
認知症の予防に運動がいいのは知ってるけど、どんな運動をしたらいいの?

健康高齢者と軽度認知症(MCI)高齢者の認知症予防は同じ?
運動が嫌いでも、認知症の予防ができることある?
認知症の予防や認知機能の向上に運動が有効なことは知っていても、
運動の種類や時間、強度は理解してますか?
認知症の予防に有効な運動は、健康講話や介護予防事業でも人気テーマです。
この記事では、「今から認知症の予防に有効な運動を始める」ために、
運動の頻度や強度、時間や種類について論文によるエビデンスを解説します。
- 健康高齢者の認知機能を向上には、筋力トレーニングが最も有効
- 軽度認知症高齢者(MCI)が認知機能を向上には、複数のトレーニングを組み合わせた多要素運動が有効
- 1週35分の運動や1日約3800歩歩くと認知症リスクが減少する
この記事を読むことで、
認知機能を高めて認知症を予防する運動や身体活動について、すぐに実践できるレベルでアドバイスができるようになります。
健常高齢者への運動効果と用法・用量エビデンス
健常高齢者を対象とした、認知機能の向上に有効な運動の種類や強度について解説します。
- 最も認知機能に効果があるトレーニングは筋力トレーニング
- 筋力トレーニングは中~高強度の負荷・1回45分・週2~3回が有効

2025年に大規模なネットワークメタ解析によって、正常な高齢者を対象とした認知症予防の運動について調査さています1)。
- 筋力トレーニング・有酸素運動・心身運動・多要素運動のいずれも全般的認知機能に有効
- 全般的認知機能に効果的な運動種目のランキング:1位 筋力トレーニング、2位有酸素運動、3位 多要素運動


全般的認知機能:認知機能を注意機能や記憶のように分類せずに評価した全般的な機能(HDS-RやMMSEのトータルスコアなど)
心身運動:太極拳やヨガなど,身体の動きと精神の集中力の両方を必要とする運動
多要素運動:有酸素運動や筋力トレーニング、柔軟運動などのさまざまな形態を組み合わせた運動
認知機能が正常な高齢者では、どのような運動でも全般的認知機能への統計的に有意な効果を示しました。
ただし、統計解析にて認知機能への効果を順位付けすると、筋力トレーニングが最も効果があり、続いて有酸素運動、多要素運動となります。
運動の種類で迷っているなら、筋力トレーニングがおススメです。
全般的認知機能に有効な筋力トレーニングの用量(FITT)については、以下のように述べています1)。
筋力トレーニングの最適なプロトコルは、週2回、1回45分を12週間であり、これが最も大きく、最も有意な認知機能の向上をもたらす
運動強度については不明ですが、対象とした複数の調査結果から、認知機能に効果的な運動処方を提案しています。
また、認知機能への筋力トレーニングの運動処方は2025年にナラティブレビューでも報告があります2)。
F(頻度):週2~3回、2~12週間以上
I(強度):40~80%1RM
T(時間):1回40〜60分、1回7つの運動、10回×2セット
T(種類):ウェイトリフティング、自重トレーニング、セラバンド利用での運動 etc.

中~高強度の筋力トレーニングが認知機能の向上に有効であり、短期的にも長期的にも認知機能を向上させることが高いエビデンスが示されています。
筋力トレーニングが認知機能に効果を示すメカニズムは以下の通りです2)。
炎症の軽減、神経新生の促進、BDNF(脳由来神経栄養因子)・IGF-1(インスリン様成長因子)・GH(成長ホルモン)の増加などによって、加齢に伴う認知機能の低下を予防する。
筋力トレーニングはさまざまなメカニズムを通して、
認知機能の柔軟性を高め、記憶力と学習能力を向上させ、脳の老化を遅らせる可能性があると述べられています。
認知機能が正常な高齢者の場合、認知症を予防するため筋力トレーニングを選択しましょう。
筋力トレーニングは、中~高強度の7種類程度の運動を10回2セット、週2~3回の頻度です。
認知症予防に役立つ運動を聞かれたら、7種類くらいの筋力トレーニングを紹介しましょう。
軽度認知症(MCI)への運動効果と用法・用量エビデンス
軽度認知症(MCI)高齢者を対象とした、認知機能の向上に有効な運動の種類や強度について解説します。
MCIは、正常な高齢者よりも認知機能への介入が重要です。
効果的な運動を理解して、認知症への進行を止めましょう。
- 最も有効なトレーニングは、多要素運動(有酸素運動や筋力トレーニング、柔軟運動などのトレーニングの組み合わせ)
- 中~高強度の負荷で、筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせた運動を1回30~60分、週2~4回のトレーニングが有効

