【股関節の前部痛】2つの機能障害が関わる機序とアプローチ(股関節の可動性低下・骨盤の可動性低下)

評価
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運動器障害において、運動機能の向上は疼痛軽減に有効なケースがあります。

運動器の構造自体にアプローチをすることはリハビリでは難しいですが、

機能面にはアプローチできますよね。

運動機能と疼痛の関係を知っておくことで、

評価の精度が高くなり、アプローチのポイントを絞りやすくなります。

今回は、股関節前部の疼痛について、

臨床で多い、機能障害をピックアップしてまとめました。

他にも、腸腰筋や内転筋群をピックアップした股関節前部痛をまとめているので、ご興味があればどうぞ。

この記事の結論は、

股関節前部痛の原因となる機能障害は

  • 股関節の可動性低下
  • 骨盤の可動性低下

です。

この記事を読むメリット
  • 股関節前部痛の誘発原因がわかる
  • 股関節前部痛の評価治療がわかる

股関節の可動性低下

股関節の可動性低下は、変形性股関節症や関節唇損傷、FAIなど、

股関節の構造的な変化が原因の場合は

リハビリよりも外科的手術が効果的です。

ただし

可動性低下の要因は、股関節構造だけでなく

股関節構造に起因した軟部組織による制限

があります。

実は見落としているだけで、

軟部組織由来の可動性低下が多くあります。

例えば、変形性股関節症の屈曲可動域制限は、

  • 関節の変形
  • 腸腰筋の筋緊張亢進
  • 後方組織の伸張性低下、etc

上記のように複数の要因が関わっています。

股関節屈曲の可動性低下は疼痛の原因となり、股関節後方筋群が重要です。

殿筋、双子筋、内外閉鎖筋の癒着は股関節の屈曲、内旋、外旋可動域を制限する

福元哲也,他.股関節可動域制限と短外旋筋の癒着の関係.整形外科と災害外科.2019.

股関節後方筋群の伸張性低下

⇒股関節屈曲運動時に大腿骨頭の後方滑り運動が阻害

⇒股関節屈曲可動域制限と前方インピンジメントが誘発

⇒股関節可動性低下と疼痛

また、外閉鎖筋について、

後方の柔軟性に関わっている可能性が報告されています。

Gudenaらは、外旋筋は後方関節包を補強する。

外旋筋の伸張性低下により、関節包後方の伸張性が低下する可能性が示唆。

また、股関節前方組織に関しても興味深い報告があります。

股関節前部痛を訴える患者では、

大腿直筋腱、下前腸骨棘脂肪体の線維化、殿筋と大腿直筋の癒着が頻発している。

Mitsunori Kaya, et al. Impact of extra-articular pathologies on groin pain: An arthroscopic evaluation. PLoS One. 2018.

軟部組織由来の可動性低下がないかを丁寧に評価することが重要です。

ただし、病態の把握は必ず行いましょう。

例えば、リウマチの炎症期など関節破壊が進行しやすい時期は関節運動は禁忌。

しっかりと病態を理解して評価・アプローチを選択しましょう。

股関節の可動性低下へのアプローチ
  • 股関節内転筋群のリラクゼーション:背臥位で自動もしくは他動運動(一側下肢を把持)で軽く揺する
  • 股関節内転筋群のストレッチ:背臥位、対側股関節屈曲位保持での股関節外転ストレッチ
  • 大殿筋上部線維と中殿筋後部線維のストレッチ:背臥位にて股関節屈曲90°+内転+外旋ストレッチ
  • 梨状筋ストレッチ:腹臥位にて股関節屈曲0°+内転+内旋ストレッチ
  • 大腿方形筋ストレッチ:背臥位にて深屈曲+内旋ストレッチ

骨盤の可動性低下

骨盤の可動性は股関節運動において重要。

下肢の挙上運動は、

大腿骨の屈曲運動と骨盤の後傾運動による複合運動(骨盤大腿リズム)です。

肩関節の肩甲上腕関節と肩甲骨の運動(肩甲上腕リズム)と同じ関係ですね。

そのため、骨盤が前傾している

疼痛の誘発や運動制限の原因になります。

骨盤後傾運動が制限

⇒骨盤大腿リズムが正常に機能しない

⇒股関節屈曲運動時に股関節へのストレス増大

股関節前部痛やつまり感

下肢の挙上と骨盤運動に関する報告では、

大腿骨挙上10°までは骨盤後傾しないが、大腿骨挙上角度10~90°にかけて骨盤運動は徐々に増加して、90°を超えると急激に骨盤後傾角度が大きくなる。

小川智美,他.大腿挙上運動における股関節屈曲と骨盤後傾運動のリズム.理学療法学.2002.

