理学療法士の大きな試練として歩行分析があると思います.
自信をもって歩行分析が得意ですと言える人は少ないのではないでしょうか.
ちなみに僕も苦手です.
特に学生さんや新人さんは経験や知識が少ないこともあり,苦手意識を持っている人も多いのではないでしょうか.
その理由として,
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動きが早くてついていけない.
どこに注目したよいかわからない.
歩行を観察できない.
という事がベースにあると思います.
今回は学生さんや新人さん向け・・・
というわけではないですが,少しでも歩行観察に対する抵抗が少なくなるように,
立脚相に関しての簡単な歩行周期の見方,観察部位のポイントを確認し,最後に観察前の準備として異常歩行と原因について少し紹介します.
簡便にした分,個人的な解釈も多分に含まれますが,なにかの参考になれば嬉しいです.
これを読むとこんなメリットがあります.
- 立脚相の簡単な考え方がわかる
- 歩行観察のポイントがわかる
- 異常歩行と原因の知識がつく
歩行周期立脚相の簡単な考え方
まず従来の歩行周期では,立脚相が5項目,遊脚相が3項目に分かれています.
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これは立脚相を基準に動作の”瞬間”を表現しているため,動作のイメージがしやすく,臨床でもの用いられることが多いです.
30代よりも上のセラピストはこちらを習った人が多いと思います.
ただ,この従来の方法は立脚相と遊脚相の表現に統一性がなく,世界的に共有されている方法ではないです.
理学療法士の国家試験でも使われていないようです.
現在,世界基準で広く使われている歩行周期はみなさんも知っている“ランチョ・ロス・アミーゴ方式”ですね.
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こちらは,従来式と比べて,瞬間ではなく,区間で表現されており,立脚相も遊脚相も統一性があります.
区間で表現されることで時間的な要因も表現できるのですが,覚えること多かったり,臨床で使う際には慣れが必要です.
個人的に一番使いにくいと思う点は,観測肢に対して,反対側が歩行周期の基準となってることがあり,目が忙しくなることだと思っています.
全体を観察することに慣れていないと,ランチョ・ロス・アミーゴ方式は使いにくいですね.
これは,僕が学生時代にバイザーの先生に教えてもらった方法なのですが,5相ある立脚相を3相に分けてしまうという方法です.
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分け方としては,IC~LRを立脚前期,MTsを立脚中期,TSt~PSwを立脚後期とします.
TStは比較的観察時しやすいので,観察できた事象がTStの前なのか,後なのかを観察します.
これにより,どの時点での事象か把握しやすくなり,歩行中の大まかな整理がしやすくなると思います.
また,前・中・後のどこで観察できたか分かれば,そのあと詳細に観察するのは容易になるので,学会や報告会など必要に応じて詳細に観察,記録することも出来ると思います.
歩行観察のポイント
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まずは前額面上での観察ポイントですが,たくさんあるように見えますが,
ざっくりいうと,
頭頚部・上肢・体幹・骨盤・股関節・膝関節・足関節が横に動いているか,傾いたりしているかを見るだけです.
続いて矢状面上での観察ポイントは,頭頚部・上肢・体幹・骨盤・股関節・膝関節・足関節が前後のどちらに動いているか,傾いているかを見るだけです.
もし,7箇所も多いようなら,最初は3つくらいに絞っても良いと思っています.
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歩行は疾患や病態,患者さんの特性によって異なるので,絞る際には注意が必要ですが,最初は自分が見やすい所からでも良いかなと個人的には思っています.
なぜなら,体は繋がっているので,例えば立脚中期で骨盤が遊脚相に傾いているのを見つけたら,それに伴う体幹の側屈や股関節内外転はなかったか?など他の部位に繋げて考えればよいからです.
また,観察のポイントを絞ることと同じくらい,全体の左右差や違和感を見ることは大切です.
一番困る状態は,違和感や左右差を見つからない→問題なし!と考えてしまう事だと思います.
言葉にできなくても良いので,まずは全体から左右差,違和感を見つける練習も良いかもしれません.
異常歩行と原因
歩行観察が簡単になる方法として,事前に準備をすることが大切です.
もっというと,他の評価や疾患,異常歩行に対する知識をつけて,”歩容を予測する”という事です.
例えば,ボトムアップで歩行観察をする場合は,事前の評価で足関節の背屈可動域制限がわかっていたとします.
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足関節の背屈制限によりICでの足背屈運動は少ないのでは?
TSt~PSwの時に足背屈運動を別の方法で代償するのでは?
など事前に歩行を予測しておきます.
これを考えるか否かで,観察の精度はかなり違います.
ただ,評価から歩行の問題点を予想することは知識や統合と解釈の能力が必要になり,最初は難しく感じると思います.
しかし,
予想する→実際に観察する→予想と異なったか評価する
を繰り返し考えることで,歩行観察の能力はもちろん,評価から問題点をつなげる能力も同時に磨かれます.
歩行観察を得意になるためにも,いきなり歩行観察を行わず,自分なりの予測を立ててから行ってみてください.
またトップダウンの場合では,歩行観察をする前に,
- 疾患
- 年齢
- 歩く直前の立位姿勢
などの評価から,どんな歩容が起こる可能性があるかを予測します.
トップダウンではボトムアップよりも圧倒的に情報が少ないので,より深い知識や経験,瞬発的な発想が必要になります.
患者さんが歩く前から知識的な面で準備をしておくが大切です.
表に立脚相と遊脚相にみられる異常歩行をまとめたので,役立てて頂けたら嬉しいです.
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まとめ
- 立脚相を3相に分けて簡単に考える方法もあり
- 観察の部位は絞ってもよいけど,全体を見ることも忘れない
- 歩行観察は事前準備が大切
参考資料
基礎運動学第6版,中村隆一,斎藤宏,長崎浩 著.
動作分析臨床活用講座バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践.編集 石井慎一郎.
運動学テキスト,細田多穂 監修.
日本義歯装具学会誌,2012,江原義弘,歩行分析の基礎-正常歩行と異常歩行-
運動生理,1993,丸山仁司,運動分析-歩行分析を中心に-
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