【パワートレーニング】高齢者が筋パワーを鍛える重要性とトレーニングの注意点・進め方【高速レジスタンストレーニング】

運動療法

筋パワーってなに?

高齢者は筋パワーを鍛える必要がある?

高齢者がパワートレーニングをする時の注意点は?

筋パワーは、高齢者の身体機能や生活に関わる重要な筋機能です。

この記事では、

高齢者が筋パワーを強化するパワートレーニンの重要性や注意点をエビデンスをもとに解説します。

この記事の結論は以下の通りです。

  • 筋パワーとは「筋収縮の力(トルク)×速度」と定義され、最短時間で抵抗を克服する能力のこと
  • 筋パワーは最大筋力よりも高齢者のADLやパフォーマンスに大きく影響する
  • パワートレーニングとは、求心性運動をできるだけ速く行うレジスタンストレーニングの一種
  • 高齢者においてパワートレーニングは、従来のレジスタンストレーニングと比べて、筋パワーやパフォーマンスの向上効果が高い可能性
  • パワートレーニングの注意点は、高齢者に多い関節の変性疾患では負担に注意
この記事を読むメリット
  • 高齢者がパワートレーニングを行う重要性がわかる
  • 高齢者がパワートレーニングを実施する注意点がわかる

筋パワーを鍛えるパワートレーニングってなに?

ここでは、筋パワーとそれを鍛えるパワートレーニングについて解説します。

結論は以下の通りです。

  • 筋パワーとは「筋収縮の力(トルク)×速度」と定義され、最短時間で抵抗を克服する能力
  • 高齢者のADLや安全な生活には最大筋力よりも筋パワーの影響が大きい
  • パワートレーニングとは、筋力における「力の発揮」と「速度」の両方の要素を鍛えるレジスタンストレーニングの一種

筋力には、最大筋力(muscle strength)筋パワー(muscle power)の要素があります。

最大筋力とは、MMT(manual muscle testing)や%1RMで評価される「どれだけ大きな力が発揮できるか」になります。

一方で、筋パワーは、力に速さの要素が追加され「筋力×速度」で定義され、「すばやく、どれだけ力が発揮できるか」を示します。

筋パワーは、特に高齢者で重要なことが示されています。

その理由の1つ目は、加齢によって筋パワーが低下しやすいことです。

以下に、それを示すいくつかの研究を紹介します。

  • 加齢に伴い、最大筋力や速度に関わるタイプⅡ線維が選択的に衰える1)
  • 筋パワーは筋力よりも加齢に伴う低下が早く顕著2)

加齢変化によって、筋力よりも筋パワーの低下が顕著であることが明らかであり、

高齢者は生理学的に「素早く動く」ことが難しくなるようです。

また、筋パワーが重要である2つ目の理由は、

筋パワーが高齢者の生活やパフォーマンスへの影響が大きいことです。

以下に、それを示すいくつかの研究を紹介します。

  • 筋パワーは最大筋力よりも高齢者の機能制限と密に関係している3)
  • 筋出力と力の発揮速度は、高齢者の日常生活動作を遂行する能力と強く関連2)
  • 安全に関連する機能的タスク(交通量の多い交差点の横断や転倒防止など)は下肢筋の十分な速度が必要4)

高齢者のADL能力やパフォーマンス、安全な生活を送るために、

筋パワーは最大筋力よりも重要な可能性が示されています。

高齢者において筋パワーは重要です。

筋パワーについては別の記事でも解説しています。

筋パワーを鍛える方法として、パワートレーニングがあります。

パワートレーンングについては下記で解説していきます。

筋パワーを鍛えるパワートレーニングの運動処方(運動特徴・強度・頻度・回数)

ここでは、筋パワーを鍛えるパワートレーニングの特徴や運動処方について解説します。

パワートレーニングの特徴と運動処方は以下の通りです。

  • 求心性運動はできるだけ速く運動する
  • 遠心性運動は通常レジスタンス運動と同じ(2~3秒かける)
  • 運動強度は低~中強度(40~60%1RM)
  • 反復回数は6~10回
  • セット数は2~4セット
  • 頻度は週2~3日

