がわかる

・誤嚥リスク因子の数と死亡率の関係がわかる

・誤嚥リスク因子の数と肺炎再発の関係がわかる

論文紹介

Shingo Noguchi, et al. Impact of the number of aspiration risk factors on mortality and recurrence in community-onset pneumonia. Clin Interv Aging. 2017.

「誤嚥リスク因子の数が市中肺炎の死亡率と肺炎再発に及ぼす影響」

目的

①肺炎で入院した患者さんにおいて,死亡率と肺炎再発率が誤嚥リスク因子の数と関係しているか調査すること.

②6つの誤嚥リスクのうち最も重要な項目を特定すること.

方法

対象

2014年~2016年に北九州市の病院に入院された地域肺炎発症患者さんです.

評価項目

肺炎の定義は,

①発熱,咳や痰,胸痛の少なくとも1つ臨床症状を認めること

②胸部X線またはCTで浸潤影を認める

③白血球≥10,000/μLまたはCRPの上昇の少なくとも1つを認める

上記①~③のすべてを満たした場合としました.

誤嚥のリスクに関しては,日本呼吸器学会JRSの成人肺炎診療ガイドライン2017年を参考にして,

1⃣見当識障害

2⃣寝たきり状態(ECOG-PS4)

3⃣脳卒中やパーキンソン病などの慢性脳血管疾患や慢性神経障害

4⃣認知症

5⃣睡眠薬の使用

6⃣胃食道疾患

上記の6つを誤嚥リスク因子として定義しました.

メインアウトカムとして, 30日以内の死亡率,6カ月以内の死亡率,30日以内の肺炎再発率をカルテ記録から調査しました.

誤嚥のリスクの有無に関して,退院時に改訂水飲み試験(Modified Water Swallowing Test: MWST)を実施して陽性者を誤嚥リスクありと定義しました.

統計解析

誤嚥リスク因子を有する数から0~1,2,3,4以上の4群に分類して,死亡率や肺炎再発に関してオッズ比(OR)を計算しました. それに加えて,多変量解析を使用して,6つの誤嚥リスク因子の最も重要な項目を特定しました.

結果

肺炎患者さんは322名,平均年齢83.4±12.2歳,57.9%が女性でした.

ちなみに対象者のうち286名(88.8%)が誤嚥リスクの数が1以上でした.

死亡率に関して30日以内でも6カ月以内でもは,誤嚥リスク因子の数が増えるごとに,死亡率は高くなっていきました.

オッズ比をみると,30日以内の死亡率においてリスク因子の数が2の時を除き,リスク因子の数が増えるごとに有意に死亡率は高まり,肺炎再発率と同様に誤嚥リスク因子の数と死亡率が関係していることが明らかとなりました.

30日以内の肺炎再発率は,誤嚥リスク因子の数を0~1をオッズ比1とした場合,リスク因子の数が2以上は有意に肺炎再発率が高く,リスク因子の数が多くなるほど肺炎再発率が高くなりました.

この結果は,リスク因子の数と肺炎再発に有意に関係があることを示しました.

6つの誤嚥リスク因子を多変量解析し,誤嚥リスクの独立した危険因子を調査し,322名のうち268名(83.2%)が誤嚥リスクありと判定されました.

誤嚥リスクの危険因子に関しては,寝たきり(ECOG-PS4)状態認知症の有無睡眠薬の使用の3つが誤嚥リスクの重要なリスク因子であることが明らかとなりました.

結論

この研究の結果は,誤嚥リスク因子の数が,特に高齢者においては,肺炎再発率や死亡率の増加と関連していることを示します.

誤嚥のリスクの有無だけでなく,リスク因子の数を考慮することが肺炎患者の治療に重要です.

誤嚥に関しては,特に寝たきり状態,認知症の有無,睡眠薬の使用の3項目は重要なリスク因子のためチェックすることが大切です.

読んだ感想や臨床への活かし方

最初に述べたように,地域では肺炎によって入院する高齢者はとても多く,リハビリで関わる機会も増えています.

その中でリハビリとして重要なのは再発予防だと思っています!

退院時,ご家族や地域で関わっている方に,誤嚥のリスクを伝え予防に繋げるか,

これは,入院中のセラピストの仕事の1つだと思います.

この論文は,誤嚥のリスク因子やその影響を述べており退院時の支援で参考になる点が多かったです.

みなさんも,この機会に誤嚥のリスク因子や肺炎の再発に再度目を向けて頂けると幸いです.

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