軽度認知症(MCI)とは 3)
- MIC(Mild Cognitive Impairment: 軽度認知症)とは、健康と認知症の中間の状態で、何もしなければ進行して認知症となる
- 本人や家族に認知機能低下の自覚はあるが、日常生活は問題がない
- MCIを5年間追跡調査すると、31.3%は正常に回復するが、27.9%は認知症へ悪化4)

5年以内にMCIの約28%が認知症へ進行するため、MCI時期の運動はとても重要です。
MCI高齢者へ認知症予防の運動効果は、42件の研究をまとめたネットワークメタ解析で報告されています5)。
- 多要素運動、筋力トレーニング、有酸素運動、心身運動で全般的な認知機能に有効な可能性が示された
- 全般的認知機能に効果的な運動種目のランキング:1位 多要素運動、2位 筋力トレーニング、3位 有酸素運動


MCI高齢者においては、複数の運動を組み合わせる多要素運動が最も全般的認知機能を向上させる効果を認めました。
ただし、この研究では各運動の効果量(SMD)の95%CIをみると、1をまたいでおり、統計的に有意な効果が示されていない可能性があります。
また、多要素運動は有酸素運動を単独で行うよりも認知機能へのメリットが大きく、 特にフレイル高齢者や入院高齢者には有効性が報告されています6,7)。
病院が関わる高齢者では、多要素運動を選択しましょう。
全般的認知機能に有効な多要素運動の用量(FITT)については、以下のように述べています5)。
1回30分、週3~4回の頻度で運動強度60~85%HRMax(最大心拍数の60~85%)で14~24週間、(1週間150分以上)
週3~4回と比較的に高頻度での運動が重要なようです。
また、認知機能に対する筋力トレーニング+有酸素運動の組み合わせトレーニングについては、2025年にナラティブレビューで運動処方が報告されています2)。
F(頻度):週2~3回、8~24週間
I(強度):筋力トレーニング 50~80%1RM、有酸素運動 50~70%MHR(VO2max)
T(時間):1回30〜60分
T(種類):筋力トレーニング + 短い休憩 + 有酸素運動を組み合わせたサーキットトレーニング etc.

筋力トレーニングも有酸素運動も中~高強度が推奨されています。
現段階では、トレーニングの順番や配分について最適解は不明のようです。
筋力トレーニングと有酸素運動の組み合わせトレーニングが認知機能に影響するメカニズムは以下の通りです2)。
脳血流量と酸素供給の増加、神経新生の促進、海馬におけるBDNF(脳由来神経栄養因子)産生の増加、酸化ストレスと炎症の軽減が挙げられる。
複数の生理学的経路から相乗的な適応を活用し、単一様式のトレーニングよりもメリットがある。
それぞれの運動による効果が相乗的に働き、大きな効果が得られます。
軽度認知症(MCI)高齢者の場合、多要素運動(有酸素運動や筋力トレーニング、柔軟運動などのトレーニングの組み合わせ)が認知機能の向上に有効です。
筋力トレーニングと有酸素運動を中~高強度の負荷で、30~60分、週2~4回の頻度が推奨されます。
特にフレイル高齢者や入院患者では、多要素運動を取り入れましょう。
有酸素運動が認知機能に与える効果と用法・用量エビデンス
筋力トレーニングや多要素運動の方が、有酸素運動よりも全般的認知機能への効果が大きいとする報告があります。
しかし、有酸素運動も認知機能への効果はトップ3に入っており、継続や取り組みやすさの視点でも優秀なトレーニングです。
認知機能に効果的な有酸素運動の用法・用量を解説します。
・低負荷の有酸素運動:ウォーキングなどを週2~5回で50~60%MHR、1回10~40分
・中負荷の有酸素運動:早歩きやランニングなどを週3~7回で50~70%MHR、1回15~45分
・高負荷の有酸素運動:HIITなどを週2~4回で70~85%MHR、1回20~40分
中負荷の有酸素運動が安全かつ普遍的で最も推奨

有酸素運動は低~高負荷でそれぞれ頻度や強度、時間、効果が異なります2)。
- F(頻度):週2~5回、6~12週間以上
- I(強度):1分あたり100歩のペース(50~60%MHR or VO2Max)
- T(時間):1回10〜40分
- T(種類):ウォーキングやスロージョギング,サイクリング etc.
- 効果:空間記憶↑,気分状態↑,精神的幸福度↑,抽象化と精神的柔軟性↑