パワートレーニングは、レジスタンス運動の一種です。

通常のレジスタンス運動では、求心性運動と遠心性運動を2~3秒かけて反復運動を行います。

しかし、パワートレーニングでは求心性運動を「できるだけ速く」運動をすることが特徴です。

短時間で筋を最大収縮させるパワートレーニングは、筋パワーを効果的に向上することができます。

パワートレーニングの運動処方について、協会や論文から述べられています。

2002年ACSM(アメリカスポーツ医学会)が提言する高齢者のパワートレーニング処方は以下の通りです5)。

  • 速度:高速トレーニング
  • 負荷量:30~60%1RM
  • 反復回数:6~10回
  • セット:1~3セット

健康な高齢者のパワートレーニングでは、

30~60%1RMの軽~中強度の負荷で、6~10回の反復回数を1~3セット、高速でレジスタンス運動を行うことを提言しています。

運動強度は比較的軽く、反復回数やセット数も従来のレジスタンストレーニングと同様でした。

ちなみに、高齢者の筋力強化トレーニングの運動処方については別記事でも解説しています。

また、2022年にBalachandranらは、地域高齢者におけるパワートレーニングの系統的レビューとメタ解析を報告しています6)。

対象となった13RCTにおけるパワートレーニングの内容は以下の通りでした。

  • 速度:求心性運動はできるだけ速く、遠心性運動は2~3秒かける
  • 負荷量:40~70%1RM
  • 反復回数:8~10回
  • セット:2~4セット
  • 頻度:週2回
  • 期間:12週間

また、2022年にMartinsらは、65歳以上のADLが自立している高齢者を対象に高速レジスタンス運動(パワートレーニング)の効果を系統的レビューとメタ解析にて報告しています。

系統的レビューで含まれた14研究のパワートレーニング内容は以下の通りでした。

  • 速度:「可能な限り速く」もしくは「1秒以下」
  • 負荷:最大反復運動で定量化
  • 回数:6~14回
  • セット:2~3セット
  • 頻度:ほとんどが週3回
  • 期間:8~16週間
  • 種類:ゴム,ウェイトマシン,重錘など使用

高齢者を対象としたパワートレーニングでは、回数やセット数、頻度、期間は同程度のプログラムが用いられています。

さらに、高齢者のパワートレーニングの運動強度について、

NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)は見解表明で以下のように述べています3)。

軽~中強度(40~60%1RM)の運動強度によるパワートレーニングで、高齢者の最大筋力、筋出力、筋肉量、機能的能力の増加を示すエビデンスがある

パワートレーニングの運動強度として、軽~中強度を推奨しています。

また、パワートレーニングの頻度や期間について、

Martinsらは系統的レビューとメタ解析の結果から以下のように述べています7)。

週3回・10週間以上の高速レジスタンス運動(パワートレーニング)介入によって、神経筋機能(握力・筋力・筋パワー)が有意に改善されると示唆された。

週3日、10週間以上を目安にトレーニングを継続することが有効であるとしています。

これまでの提言や論文をまとめると、高齢者を対象としたパワートレーニングの運動処方は以下の通りになります。

運動強度は低~中強度で、求心性運動はできるだけ速く動かし、6~10回程度の反復運動を2~4セット、週3日を10週間以上継続する

ただし、パワートレーニングの運動処方に関しては、2002年ACSMの提言以降に明言したものはないようです。

Fragalaらは、NSCAの見解表明にて「多種類のレジスタンス運動のセット数や頻度を比較したデータは不足している」と述べています3)。

パワートレーニンの運動処方は、患者さんの評価をもとに注意して検討する必要があると思います。

高齢者におけるパワートレーニングの効果と通常レジスタンス運動と比較した有効性

ここでは、高齢者におけるパワートレーニングの効果と通常レジスタンス運動に比べた有効性について解説します。

結論は以下の通りです。

  • パワトレーニングは高齢者において、認知機能、筋力や筋パワー、身体機能の向上に中等度以上の効果がある
  • パワートレーニングは従来のレジスタンス運動と比べて、筋パワーや移動能力、パフォーマンス能力の向上に有効な可能性がある

Martinsらは、ADLが自立している65歳以上の高齢者を対象に

「最大収縮速度の運動(パワートレーニングや高速レジスタンス運動をキーワードに含む)」の効果を系統的レビューとメタ解析にて調査しました7)。

その結果は以下の通りです。

  • 認知機能(前頭葉機能バッテリーFAB・MMSE)に大きな効果 (SMD 0.94,p=0.001)
  • 神経筋機能(握力・筋力・パワー)に中等度の効果 (SMD 0.70,p=0.003)
  • 身体機能(SPPB・歩行速度)に中等度の効果 (SMD 0.55,p=0.004)
  • 身体機能(TUG)に中等度の効果 (SMD -0.59,p=0.009)