また、Bohannonらも、下肢挙上運動での骨盤後傾の貢献を述べています。

股関節運動に伴う骨盤後傾は、前股関節屈曲運動の13.1~37.5%も貢献していた。

Richard W Bohannon, et al. Research describing pelvifemoral rhythm: a systematic review. J Phys Ther Sci. 2017.

骨盤の後傾運動は、股関節屈曲に重要な役割がありますね。

骨盤前傾の原因について、

臼蓋形成不全や関節唇損傷など構造上の問題があると骨盤は前傾します。

これは、

股関節の不安定性を代償するため、大腿骨頭に対する被覆率を高めるための代償によるものです。

変形性股関節症患者において、骨盤過前傾姿勢が多いのは、このためです。

構造上の問題を根本的に解決することはリハビリでは難しく、手術療法が適応となります。

他の骨盤前傾の要因としては、

  • 股関節伸展の可動域制限
  • 股関節伸展筋の筋力低下
  • 腸腰筋や体幹屈筋群の筋力低下
  • 腰部脊柱起立筋の筋緊張亢進

股関節、体幹の筋緊張亢進や筋力低下により骨盤の過前弯が誘発されます。

構造的な問題にはアプローチができないので、

構造以外の骨盤の前弯を助長する要因を評価治療することが重要になります。

骨盤前傾の評価方法は、

立位姿勢でのASISとPSISの位置が2横指以上=骨盤前傾姿勢

です。

姿勢評価は重要ですね。

骨盤可動性低下へのアプローチ
  • 腸腰筋のストレッチ:背臥位の対側股関節深屈曲位で実施側の股関節を伸展方向にストレッチ
  • 大腿直筋のストレッチ:腹臥位にて股関節伸展位で膝屈曲ストレッチ
  • 大腿筋膜張筋のストレッチ:側臥位にて股関節伸展、内転、外旋位でストレッチ
  • 大殿筋の筋力強化:背臥位にて両足をベッドから降ろして股関節中間位でのブリッジ運動
  • 内腹斜筋の筋力強化①:両股膝関節屈曲、背臥位にて腰部でベッドを押すDrow in
  • 内腹斜筋の筋力強化②:両股膝関節屈曲、背臥位にて腹部に重錘を乗せ、深呼吸をしながら腹圧を高める
  • 腰椎骨盤の協調運動①:四つ這いにて、腹部を引きあげるように腰椎屈曲+後傾⇔力を抜いて腰椎伸展骨盤前傾運動の繰り返し(cat&dog)
  • 腰椎骨盤の協調運動②:背臥位にて、両股関節膝関節屈曲90°にて両足底を壁に接地して、腹筋の収縮を意識して骨盤後傾運動

おまけ:股関節痛の種類と鑑別

ここでは、股関節の疼痛によって疑われる疾患をまとめます。

リハビリでは診断をするわけではないですが、

リスク管理の一環として知っておくと役立ちます。

疼痛の裏に重大な疾患が隠れている可能性を知っておきましょう。

ちなみに、変形性股関節症の疼痛出現部位に関して、Nakamuraらの報告があります。

この報告の興味深い点は、

膝関節痛や腰痛を訴える場合も多いということです。

膝関節痛や腰痛を認める場合も、股関節疾患に注意が必要な可能性があります。

まとめ

股関節前面の疼痛に関係する、機能障害に着目してまとめた。

股関節前部痛の原因となる機能障害は、

  • 股関節の可動性低下
  • 骨盤の可動性低下

の2つが原因です。

詳細な評価と適切な運動療法により疼痛を改善できる可能性が高くなります。

ここまで読んできただき、ありがとうございます。

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