低負荷の有酸素運動は、高齢者の認知機能や全体的な健康状態を向上させ、うつ病における気分調節にも有効です。
運動の経験がない人やフレイル高齢者では、低負荷から開始しましょう。
- F(頻度):週3~7回、4~9週間以上
- I(強度):50~70%MHR or VO2Max
- T(時間):1回15〜45分、週合計300分
- T(種類):早歩き,ランニング,水泳 etc.
- 効果:実行機能(計画、意思決定)↑,エピソード記憶(新しい記憶の形成と検索)↑,うつ病スコア↓,注意↑,処理速度↑、加齢に伴う認知機能低下の進行抑制

中負荷の有酸素運動は、健康な高齢者とMCI高齢者の両方に有効な運動で、特に実行機能、記憶、気分調節機能に効果的です。
トレーニングを安全に継続しやすく、認知機能への効果も高いため、中負荷の有酸素運動が最も推奨されます。
- F(頻度):週2~4回、6~26週間以上
- I(強度):70~85%MHR or VO2Max
- T(時間):1回20〜40分
- T(種類):HIFT(高強度運動と認知デュアルタスク トレーニング)、 HIIT etc
- 効果:作業記憶↑,実行機能↑,言語機能↑,処理速度↑,抑制制御↑,視空間スキル↑

高負荷の有酸素運動は、脳血流量や神経栄養因子の増加により、特にワーキングメモリや言語流暢性が向上します。
低負荷や中負荷と比較して、記憶力や認知の柔軟性が向上すると報告されていますが、
一貫したエビデンスが不足しているため、現段階で負荷選択に結論はでていません。
有酸素運動は負荷によって運動の頻度や強度、時間、種類が異なります。
健康状態や運動経験など、個人に合わせて負荷を選択しましょう。
中負荷の有酸素運動が安全かつ継続しやすく、認知機能への効果も高いため最も推奨されます。
認知症を予防する生活改善【中~高強度の身体活動・歩数・座位時間】
認知症を予防する生活の活動について解説します。
運動が苦手な人や運動時間の確保が難しい人は生活を変えることで、認知症の予防ができます。
- 中~高強度の身体活動を1週間で35分、1日5分すると認知症リスクが41%減少
- 1日の歩数が約9800歩で認知症リスクは51%減少、約3800歩で25%減少
- 1日の座位時間が8時間を超えると認知症リスクがとても増加

認知症の予防における、【身体活動への介入】の重要性はWHOも発表しており、エビデンスの質は中等度、推奨度は強いとしています8)。

禁煙や糖尿病・高血圧の管理と並んで、身体活動へ介入することは認知症予防に効果的です。
具体的な活動の種類や時間、避ける方が良いことを解説していきます。
週35分(1日5分)の中~高強度活動で認知症リスクが減少
2025年に地域住民89,667人を対象とした大規模研究によって、活動と認知症リスクの関係を調査しました9)。
- 中~高強度の身体活動が1週間に30分増加するごとに認知症リスクが4%ずつ減少
- 中~高強度の活動を週35分(1日5分)すると認知症リスクが41%減少

中~高強度の身体活動:活動量計を用いて評価した活動の強度で、3メッツ以上の身体活動を中~高強度身体活動と定義
中~高強度の身体活動の例:モップ掛け(3.5Metz)、庭の草むしり(3.5Metz)、階段を上がる(4Metz)、ウォーキング(3.5Metz)、ジョギング(7.0)、筋力トレーニング(3.8~5.0Metz) 10)
1週間に35分、1日5分程度の活動で、大きく認知症リスクが減少するのは、力づけられる結果ですね。
運動でなくても、積極的に活動を取り入れましょう。
1日3800歩で認知症リスクが減少
地域住民78,430人もの大規模なコホート研究によって、1日どれくらいの歩数で認知症を予防できるのか調査しています11)。
- 1日約9800歩で認知症リスクが約50%減少
- 1日約3800歩で認知症リスクが約25%減少

調査結果から、最も認知症リスクを減少させる歩数は1日9826歩であり、
認知症リスクを減少させる最小の1日歩数は3826歩でした。
1日9800歩はややハードルが高いですが、3800歩なら目標にしやすいです。
少しでも多く歩くように意識してみましょう。
座位時間が1日8時間を超えると認知症リスクが増加
座位時間は健康にさまざまな悪影響を与える活動です。
座位時間:座った状態のみならず、横になって休んだりテレビを観たりするすべての状態の時間。
睡眠時間は除き、テレビやゲーム、仕事中の会議やデスクワーク、移動や通勤時の自動車運転なども含まれる。
2023~2024年に発表された1,0000人以上を超える大規模な調査から、
1日の座位時間が長くなると認知症のリスクが増加することが明らかとなっています。
- 1日の座位時間が5~8時間で7%、8時間以上で25%も認知症リスクが増加 12)
- 1日の座位時間が9.27時間(中央値)未満に比べ、10時間で8%、12時間で63%、15時間で221%も認知症リスクが増加 13)
- 1日3時間未満に比べ、8時間を超えると36%も認知症リスクが増加 14)