最大収縮速度の運動介入は、高齢者の認知機能や筋力・筋パワー、身体機能の向上に中等度~大きな効果を示すことを報告しています。

高齢者へのパワートレーニングは、認知機能を含めた機能向上に有効であるとエビデンスが示されていますね。

さらに興味深いことに、

パワートレーニングと従来のレジスタンス運動を比較して、どちらが効果的か調査した報告もあります。

Lopezらは2023年に、レジスタンス運動の速度が効果に影響するか系統的レビューとメタ解析にて調査しました8)。

この調査では60歳以上の高齢者を対象に、高速レジスタンス運動(パワートレーニング)と従来のレジスタンス運動を実施した79研究(3575名)を含めています。

結果は以下の通りです。

  • 高速レジスタンス運動では、最大歩行速度、TUG、5回立ち上がりテストで、従来レジスタンス運動よりも高い効果を認めた
  • 従来レジスタンス運動では、30秒立ち上がりテスト、6分間歩行テストで、高速レジスタンス運動よりも高い効果を認めた

高速レジスタンス運動と従来レジスタンス運動は、両方ともパフォーマンス向上の効果がある。

そして、高速レジスタンス運動では、最大歩行速度やTUG、5回立ち上がりテストなど運動速度の影響が大きい能力で特に効果が高くなりました

また、Lopezらは同研究内で、レッグプレスによる筋パワーと1RMによる筋機能への影響も評価しています。

結果は以下の通りでした。

  • レッグプレス筋パワーは、高速レジスタンス運動では大きく向上した
  • 従来レジスタンス運動や高速レジスタンス運動ともにレッグプレス1RMは向上したが、従来レジスタンス運動の方が効果的であった

高速レジスタンス運動は筋パワーに効果的であり、

従来レジスタンス運動は最大筋力(1RM)に効果的でした。

この他にも、高齢者を対象にパワートレーニングと従来レジスタンス運動の効果を比較した系統的レビューとメタ解析も報告されています。

Balachandranらの報告(20RCTで地域高齢者566名が対象)では、以下の結果でした6)。

パワートレーニングは従来の筋力トレーニングより、身体機能(SPPBやTUGなど)の向上に高い効果(SMD 0.30,95%CI 0.05~0.54

Hadouchiらの報告(15研究、高齢者583名が対象)では、以下の結果でした9)。

高齢者のパワートレーニングは従来筋力トレーニングよりも

  • 筋パワーで高い効果(SMD 0.99,95%CI 0.54~1.41,p< 0.001)
  • 立ち上がり能力などのパフォーマンス機能で中等度の効果(SMD 0.43,95%CI 0.23~0.62,p< 0.001)
  • 移動能力で小さい効果(SMD 0.36,95%CI 0.04~0.68,p= 0.02

筋パワーの向上は従来のレジスタンス運動に比べて、パワートレーニングの方が大きな効果がありました。

また、SPPBや移動能力などの身体機能は、小~中等度ですがパワートレーニングの方が通常レジスタンス運動よりも効果的でした。

身体機能やパフォーマンスを評価するSPPBについては別の記事にて解説しています。

しかし、1RMなどの最大筋力の向上には、従来のレジスタンス運動の方が効果が大きいようです。

そのため、トレーニングの目的や患者の状態によって運動プログラムを選択しましょう。

パワートレーニングのメリット①:レジスタンス運動よりも効果が持続しやすい可能性

パワートレーニングとレジスタンス運動で、トレーニングを中断した後の効果について興味深い論文があるので紹介します。

結論は以下の通りです。

パワートレーニングはレジスタンス運動よりも、トレーニング効果が持続しやすい可能性

Zechらは、プレフレイル高齢者を対象にトレーニング効果をランダム化比較研究(RCT)で調査しました10)。

調査方法は以下の通りで、パワートレーニングとレジスタンス運動後12週間と24週間でSPPBを比較しています。

  1. 65歳以上のプレフレイル高齢者をレジスタンストレーニング群とパワートレーニング群に無作為に分ける
  2. 週2回、60分のトレーイングを12週間実施する アウトカムはSPPB
  3. トレーニング後、ベースラインから24週と36週でSPPBの変化を評価

結果は以下の通りでした。

  • 12週間のトレーニングによって、レジスタンストレーニング群とパワートレーニング群はともに有意にSPPBが増加した
  • レジスタンストレーニング群はトレーニング終了後にSPPBが低下したが、パワートレーング群は24週と36週後でもSPPBの低下がなかった