1日8時間を超える座位時間は認知症のリスクがとても高くなるため、一つの基準になります。
日本人成人の平日1日の座位時間を、厚生労働省のデータ15)でみると
男性で38%、女性で33%が1日8時間以上も座っていました。
日本は世界的に座り時間が長い国なので、活動していない時間も重要な健康指標です。
座位時間の悪影響については、別の記事にて詳しく解説しています。

座位時間は、別の活動に置き換えることで認知症リスクを減少できます。
484,169名の地域住民を対象とした大規模調査から、30分の座位時間を別の活動に置きかえた効果が調査されています。12)
1日30分の座位時間を、DIYや運動に置き換えると、認知症リスクが7~8%も減少

30分だけ座る代わりに違うことをするだけで、認知症のリスクを減らせることが明らかとなっています。
TVやスマートフォンをみている時間を少しだけでも、家事や運動に変えてみましょう。
座位時間を置き換える効果については、別の記事にて詳細に解説しています。

まとめ
ここまで、認知症リスクを減少される運動や活動の具体的な種類や時間について解説しました。
- 健常高齢者が認知機能を維持するには、筋力トレーニングが最も効果的で中~高強度の負荷、1回45分、週2~3回
- 軽度認知症(MCI)高齢者が認知機能を向上には、複数の運動を組み合わせた多要素運動が最も効果的で中~高強度の筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせた運動を1回30~60分、週2~4回
- 低~高負荷の種類があるが、安全性や継続のしやすさ、認知機能への効果から中負荷の有酸素運動が推奨
- 中負荷の有酸素運動:1回15~45分、週3~7回で50~70%MHRの強度でランニングや水泳などを行う
- 中~高強度の身体活動を1週間で35分、1日5分すると認知症リスクが41%減少
- 1日の歩数が約9800歩で認知症リスクは51%減少、約3800歩で25%減少
- 1日の座位時間が8時間を超えると認知症リスクがとても増加
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
みなさんの臨床や活動のお役に立てば幸いです。
参考資料
- Han Han, et al. Optimal exercise interventions for enhancing cognitive function in older adults: a network meta-analysis. Front Aging Neurosci. 2025.
- Wissem Dhahbi, et al. Physical Activity to Counter Age-Related Cognitive Decline: Benefits of Aerobic, Resistance, and Combined Training-A Narrative Review. Sports Med Open. 2025.
- あたまとからだを元気にするMCIハンドブックhttps://www.mhlw.go.jp/content/001272358.pdf
- Kaishi Takabatake, et al. Short-term and long-term reversion rates to normal cognition and their contributing factors among individuals with mild cognitive impairment in a Japanese community: the Hisayama study. BMC Geriatr. 2025.
- Yingying Yu, et al. Optimal dose and type of exercise to improve cognitive function in patients with mild cognitive impairment: a systematic review and network meta-analysis of RCTs. Front Psychiatry. 2024.
- Wissem Dhahbi, et al. Physical Activity to Counter Age-Related Cognitive Decline: Benefits of Aerobic, Resistance, and Combined Training-A Narrative Review. Sports Med Open. 2025.
- Mikel L Sáez de Asteasu, et al. Dose-Response Relationship Between Exercise Duration and Enhanced Function and Cognition in Acutely Hospitalized Older Adults: A Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial. Innov Aging. 2024.
- Neerja Chowdhary, et al. Reducing the Risk of Cognitive Decline and Dementia: WHO Recommendations. Front Neurol. 2022.
- Amal A Wanigatunga, et al. Moderate-to-Vigorous Physical Activity at any Dose Reduces All-Cause Dementia Risk Regardless of Frailty Status. J Am Med Dir Assoc. 2025.
- 生活活動のメッツ表 https://kennet.mhlw.go.jp/tools/wp/wp-content/themes/targis_mhlw/pdf/mets.pdf
- Borja Del Pozo Cruz, et al. Association of Daily Step Count and Intensity With Incident Dementia in 78 430 Adults Living in the UK. JAMA Neurol. 2022.
- Ying Sun, et al. Replacement of leisure-time sedentary behavior with various physical activities and the risk of dementia incidence and mortality: A prospective cohort study. J Sport Health Sci. 2023.
- David A Raichlen, et al. Sedentary Behavior and Incident Dementia Among Older Adults. JAMA. 2023.
- Zhen Du, et al. Sedentary behavior and the combination of physical activity associated with dementia, functional disability, and mortality: A cohort study of 90,471 older adults in Japan. Prev Med. 2024.
- 平成25年国民健康・栄養調査報告. 2013. https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/h25-houkoku.html


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