この結果から、パワートレーニングはトレーニングを停止してもレジスタンス運動よりも効果が保たれやすいようです。

高齢者の身体機能にアプローチするなら、長期的に効果を維持しやすいパワートレーニングも重要かもしれません。

ただし、この調査がRCTとはいえ、単一の介入研究であることは留意しておきましょう。

パワートレーニングのメリット②:レジスタンス運動よりも自覚的疲労が少ない可能性

ここでは、高速レジスタンス運動(パワートレーニング)と低速レジスタンス運動で生理的変化や疲労感が異なるか調査した論文について紹介します。

結論は以下の通りです。

  • 低速レジスタンス運動と高速レジスタンス運動は、運動後の生理学的反応は同じ
  • 低速レジスタンス運動は高速レジスタンス運動よりも、疲労感や困難感が高い可能性

Richardsonらは、10人の高齢者を対象に

運動総負荷量を同じにした低速でのレジスタンス運動と高速でのレジスタンス運動による生体反応を調査しました11)。

結果は以下の通りです。

  • 低速レジスタンス運動と高速レジスタンス運動では、収縮期血圧,拡張期血圧,心拍数,血中乳酸値に有意な差なし(p> 0.05)
  • 低速レジスタンス運動は高速レジスタンス運動と比較して、有意に高い自覚的運動強度(Borg Scale)を示した(p=0.006)

この結果から「高速のレジスタンス運動(パワートレーニング)だから特別に負担がかかるわけではない」とわかりました。

また興味深い点として、

高速レジスタンス運動に比べて低速レジスタンス運動の方が自覚的疲労感や困難感が高く、運動の速度で情緒反応が異なる可能性が示されました。

生理的には同じ負担であり、自覚的に疲労感が少ない点で、高速レジスタンス運動(パワートレーニング)はメリットがあるトレーニングですね。

ただし、この調査も単一研究であり、疲労感や困難感は個人差も大きい評価のため、妄信しすぎないように注意しましょう。

高齢者におけるパワートレーニングの注意点と進め方

ここからは、高齢者が実際にパワートレーニングをする際の注意点や進め方について解説します。

高齢者は加齢変化に伴う脆弱性があるため、注意してトレーニングを進める必要があります。

結論は以下の通りです。

  • 筋疲労を避けるため、反復回数は限界まで行わない
  • 変形性関節症や筋腱の変性がある場合はパワートレーニングが推奨されないことがある
  • 等尺性収縮運動から開始し、痛みのない範囲から完全な可動域での運動に進め、段階的にパワートレーニングに移行する
  • 椅子からの立ち上がり運動はおススメ

全米ストレングス&コンディショニング協会(NSCA)は見解声明にて、

パワートレーニングの注意点を以下のように述べられています3)。

  • 筋肉の疲労を避けるため,反復回数は限界まで行わないことが推奨
  • 筋肉の疲労は安全上のリスクとなる可能性があり,疲労は筋力とパワーの向上には不要

高齢者のパワートレーニングは、限界まで追い込むとケガのリスクが高いです。

また、高齢者では易疲労性を認めることがあるため、疲労の管理には十分に注意しましょう。

さらに同じ声明内にて、以下のように述べています。

ケガのリスクを減らすために適切なフォームとテクニックが必要

特にフォームは、狙ったトレーニング効果が得られないだけでなく、関節や筋・腱に負担をかけてケガや疼痛を引き起こすリスクがあります。

関節などに脆弱性がある高齢者では正しいフォームを大切にしましょう。

また、パワートレーニングは求心性運動を速く行うトレーニングです。

そのため、関節を中心に身体へ負担がかかることが予想されるため、以下の場合に運動は避けるように述べています。

  • 変形性膝関節では膝伸展運動、回旋腱板疾患ではチェストプレスなどのOKC(open Kinetic Chain)でのバリスティックトレーニングは避ける
  • 変形性股関節や腰椎椎間板変性、変形性関節症の症状がある場合にはレッグプレス運動は避ける

また、2021年に発表された高齢者における国際運動推奨事項(ICFSR)では、以下のような点も述べています2)。

  • パワートレーニングは、高齢者によくある「診断されていない変性変化(疾患)」がある場合、半月板や腱の損傷リスクを考慮する必要があり、推奨されないことがある
  • 変形性関節症は損傷のリスクが高く、高齢者のパワートレーニングの障壁となる可能性

高齢者に多くみられる関節の変性疾患には十分に注意して、

状態を評価したうえで適応を検討しましょう。

さらに変形性関節症に注意したパワートレーニングの進め方は、以下のようになります3)。

  1. 等尺性収縮運動から開始する
  2. 痛みのない関節可動域から収縮運動を行う
  3. できるだけ完全な可動域での運動に移行していく

疼痛や関節の状態を評価しつつ、段階的に運動を広げていくことを推奨しています。

また関節炎が増悪した際のトレーニングについて、以下のように述べられています3)。

  1. パワートレーニングから等尺性収縮運動へ戻る
  2. 関節運動を少しずつ始める
  3. パワートレーニングを段階的に再開する

疼痛や状態の悪化があれば、等尺性収縮運動へ戻る必要があり、トレーニングは評価を行いながら段階的に進めることを推奨しています。

パワートレーニングでは関節に負担がかかることを念頭に置いて、

患者さんの評価とトレーニングをセットで段階的に進めましょう。

高齢者のパワートレーニングの例として、国際運動推奨事項(ICFSR)は

「椅子からの立ち上がり運動」を紹介しています2)。

立ち上がり運動は、体重を負荷として利用し、椅子からすばやく立ち上がることでパワートレーニングとなります。

立ち上がり運動の利点は2つです。

1つめは、運動負荷を調整しやすい

  • 心身機能が低下している高齢者:動作速度をゆっくりにしたり、介助を受けながらトレーニングを始める
  • 身体機能が高い高齢者:軽くジャンプやできる限り速く立ち上がるなどの負荷を挙げることも可能

2つめは、どこでも実施しやすい

立ち上がり運動は、椅子だけあれば運動可能であり、広い運動スペースを必要としません。

そのため、病室や高齢者施設、訪問先の家など狭いスペースでも運動が可能です。

是非、椅子からの立ち上がり運動も取り入れてみましょう。

まとめ

ここまで、高齢者におけるパワートレーニングの効果やメリット、高齢者が行うための注意点や進め方を解説しました。

  • 高齢者では、ADL能力やパフォーマンス、安全な生活のためには、最大筋力よりも筋パワーが重要
  • 筋パワーを鍛えるために、求心性運動を最大速度で行うパワートレーニングを取り入れる
  • パワートレーニングの運動処方は、求心性運動はできるだけ速く動かすレジスタンス運動を、低~中強度で6~10回の反復回数を2~4セット、週2~3日の頻度で10週間以上継続
  • パワートレーニングは従来のレジスタンス運動よりも、筋パワーや移動能力、パフォーマンス能力の向上に有効である
  • パワートレーニングの方が従来のレジスタンス運動よりも、トレーニング終了後の効果が持続する可能性がある
  • パワートレーニングは従来のレジスタンストレーニングと同程度の血圧や心拍数の変動だが、自覚的な疲労感は少ない可能性がある
  • パワートレーニングの注意点:筋疲労の限界まで反復回数を行わない、高齢者に多い変性疾患(変形性関節症など)を考慮して痛みのない範囲から段階的に進める
  • パワートレーニングは関節に負担がかかることがあるため、疼痛や状態を評価して取り入れる
  • パワートレーニングの開始では、椅子からの立ち上がり運動もおススメ

参考資料

  1. Gregory J Grosicki, et al. Single muscle fibre contractile function with ageing. J Physiol. 2022.
  2. M Izquierdo, et al. International Exercise Recommendations in Older Adults (ICFSR): Expert Consensus Guidelines. J Nutr Health Aging. 2021.
  3. Maren S Fragala, et al. Resistance Training for Older Adults: Position Statement From the National Strength and Conditioning Association. J Strength Cond Res. 2019.
  4. Stephen P. Sayers, et al. High-speed power training in older adults: A shift of the external resistance at which peak power is produced. J Strength Cond Res. 2015.
  5. Kraemer WJ, et al. American College of Sports Medicine position stand. Progression models in resistance training for healthy adults. Med Sci Sports Exerc. 2002.
  6. Anoop T Balachandran, et al. Comparison of Power Training vs Traditional Strength Training on Physical Function in Older Adults: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Netw Open. 2022.
  7. Alexandre Duarte Martins, et al. The Effects of High-Speed Resistance Training on Health Outcomes in Independent Older Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Int J Environ Res Public Health. 2022.
  8. Pedro Lopez, et al. Does High-Velocity Resistance Exercise Elicit Greater Physical Function Benefits Than Traditional Resistance Exercise in Older Adults? A Systematic Review and Network Meta-Analysis of 79 Trials. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2023.
  9. Mohamed El Hadouchi, et al. Effectiveness of power training compared to strength training in older adults: a systematic review and meta-analysis. Eur Rev Aging Phys Act. 2022.
  10. Astrid Zech, et al. Residual effects of muscle strength and muscle power training and detraining on physical function in community-dwelling prefrail older adults: a randomized controlled trial. BMC Geriatr. 2012.
  11. Darren L Richardson, et al. The acute physiological effects of high- and low-velocity resistance exercise in older adults. Eur J Ageing. 2017.

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